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第十七話 優秀な神の使徒


 自由時間から一時間ほど、途中休憩時間もはさんで魔法学についての授業をやりました。最初ということで、俺が入学する前に必死で勉強したことも含めて、復習も兼ねてやっていった。


 そして俺は、授業を理解することは出来ませんでした。


 いやね、事前に勉強はしっかりしたし、メンタルブレイクしているといっても、俺だっていつまでもうじうじしているわけじゃないから切り替えて頑張ったんだよ。


 だけど、授業の進むスピードが速くてついていけなかったんだよ!なんだよあれ!?先生に質問されたらしっかりと答えて正解しているしさ、なんでしっかり理解できているんだよみんなは!


 俺なんて先生に指されないか気が気でなかったのに!ノートとかとっても俺の理解が追い付かないよ! もう途中からノートをとることを諦めたからな!後で沙耶や怜に見せてもらおう!


 俺はここでやっていけるか不安になったが、俺の左隣で眠りこくっている相手がいて安心したよ。こんなエリート高校でも、こいつのように授業中に眠るやつがいるんだからな。


 しかし、こいつさっき俺に教科書見してくれって言ったのに、なんで寝ているんだよ。そんで先生にも指されないし、俺の知らない魔法でも使っているんじゃないか?


 しかも、授業をしている間だけ寝ていて、授業が終わるとともに起きやがったし。もしかして、こいつはホントは起きているんじゃないか?


 そして今は俺と昼食を買って屋上で食べている。本当は沙耶と食べたかったのだが、半ば強引に連れて来られてしまった。また来てしまったよ屋上に……。


 ここって日の光を隠すところがほとんどないから、あんまり好きじゃないんだよなー。眩しいのとか好きじゃないんだよ。


 なんで呼び出されるときは決まって屋上なんだ?中庭とかでもいいだろうに、そんなに人に見られたくなんだろうか?


 教室から出る際に、なんで俺と結奈が一緒にいるのか疑問に思った沙耶は、俺たちに食い気味に聞いてきた。


 さっき胸を比べてしまったことで昼食を奢るということを言いたくないので、なんて言って誤魔化そうかと考えていると、結奈が『大事な話があるから二人だけの秘密』といって会話を強制的に終わらせてやってきた。


 沙耶は『二人だけの秘密……』とぶつぶつ言っていて、なんか怖かった。後で適当に言い訳しておけば大丈夫だろう。そう信じたい……。


「それで、俺を拉致してきた理由はなんだ?」


 学校で沙耶と昼飯を食べるのは楽しみにしていたから、今俺は少々不機嫌だ。それなりの理由があるんだろうな。


「拉致とはひどいな。僕は翔夜とお話がしたくて連れてきたのに」


 どうでもないようなことのように、表情を変えないで言ってきた。ホントにこいつは表情変えないな。表情筋が死んでいるんじゃないか?


「普通に他の人に聞かれたくないこととかか?」


「そうだよ。神の使徒の話は人前ではしないほうがいいからね」


 俺は人前で話したくないこと、若しくは話せないことと思ったからそう聞いたが、当たっていたようだ。しかも神の使徒についてか。確かにそういうことは聞かれたくないわな。


「アポストロ教、だったかな」


 怜が昨日言っていたのを思い出した。確か、神を冒涜する奴は死すべしとか思っている奴らだったかな。誰がそのアポストロ教だってのはわからないから、不用意に人前では話せないな。そんな奴らに目をつけられたらたまったもんじゃない。


「それもあるけど、僕はあまり注目されたくないから、自分が神の使徒だってことは言わないようにしているんだ」


「なるほどな、確かに俺も怜も自分が神の使徒だってことは誰にも言ってないな」


 やっぱり神の使徒っていうことは誰にも言わないんだな。まぁ言ったところで信じてくれるとは思わないけど。


「やっぱり怜っていう美少年は神の使徒なんだね」


 美少年だと女子から見ても思うんだな。今度女装でもさせてみるかな?結構様になりそうだしな!……言っておくが、俺にそんな趣味は一切ないからな?


 というか、やっぱりってことは怜が神の使徒だって何か確信があったのかな?


「神の使徒だってわかるのか?」


「だって馬鹿正直に魔力測定しているんだもん、そりゃあわかるよ」


 あれで分かったのか。確かに神の使徒は魔力が無尽蔵にあるから、あれで分かってしまうのも理解できるな。


 あれ、そういえばあの時、俺と怜だけしか水晶を砕いてないよな?


「そういえば、なんで結奈は水晶を砕いていないんだ?」


「あれって自身の表面を覆っている魔力を測定するものだから、体の表面の魔力を薄くすればいいんだ」


「そんなことが出来るのか!?」


 これを聞いたときは驚いたよ。確かに俺たちは魔法を使おうと思えばたいていのことは出来る。だが、体表の魔力を薄くすることが出来るなんて思いもつかなかった。


「いや、魔力を薄くする方法は中学校でも習ったことだと思うんだけど……」


 なんだと、こっちの中学校ではそんなことを勉強するのか。だが俺には記憶がないから知らないのは仕方がない。


「あー、俺な、前世の記憶を取り戻すまでの記憶がないんだ。あのクソ女神のせいでな!」


「ん、何かあったの?」


 首をかしげて結奈は聞いてきた。まぁ聞いてきたと言っても、恐らく結奈はなんとなく想像が出来ているかもしれないけどな。


「この手紙を見てくれればわかる!」


 そういって俺は、怜の時にも見せたあのクソ女神からの手紙を見せた。なんだか以前よりくしゃくしゃになっているような……。うん、気のせいだな!







