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第百五十八話 最強対最強


 神から力を奪い、偽物のとはいえ神の使徒となる禁忌の術を使ったのだろう。


 尋常ではない力を見せつけられ、俺たちは嫌な汗が流れてくる。


 しかもまだ本気を出して戦っているとは思えない。言うなれば俺たちを赤子の如く弄んでいる状態だ。


「俺ら三人しかいなくてよかったな」


「あれは僕たちでも苦戦しそうだしね」


「正直邪魔」


 神の使徒でも対処できるか不安だというのに、他の者を守りながら戦うのは困難を極める。


 神の使徒に及ばないでも、彼らは強い。だが目の前の化け物を相手取るのは荷が重いだろう。


「勝てるかな?」


「勝てるかじゃなく、殺すんだよ」


「おっと結奈はいつにも増して物騒だな!」


 正直、先程の結奈を除けば初めての強敵と相対してる。その状況に柄にもなく不安になってしまっていた。


 このような化け物をのさばらせてしまうかもしれないと考えていた。


 だが結奈のおかげで心を落ち着かせることができた。


「殺すよ?」


「いや~殺人はちょっと……」


「殺神はいいのに?」


「だってクソ女神だし」


 


 俺たちらしく、普段通り気の抜けた会話ができる程度には落ち着けた。


『漸く落ち着いたか?』


「なんだ、待っててくれたのか?」


『本気のお前らと戦わないと意味がないからな』


「あっそ」


 よほど自分の力に自信があるのか、全力を出せるように待っていてくれたようだ。


 戦隊ものとか打診があったら出れそうだな。


『お前らの力は知っている。調べたからな』


「それがどうした?」


『この力は、お前らを凌ぐほどの力だってことだよ!』


「くっ!」


 地面を蹴ったのは見えた。だがそこからの攻撃がほとんど見えない。


 身をかがめたことで、間一髪のところで躱すことができた。だが高速で動き姿が見えていないため、どのような攻撃を仕掛けてきたかわからない。


 それは二人も同じだろう。躱すことはできていても、俺と同じく目線が適当なところを見ていた。


『神の使徒の力、最高じゃねぇか!』


「調子に乗んじゃねぇ!」


 俺たちの背後に現れ、余裕綽々といった様子で見降ろしていた。


 そして笑みを浮かべ、もう一度攻撃を仕掛けてくる。


 どのように攻撃してきているか見えないが、恐らくただ殴りに来ているだけだろう。


 そう考え、俺はその攻撃を躱しつつ全力で真上に蹴り飛ばす。


「偽物が本物に勝てるわけねぇだろうが!」


 今まで俺は全力を出したことがほとんどない。


 そんな俺が全力で蹴り飛ばしたのだ。豆粒のように直ぐ飛んで行ってしまった。


「翔夜、今どうやってカウンターできたの?」


「直感!」


「あ~、翔夜らしいね……」


 見えないのに意識してカウンターできるわけがないじゃないか。


 多分来るだろうなって思って全力で蹴ったのだ。外しても全力で蹴れば衝撃波とかでないかなとか考えていた。


 結果オーライだ。


「じゃあ次は僕のターン」


「別にターン制じゃねぇけど……まぁ結奈に任せるよ」


「はーい」


 その直後、結奈はとてつもない速度で魔力を練り上げ、最強とも言えるのではないかという魔法を放つ。


「『疑似・神の槍』」


 その魔法は、神を殺すために作った魔法。


 以前よりも魔力が込められており、強力となっている。それに伴い化け物へ向かう速度もケタ外れだ。


『馬鹿めっ!』


 放たれた直後、俺たちの目の前へと転移して現れた。


『そんな遅い攻撃、当たるわけ———』


「そりゃあ、囮だしね」


 だが現れた直後、結奈はまるでそこへと転移してくるのがわかっていたかのように、化け物に合わせて背後に転移した。


 その声に振り返る間に、次の魔法を完成させていた。


「改良版『カタストロフィ』」


 結奈は漆黒に染め上がった右腕を振り下ろし、化け物を両断する。


 以前から見ていたそれがどういった効果を持っているかわからなかったが、砂浜が、というより振り下ろした右腕の延長線上は文字通り切られていた。


「モーゼかよ……」


「凄い威力だね……」


 カタストロフィという魔法は、簡単に言えば消し飛ばす魔法だ。


 それを集約させて放ったのだ。正確には切ったのではなく、延長線上にあるものを消したのだ。


 本当に味方でよかったと思うよ。


「えっ?」


「マジか……」


『ん~、効かないね~?』


 切られたはずの化け物は、ずっと不気味な笑みを崩さず結奈を見据える。


 そして結奈を捕まえるべく、化け物染みた大きさの手を高速で伸ばす。


 しかし掴まる直前、結奈はこちらへ転移して難を逃れた。


「あの攻撃で切れてないって、ほんとおかしい」


 悪態をつき、結奈は化物を睨む。


『いやいや、今のはすごかったぞ?』


 まるで馬鹿にしているような口調で、さらに拍手してくる。


「なんで僕の攻撃を食らって切れてないの?」


『勿論切れてるとも』


 そういって切れた部分を見せてくる。


 だがそこに傷跡が全くなかった。


『これは~、直ぐに再生してるんだよぉ!』


 そう言ってゲラゲラ笑いだした。


 戦っている最中であるにもかかわらず、腹を抱えて笑っていた。


「なんて嫌な敵」


 隙だらけだが、結奈も攻撃を仕掛けない。


 その理由は、ただ倒す手段がないからである。


「じゃあ再生できなくなるまで攻撃してやろうか?」


『俺の魔力が切れると思っているのか?』


「……なに?」


 誰しも生きていれば魔力に限りがある。


 途方もない魔力を持っている神の使徒であっても、内包している魔力は無限ではない。


 にもかかわらず、こいつは自信満々に答えた。


『俺はあの神から力を奪ったのだぞ?』


 海神様は名の通り海の神様。


 だが神から魔力を奪ったからといって無限ではない。


『それはつまり、この地球上から延々と魔力を供給され続けるんだよぉ!』


「なんだと……!」


 通常ではありえない。


 俺たち人間は、空気中に漂っている魔力を吸収して魔力を回復する。それは微々たるものであるため、全快するにはある程度時間がかかる。


 だが神ならば、不確定な存在であるため内包する魔力も吸収する魔力も桁違いだ。


 ただ魔力を奪っただけではなく。その吸収力も奪ったとは思いもしなかった。


「じゃあ、つまり……」


 怜も察したのだろう。


『そう、俺を殺すことは無理なんだよ!』


 この男を殺すことは、俺たちでも実質不可能ということだ。


 地球からの魔力供給を絶たない限り、この男は何度でも再生する。


「それって……」


 結奈にとっても想定外の敵だったのだろう、驚きを露わにして目を見開いていた。




「殺し放題じゃん」


「やっべ狂人がここにいるわ」



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