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第百六十話 真の敵


 俺と結奈は反射的に、唐突に表れたクソ女神へと襲い掛かった。


「ここであったが百年目! お命頂戴いたす!」


「どこの時代の人ですか!」


 どうして現れたかなんてどうだっていい。目の前に敵がいようとも、俺たちが優先して行うことは決まっている。


 このチャンスを逃すまいと、俺たちは化け物以上に全力でクソ女神の命を刈り取ろうとする。


「うるさい、死ね」


「純粋な殺意を感じました!」


 化け物相手に使っていたアンバランスな剣を、結奈は先程の数倍の速度で振るう。


「逃げてんじゃねぇよ!」


「いやあの、敵あっちなんですけど!? 間違ってますよ!?」


「いいや、間違ってないね!」


 結奈の攻撃をもってしても簡単に躱されてしまっている。


 俺も魔法で応戦しているが、どうしてもクソ女神には当たらない。


「死ね。そして死ね」


「二度死ねと!?」


「何度も死ね」


「嫌ですよ! エンドレスで死ぬって、どんな拷問ですか!」


 地面が砂地だということもあるのだろうか、踏み込みが甘いのかもしれない。


 それでも辺りに被害をもたらしながら攻撃しているが、一向に当たる気配がない。


 今更だが、化け物は俺たちに攻撃を仕掛けてくる様子はない。だからこそクソ女神にこうして全力で攻撃ができるのだ。


『俺は夢でも見ているのか……?』


 化け物は女神を凝視したまま、涙を流していた。


『女神さまが、この地上へとやってきた……?』


 どうやら、このクソ女神に会えたことに感涙しているようだった。


 いやまさか、そんな相手ではないはず。だが神の使徒になったりと、クソ女神へのあこがれでもあったのだろうか。


「あれが普通の反応ですよ二人とも!?」


「いいや、事実を知っていれば俺たちのような反応になるね」


「だから、死ね」


「お断りします!」


 普通がああいう反応をするとかどうでもいい。


 俺たちがこいつから受けた仕打ちを考えれば、とても妥当な行為だと思うだろう。


「僕からアイデンティティを奪った罪はデカい」


「えっ、元々それくらい———」


「『カタストロフィ!』」


「私を消し去る気ですか!?」


 クソ女神を十分に覆いつくすほどの範囲で発動させたが、難なく躱されてしまった。


 いやまぁ、胸がないことでここまで怒れるのは凄いのかもしれない。


『お前たちは女神さまに対し、なんと言うことをしているのだ!』


「おっと」


「危ねぇなぁ」


「僕の邪魔をしないでよ」


 唐突に化け物から風魔法で攻撃され、俺と結奈はクソ女神への攻撃を一時中断した。


「あれぇ私も攻撃されたんですが!?」


 よく見れば、その攻撃はクソ女神までも巻き込むものだった。


 実は女神だと思われてないんじゃね?