「はへー、そうだったんだ。それじゃあつまり、この世界のことについて全然知らないんだね?」


「今日まで猛勉強はしたからそれなりにはわかるが、それでもわからないこともあるな」


 今まで学校で習うことやこの世界の常識その他諸々を勉強してきたとはいえ、それでもわからないことはまだたくさんある。前世とほとんど同じだとしても、やっぱり齟齬などが存在するんだ。


「う~んと、記憶魔法とかは使ってやったの?」


「な、なんだその魅惑的な魔法名は!?」


 結奈は流石にそんなことは知っているだろうと、そんな様子で聞いてきた。だが俺はそんな魔法を知らない。


 いやしかし、今まで聞いたことがなかったのに、そんな便利な魔法が存在するのか!?


「あー、やっぱり知らなかったね。そりゃあ使いたいと思わないと頭に思い浮かばないからね」


 俺たち神の使徒は、魔法は何でも使うことは出来るのだが、如何せん使おうと頭の中に思い浮かべなければ使うことが出来ないのだ。


「……お、使い方わかったぞ!なんだよ、こんな便利な魔法があるならあんなに勉強することもなかったな!」


 先程聞いた記憶魔法を使おうと思うと、どうやって使うかが頭の中に流れ込んできた。怜に転移魔法を教えてもらったときも思ったが、俺はいろいろと神の使徒としての経験が足らないようだ。


「あ、これ使えるの私たち以外にいないから、人前ではあまり使わないほうがいいよ~。目立つから」


「……人前で使えるものって限られてくるな~」


 魔法は多く使えても、使える場面というのは限られてくるものなんだな。まぁそれでも、使えることに越したことはないんだがな。


「翔夜が模擬戦でやった空間断絶も、普通の人は出来ないからね?」


「それはさっき聞いたな。というか、あれを空間断絶ってよくわかったな」


 思い出したぞ、結奈は確かあの時驚いてなかった女子生徒だ。道理で驚いてないわけだよ。同じ神の使徒なんだから、どうにかなるだろうと思ったのだろうな。


 しかも俺の使った魔法も分かるなんて、こいつ結構頭いいんだろうな!


「だって一応僕はここを首席で入学してるしね、それくらいはわかるよ」



「……は?首席?あの一番優秀ってやつ?」



 頭いいと思ったら、この学年の頂点に君臨してたぁぁぁぁぁぁぁ!!


「そう、その首席。記憶を取り戻す前の僕って結構な努力家でさ、ここに入学するまでずっと勉強ばかりしていたんだよ」


「今のお前からは想像も出来ないな……」


 こんな、何をやるにもめんどくさそうにしている奴からは考えられなかった。人は見た目によらないんだな……。俺がその代表格みたいなもんだな!


「失礼な、僕は今でも真面目だよ?」


「さっきの授業でも同じこと言えるのか?」


 授業の最初から最後まで寝ていたし、真面目とは言い難いだろう。真面目というならば、授業中に寝たりはしないぞ。


「あれは睡眠学習をしていたんだよ。そういう魔法もある」


 なんだと、そんな魅力的な魔法が存在するのか!?結奈は何でもないような様子で結構とんでもないことを教えてくれたが、そんなことが出来るんだろうか?


「マジか!……おい、全然そんな魔法が頭に思い浮かばないぞ?」


 すぐに睡眠学習をする魔法というものを頭の中に思い浮かべようとしたのに、全然頭には思い浮かばなかった。なぜだ?


「だって嘘だもん。そんな便利な魔法あるわけないじゃん」


 俺のことを馬鹿にしたような、からかっているような感じで言ってきた。


 こ、こいつ……!一発くらい引っ叩いてやろうか!?結構喜んじゃったじゃん!そしたら俺も授業中寝られると思ったのに……!いや、寝ていたら隣にいる沙耶に起こされるな!


「ふふっ、翔夜って見た目とは相反して話しやすくていいね。からかいがいがある」


「からかうな!」


 全く、人を玩具みたいに思いやがって……!


 しかし、こいつ初めて笑ったな。ずっと無表情だったのに、意外と笑うと可愛いじゃん。


「それじゃあ改めて、これからよろしくね」


「……はぁ。こっちこそ、よろしく頼む」


 もうさっきの無表情に戻って握手を求めてきたが、俺は笑顔になってくれたことがちょっと嬉しかったので、笑って返した。


「じゃあ、あの幼馴染の子への言い訳を考えようか」


「そういや、何にも考えていなかったな……」


 忘れていたが、俺が苦しめられていたこととか、二人きりで屋上に来た理由も含めて説明しなければいけないんだった。


 じゃないと、沙耶の機嫌が直ってくれなくなってしまう。なので、俺たちはいったいなんて言えば穏便に済ませることが出来るかを、授業が始まるギリギリまで考え始めた。


 だけど、なんで俺が女子と二人きりで昼食を食べることにそんなに怒っているんだろうか?恐らくただ心配なだけなんだろうが、そこまで不機嫌になるものなのかね……。


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