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第十九話 不始末


 家に帰った俺たちは、まず両親に友達を連れてきてしまったことを説明した。何も了解を得ていないのに連れてきてもいいのかと疑問に思ってしまったのだ。


 といっても、説明している途中に両親は大喜びしてしまって、しっかりとは連れてきた理由を説明出来なかった。


 なぁ両親よ、俺が友達を連れてくることはそんなにも喜ばしいものなのか?


 あと宮本さん?『友達が出来て良かったですね……』とか言わないで!俺そんなに友達がいないと思われているの!?


 俺の部屋へと案内してみんながくつろいでいるが、来てみたはいいものの特になにもすることもなかった。なので、どんな魔法が使えるのかとか、恋人はいるのかとか、まぁ言ってしまえば雑談をしていただけだった。


 だって他にすることとかなかったんだもん!沙耶もいるから神の使徒の話とかできないし、ゲーム機器を俺は持ってなかったから何もないんだよ!


 それでも俺たちは結構楽しく話した。教えてくれなかった怜の使い魔についても聞くことが出来た。


 なぜ今教えてくれたのかというと、結奈が耳元で何かを言ったら急に教えてくれたのだ。いったい何を言ったんだよ……、怜ちょっと顔が強張っていたぞ?


 まぁそれで、怜の使い魔が『鬼』ということが分かった。


 といっても、見せてはくれなかった。なんだか怜の使い魔は恥ずかしがり屋で、人前には必要のない時には出てくれないそうだ。本人が言うには結構可愛いらしい姿をしているそうなのだが、あまり要領を得なかったので容姿についてはあまり想像ができなかった。


 ついでと言っては何だが、結奈にも使い魔がいるそうなんだ。どんなのか聞いたら、『まだ内緒ー』、と言って教えてはくれなかった。


 怜に言わせといて自分が言わないのは、些かズルいと思うぞ。だが、何度教えてもらおうとしても絶対に口を割ることはなかったので、仕方がなくあきらめることにした。


 一応、俺と沙耶も使い魔がいることは言っておいたぞ。召喚することはなかったが、鈴のことを聞いたら結奈が後でモフらせてくれと言ってきた。


 もちろんそんなことをさせるつもりはないがな!モフモフは俺だけものだ!


 まぁそんなことを話しているうちに時間は過ぎていき、各々が自分の家へと帰っていった。みんな両親に何も言わずに来てしまったので、もっと話していたかったとは思うが仕方がないだろう。


 沙耶は俺の隣の家に住んでいるし、怜と結奈は転移魔法を使って帰るから帰り道気をつけてねとか言わなくてもいいだろう。


 夕食では、俺が友人を連れてきたことについての話でもちきりになり、俺は食べている途中に質問攻めにあい、中々食べ終わることが出来なかった。


 しかも、その質問をしてきたのは妹が主なわけなのだが、そんなにお兄ちゃんの友達関係が気になるのかね?大丈夫だよ、俺は悪い友達とは付き合わないから安心しなさい!


