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第百七十八話 後片付けと女性の行方


 沙耶は男の腕にあるものを見て驚く。


「これって、さっき話していた三つ首の……」


「そうそう、さっき話してた情報源だ!」


 先程魔物を借りに来る前に話が上がっていた、三つ首の刺青がある物は犯罪者が目の前にいるのだ。


 両親の方へ向き直り、どうだと言わんばかりに胸を張った。


「でも生きていなんじゃあ……」


「だから殺してねぇっての」


 母さんは男の脈を確認してそう発言する。


 この人は俺のことを犯罪者にしたいのだろうか。脈ちゃんとあるだろ。息してるだろ。


「まぁ取り敢えず連れていくわね」


 そういってどこかに電話をかけた。


「いやぁ、まさに噂をすれば影ってな!」


「ちょっと違うと思うけど、タイミングは良かったよね」


「もう人質とった時は焦ったけど……」


 タイミングよく見つけられて、貢献できたことは単純に嬉しかった。


 だけど、ふと俺は思い出した。


「そういや、あの女の人はなんでいたんだ?」


 魔物がいて町の人が逃げていた中、残っていたなんておかしな話だ。


「どうしたの?」


「……なんでもない!」


 正直気にならないわけではないが、気にしたところでどうこうなるようなことでもないともい。


 それよりも沙耶の方が大事だ。


 沙耶の下に向かうと、俺に近づき臭いを嗅いでくる。


「お、おいおい、なんなんだ……?」


 ちょっと興奮しちゃうじゃないの。


「あれ、なんか翔夜から女性の匂いがする……」


「ん~沙耶にヤンデレ属性はちょっと怖いかな~」


「違う違う! そういうのじゃなくて、香水の匂いがするの!」


「……まじ?」


 そう言われ、俺は自分からおばさんのようにキツイ香水の香りがしているのかと自身の臭いを嗅ぐ。


「ちょっとおばさん臭いな……」


「主様、そういうことは思うだけで言ってはいけませんよ」


「おっと失礼」


 世の中のおば……妙齢の女性がつけている香水の匂いが強いのは、嗅覚が衰えてきているからだと俺は考えている。


 だから先程の女性も嗅覚が衰えているのだろう。


 そうに違いない。


「ねぇあるじ」


「なんだ?」


「おかし」


「……後で買ってあげるから待っててな」


「んー、わかった」


 恐らく今俺たちが話し合っていることに飽きてきているのだろう。


 呼んだからにはお菓子をあげてから帰してあげたい。


 だから少し待っていてほしいな。



「あのすみません」


「なんだ?」


 俺は早々に実習を終わらせてお菓子を買ってあげようと思い、剛力さんに尋ねる。


 ぶっちゃけやることなかったらお菓子会に行けるしな。


「これから自分たちは何をすればいいでしょうか?」


「そうだな~。取り敢えずは……」


 剛力さんは困った表情を浮かべ、そして俺の後ろを見る。


「残党の処理かな」


「まだいたのかよ……」


 俺は振り返り、そしてそこにはカメレオンの魔物が複数匹いた。


 まだいたのかよ。


「翔夜、ちょっと……」


 後片付けをしようかと思い、狩りに向かおうとすると母さんが呼び止める。


「なんだ母さん、そんな真面目な顔して?」


「これ、この男が持ってたものなんだけど……」


 件の男は電話で呼んだ人たちが連れていき、母さんはその男の私物であろうバッグを持っていた。


 そしてその中から、ピンポン玉ほどの黒い球を取り出した。


「あーそうだ、これ母さんに聞こうかと———」


 俺も持っていたことを思い出して、母さんが持っているものと同じものをインベントリから取り出した。


「それっ!」


「えっ、ちょ!?」


 母さんは驚きに満ちた表情で、持っていた黒い球を奪い取った。


「これはね、砕くことで発動する魔法具なの!」


「それはまぁ、なんか嫌な感じがしたし知ってるよ。でもどうしてそんな慌てて……」


 慌てて、しかし慎重に魔法具を袋の中にしまう。


 そしてそれを、先程電話で呼んだ人に渡して俺に詰め寄ってくる。


「あれは、指定した人を転移させるものなの!」


「えっ、転移……?」


 何か嫌なものだとわかっていたけど、まさか転移させるものとはわからなかった。


「あの男が何を言っていたか知らないけど、あれは確実に転移させるものよ」


「……誰を? どこに?」


「翔夜を! どこかに!」


「お、俺か……」


 自分を転移させるなんて思わなんだ。


 俺を転移させたところで、魔力量が異常なほどあることくらいしか思い当たらない。


「使われていたら危なかったわ……」


「そんな危ないかな?」


「もう少し危機感を持ちなさい!」


「ご、ごめんなさい……」


 やはり母親だからだろうか、俺が超人的な人間だと思っていても、危険なことはしてほしくないのだろう。


 もう少し自分のことにも気を配っていこう。


「あるじ、わたしたちがまもるよ」


「ありがとなー」


「わ、私も主様の盾となりましょう!」


「ありがとう」


 未桜と鈴は俺を励ましてくれた。


 母さんの話を聞いて少々落ち込んでしまっていたが、二人のおかげで元気が出た。


 気持ちを切り替えて、俺は使い魔とともに魔物を狩りに向かった。








 ※※※








 ある一人の女性は、人気のない路地裏に入った。


 そこには一人の屈強な男性がおり、その者と女性は周りに誰もいないことを確認して、ボロい扉の中に入っていった。


「あれが『神の使徒』ねぇ」


「どうだった?」


 中にあったソファに二人は腰掛け、話し始める。


「ん~、やっぱり子供かな~」


「ということは?」


 女性は手に持っていた資料をテーブルにばらまき、そして笑みを浮かべる。


「計画に何ら変わりなく、よ」


「従順な兵が手に入るといいな」


「兵じゃないわよ」


 バラまいた資料の中から一枚の写真を手に取る。


 そして手に持った写真を見て、女性は我が子を見るかのような表情で微笑む。


「私の新しい息子よ」


「息子、か……」


 男が部屋の端へと目をやる。


 その先にあるのは、数名の若い男性の死体。


 その誰もが、殆ど人間の形を保っていない。


 ただ唯一顔だけは人間のそれであるだけで、腕や足が複数本は得ていたり、緑に変色していたりしている。


「直ぐに死ななきゃいいがな……」



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