「というか、どうしてコレが女神だってわかったの?」


「コレ呼ばわり……」


 確かにそうだ、見た目で女神だとわかる判断材料はないのだ。


 なのにどうしてコレがクソ女神だとわかったのだろうか。


『何故だって? その気品に魔力、明らかに普通の人間とは一線を画すだろう!?』


「いや気品はねぇよ」


「滅茶苦茶言ってくれますねぇ!? 私にだって気品くらいありますよ!」


「自分で言っちゃうんだ……」


 魔力はわかる。ここにいる誰よりも桁違いに多く、質自体もおかしなほど濃密なのだ。


 それを考えれば神以外に考えられないだろう。


 だが、マジで気品はねぇな。


『お前たちの女神さまに対する行為は万死に値する! 即刻その無礼を改めろ!』


「そうです、もっと言ってください!」


「お前こそどっちの味方だよ……」


 あんた一応はこっちサイドだろうに、化け物の側につくんじゃねぇよ。


 俺たちの対応を考えれば至極当然ではあるけどさ。


「これは、仕方がないね」


「そうだな……」


 俺と結奈はアイコンタクトをとり、臨戦態勢をとる。


「怜、女神諸共この化け物を消し飛ばすぞ」


「何物騒なこと話してるんですか!?」


「僕もそこまでのことはできないかな~」


 あちらサイドについてしまったのならば仕方がない。この世界のために殺さなければいけない。


 とても心苦しいことではあるが、敵側にいるのならば仕方がないのだ。


 決して、大義名分ができて喜んでたりはしていない。


 本当に悲しいことだが、この世界を守るためなのだ。尊い犠牲となってくれ、クソ女神。


「というわけで、潔く死ね!」


「あーもー助けに来たのにこんな仕打ちされるなんて! 私帰っちゃいますよ、いいんですか?」


「助けには来ていないような……」


 もっともなことを言う怜はさておき、俺と結奈はその言葉を聞き少々慌てる。


「いや、それは困る……」


「だね、それは困るよね」


「そうでしょうそうでしょう」


 今帰ってしまうと、俺たちが非常に困ることになってしまう。


「「殺せなくなっちゃう」」


「なんでそんなところ息ピッタリなんですか!」


「やっぱり二人はブレないね~……」


 何時この世界に来るかも変わらないのだ。このチャンスを逃すなんて以ての外だった。



『貴様ら……俺の大願だった女神さまに———』


「あなたもうるさい!」


 その一言で、化け物の姿はいなくなってしまい、代わりに先程会った男が半裸の姿で横たわっていた。


「えぇ、そんな簡単に問題解決しちゃうの……?」


「僕たちの苦労はいったい……」


「ホント、ムカつく」


「問題解決したのになんて言われ様なんでしょう!?」


 先程まで俺たちが苦戦を強いられていた相手に、ただうるさいという理由で倒してしまった。


 こいつが直ぐに出てくればここまで問題が大きくならずに済んだものを、一体全体なんで使途をやっているのかわからなくなってくる。


「二人も大概だけど、女神さまも大概ですね……」


「なんですぐに出てきて問題解決しないんだよ……」


「だって女神が簡単に出てきたらつまらないでしょう?」


「うわ~今まで以上にぶっ殺してやりてぇ……!」


 どうして直ぐにやってこないのか。それは面白くないから。


 益々こいつを殺したくなってきてしまった。


 結奈も同意見なのだろう。先程から溢れんばかりの魔力が渦を巻いている。


「そうだ、言おうと思っていたことがあるんでした!」


 そんなことよりと言わんばかりに、クソ女神は俺たち二人に詰め寄り苦言を呈する。


「私は女神で、あなたたちは使徒なんです。私の言うことに従いなさい!」


「「ヤダ」」


「頑固ですねぇ!」


 今現在もクソ女神に攻撃を仕掛けているのに、従うわけがないだろう。


「じゃあ、結奈さん!」


「殺す」


「聞きなさい!」


 魔力を思い切りぶつけているのに近づくクソ女神も逆にすごいな。


 当然俺も攻撃の手を緩めはしないが。


「先程あなたはアイデンティティが無くなったといってしましたね?」


 これだけ全力で攻撃しているのに、平然と話しかける姿に腹立たしく思う。


「どうです? 今ここで胸を大きくして差し上げましょうか?」


「なっ!?」


 その言葉に衝撃を受けるかのように、結奈は攻撃を止め呆然と固まってしまった。


 そしてゆっくりと動き出し、こちらへとやってくる。


「翔夜……」


「なんだ?」


 無表情なところは変わらないが、何か決意をしたかのような目をして、俺の両肩をつかんで諭すように話しかけてくる。


「やっぱり女神さまを殺すなんて、そんな酷いこと出来ないよ……」


「言いくるめられてんじゃねぇよ!?」


 手のひら返しもいいところだ。



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