 しかも両親は、俺の彼女は誰になるんだとか話していた。そんな話で盛り上がられても、俺はそんなことに興味はないし、いろいろとめんどくさそうだから適当にはぐらかした。


 いや、興味がないわけじゃないんだよ。寧ろそういうことに興味は持っている。だけどな、俺にできるとは思っていないから、諦めているに近いんだよ……。


 あとな、普通に茶化してくるだろうからめんどくさそうなんだよ。俺の両親、見た目に反して中身は子供っぽいからさ。


 そんなこんなで、長い長い一日が終わり、翌日を迎えた。宮本さんの用意してくれた美味しい朝食を食べ、学校へと行く準備押した。


 今日はしっかりと寝坊することはなく、沙耶と一緒に学校へと向かうことが出来た。


 昨日はいろいろあって波乱万丈だったように感じるが、今はとても穏やかに登校している。沙耶と他愛もない話をして、何事もなく学校に着くことが出来た。


 こういう何の変哲もない日常というのは、こちらに来てからは久々に感じられたな。こういう日がずっと続けばいいのに……。






 そう思っていた時期が私にもありました。


 学校に来て最初の授業を受けている途中に事件が起こってしまったのです。


「全員動くな!動いたり逆らったりした奴は殺す!」


 なんでこう普通の日常とかけ離れているんだろうな……


 俺たちは今教室にて、銃を持った覆面の男たち三人に脅されている。どうしてあの男たちが学校に乗り込み、俺たちを脅しているかはわからない。


 先生は奴らが入ってきて早々に撃たれてしまって、しっかり止血をしたとはいえ動ける状態ではない。


 なぜこうなる前に対処しなかったかというと、普通に対処していいものか悩んでいるからだ。もしかしたら、他にも仲間がいて、爆弾を設置している可能性があるからだ。


 いやね、俺たち神の使徒はそんなもんでも死なないだろうから大丈夫なんだろうが、沙耶とかその他大勢が死んでしまうかケガをしてしまうかもしれないから、下手に動かないほうがいいよなって、さっき周りに聞かれないように三人で話した。


 一応犯行声明とかを聞いてから判断しようと思ってたし。


「この高校の敷地内に魔法を使えなくする魔法具を設置した!だからお前たちは魔法を使うことは一切できない!」


 ざわざわとクラス中に不安がまき散らされた。みんなが唯一の頼みの綱としていた魔法が使えないのだから、それは不安にもんあるだろう。


 試している連中はいるが、全然だめだった。


 道理でさっき先生に回復魔法を使おうとしていた女子生徒が全然使えていなかったわけだ。


 ん?俺たち神の使徒は使えるのかって?さっき使えないとも知らずに千里眼を使って学校の様子を見てしまっていたよ。


 マジでほかの生徒にバレなくてよかったよ!こんな中で魔法が使えるってなったら、『なんで使えるんだ!?』って少々問題になって目立っちゃうからな。


 ちなみに、他の教室にも覆面の奴らがいるのが見えた。各教室に二、三人といったところかな?


どんだけこの高校に侵入しているんだよ……。学校の警備は魔法に頼り切っているのか、少々ガバガバすぎやしないか?


「さて、なぜ我々がこのようなことをしているか疑問に思っていることだろう……」


 そういって、一人の男が教卓の前に行き、銃を俺たちへと向けて声を高らかにして叫んだ。


「それは、この学校の生徒の中に、昨日神を冒涜した人物がいる!その人物を殺しに来た!」






 ……おっと?






 おいおいおい、何を言っているんだこいつは?それって俺たちのことを言っているのか?いやいや、そんなことはないだろう!だって俺たちは一応その場は穏便に済ませたつもりだし、あの後何もなかったから何とかなったのだろうと思っていたのだが……。


 だからさ、沙耶と怜はこっちを見るのをやめてくれないかな?そんな、探しているのお前のことだよな?とでも言いたいような目で見やがって。


 それを言うなら結奈だって一応やってしまった人物だぞ?あそこで話し合っていればもしかしたら解決できたかもしれないんだから。


 だから、結奈はこっちを見ろ。なに窓から空を見ているんだ?俺と一緒にこの状態を何とかしようぜ!?やらかしてしまった仲間なんだからさ!


「我々は関係のない人物は殺すつもりはない!だから、逆らわなければ何も問題はない!」


 違う男がそう発言したのだが、そんなの信じられるわけがない。だって他の男が女子生徒たちをいやらしい目で見ているんだもん。絶対手を出すだろ!


 そしてそこの一番太っている奴、沙耶をさっきからじろじろ見やがって!後でひどい目に合わせてやる……!


「そ、その……探している人物は、誰なんですか?」


 一人の勇気ある少年が男たちにおずおずと聞いた。おいおい、特定するのはやめてくれ。俺だってわかったら撃たれちゃうじゃん。撃たれたことないからどう対処したらいいかわからないよ。


 いや、もしかしたら俺ではないという可能性もあるから、あまり心配しなくても大丈夫か?


「確か、ヤクザみてぇな男だったか?」


「俺もそう聞いてる。そいつと一緒に女が三人いたって言ってたな」


 みんなの意識がこちらに向くのがわかった。はいはい、わかっていましたよ。心当たりしかなかったから俺だってわかりますよ。


 というか、おい、誰がヤクザだよ!ただ俺は顔が強面ってだけだ!ただそれだけの一般人だ!


 あと、女が三人って……。一人はたぶん怜のことだよな。いや、気にすることないと思うぞ?ほら、だからそんな顔を手で覆っていないで、涙を拭きな?ハンカチなら貸してやるから。


「おい、お前じゃないか!?」


 一人の男がこちらに気づき、ついにバレてしまったようだ。これから一体どうやって対処しようかしら?


「くっくっく、バレちゃあしょうがない……!」


 まるで、正体がばれてしまった悪役のように答えて、ゆっくりと立ち上がった。一度やってみたかったからやってみただけで、このように答えた理由は特にない。


「おい、勝手に動くな!」


「あ、はい、すいません」


 怒られてしまったので、仕方がなく素直に座りなおした。なんかやってみたら変に注目されたし、意外と恥ずかしかったぞ!?思い付きでやるんじゃなかったよ……。


「さて、目的の奴は見つかったことだし、学校を爆破するか」


「え?」


 突然の発言に、俺やほかの生徒たちも動揺を隠せない。いったいどうしてそういう発想になったんだ?


「ちょ、ちょっと待ってくれ!ど、どうして———」


「———どうして学校を爆破するかって?そんなものは決まっている。神を冒涜する奴らのいる学校なんて存在してはいけないからだ!」


「そんな、横暴な……」


 生徒たちが皆絶望したような表情を浮かべている。その中にも俺を恨めしそうに睨んでくる奴らもいるようで、もう何とかしたほうがいいかな?


「あ、あの、無関係な人物は殺さないんじゃなかったんですか?」


 確かに侵入してきた男たちの仲の一人がそう言っていたな。神を信じているのに、虚偽の発言をしてもいいのか?偽証は罪じゃないのか?


「俺はそんなこと言ったか?」


「いや、言ってねぇなー」


 なんと男どもは下卑た笑みを浮かべて、先程の発言をなかったことにしたようだ。こいつらはなんてクズ野郎なんだろうか!?


 まったく、どこの世界にもこういう常人が考えないようなことを平然と行う連中はいるもんなんだな。


「さて、俺たちがまいた種のようだし、早いところ終わらせるか……」


 そう、誰にも聞こえないような声量で口にしたのと同時に立ち上がり、これからどうするかを考える。一応俺でも責任というものを感じているので、俺が何とかしないといけないなと思い立った。


「俺たちっていうか、ほとんど翔夜のせいだけどね」


「ほっとけ」


 そういって結奈も一応責任を感じているのか、立ち上がって男たちを見据えている。こんな状況でも軽口を叩けるほどには俺たちは全然余裕なわけなのだが、魔法を使わずにどう対処しようか悩む。


「おい、何勝手に動いているんだ!」


「先に死にてぇのか!?」


 俺たちの行動に苛立ち、銃をこちらに突き付けてきた。このままでは発砲した弾が誤って沙耶に当たりかねないし、立ち上がったはいいもののどうしたもんかね?ちゃんと後先考えて立ち上がるべきだったな……。


「『眠れ』」


 結奈がそう発言するや否や、男たちは糸の切れた人形のように倒れていった。あ、侵入者の一人が教卓に頭ぶつけたな。痛そう……。


 さっきの言葉から察するに、これは睡眠魔法だろう。俺も夜寝れないときによく使っているから、どういうものなのか俺でも理解することが出来た。


「あ、おい。何魔法使っているんだよ!」


 この中では魔法は使えないとか、さっきこいつらが言っていただろう!なんで使えるのかとか周りの奴らに聞かれるぞ!?もしかしたら異常だって思われるかもしれないだろう!


「大丈夫、神の使徒以外のこの教室の全員にかけたから、僕たちが魔法を使えるのはバレてないよ」


 よく見てみると、クラス中の全員が机に突っ伏していた。先生も倒れているし、意識があるのは神の使徒だけだった。


「なんだ、あーよかった……」


 他の生徒にバレていないと知ってホッとした。


「僕がそんなことも考えずにするわけないでしょ。目立ちたくないもん」


「そりゃそうだな」


 堂々ということではないが、こいつの目立ちたくないという心意気には感嘆を覚えるな。



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