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第百五十五話 女神とお話ししました。

予約掲載をしていたのですが、何故か投稿されていなかったため今の時間に投稿になります。

すみませんでした。



 俺は全力でクソ女神に殴りかかった。


「ちょっと!」


 精神だけしかこの世界へしか来れていないため、殴ることができるか不安であった。


 だが自分に『重さ』を感じることができるため、俺は躊躇わずに拳をふるった。


「危なかった~!」


『くっそ、あとちょっとだったのに!』


「その執着なんなんですか!?」


 俺の拳は、いつぞやのように見えない壁に阻まれて、触れることすらかなわなかった。


「もしかしてなんですけど、このために来たんですか?」


『このために来たといっても過言ではない』


 精神だけこの世界へと来ると知らされ、俺は最初反対した。


 だけども殴ることができるとわかり、そこで来ることを決断したのだ。


「嘘でも仲間のためとか普通言うでしょう!?」


『お前を殴ることが仲間の思いでもあるんだよ!』


「あ~……そういうお仲間でしたね……」


 何やら頭を抱えているが、神の使徒だからといって言うことを聞くと思ったら大間違いだ。


 結奈のためにも殴りたかったが、残念ながら今回も無理だった。


「それで、結奈さんのことですよね?」


『ちょっと待て、その前にこれはなんだ?』


 話の腰を折るように俺はクソ女神に尋ねる。


「何って、拘束しているんですが?」


 そう、俺は今、なぜか四肢を拘束されているのだ。


 大の字状態で空中に縛り付けられているため、俺は抗議するように叫ぶ。


『なんで拘束しているんだって聞いているんだ!』


「だって拘束しなかったら確実に暴れるじゃないですか!」


『俺がそんな野蛮人みたいなことをするとでも?』


「すると思っているから拘束しているんです!」


『クソ女神め……!』


 憎らしくクソ女神を睨むも、まぁ実際のところ、隙さえあれば殺そうとするだろうな。


 しかし本当に身動きが取れないため、今は大人しく従うことにした。


「それで、結奈さんのことですか?」


『……あぁ、そうだ』


 急に真剣な面持ちで話しだすため、戸惑いつつもクソ女神の言わんとしていることに頷く。


 いつものことなのだが、こいつは急に真面目になったりふざけたりするからわからん。


『どうにかできるか?』


「そうですね……できると思いますよ?」


『そりゃそうだよな、これでも一応神だし』


「一応ではなく、れっきとした神です」


 胸を張っているが、これでも神様なんだよな~と、訝し気な目で見てしまう。


 俺は敬意を払わないけど。


「でも~、神様にお願いするなら~、それ相応の態度ってものがあると思うんですよ~」


『……殺すぞ?』


「脅迫!?」


 こいつはつまり俺に頭を下げてお願いしろと言っているのだ。


 そんなことするはずがないだろう。何なら力づくでこいつに言うことを聞かせてやろうとさえ思っている。


『俺がてめぇに頭下げると思ったか!』


「普通下げません!?」


『生憎お前のような奴に下げる頭は持ち合わせてないんでな!』


 クソ女神に対し指さそうと思ったが、拘束されているため口だけでしか反抗できない。


「いいですか!? 結奈さんの状態をすぐに直せるのは私しかいないんですよ!?」


『ぐっ……!』


 それを言われてしまうと俺は弱い。


 本来そのために来たのだから、そう言われてしまうと俺が折れないわけにはいかない。


 いや本来の目的はこいつを殴るためか。


「ほらほらほら~、結奈さんのためですよ~?」


『くっそ……!』


 拘束は解かれ、俺の体は自由の身となった。


 だがここで俺の殴りにかかってしまうと、こいつがへそを曲げて協力的ではなくなってしまう可能性があった。


 だから俺は仕方なく、本当に仕方がなく片膝をついた。


 そこから、頭はどうしても下げることができなかったが。


「この女神さまに、泣いて頭を垂れな———」


「女神様、少々よろしいで……?」


 そんなやり取りをしているところへ、翼をはやした少女が入ってきた。


 以前に会ったことのある、俺に対して攻撃的だった天使だ。


「なっ、貴様、何故ここへ!?」


『おっと会って早々にめんどくさそうだな!』


「落ち着きなさい、私にお願いするために無茶をしてやってきたのです」


『お前ってホント……怖ぇよ』


 急に口調を変えて穏やかに話しているため、先程とは似ても似つかない女神らしい有り様った。


 その様子に俺は小さく恐怖を抱いた。


「翔夜さん、結奈さんのことは私に任せなさい。あなたはお戻りください」


『お、マジで?』


「貴様、女神様への不遜な態度、万死に値するぞ!」


『うっわめんどくせぇ……』


 俺は頭を下げずに済み、結奈をどうにかしてくれそうだった。


 女神として、頭を自ら下げさせるというのは印象が良くないのだろう。


 めんどくさそうなやつだと思っていたが、今なら来てくれてありがとうとさえ思う。


「使徒が私に会いに来たのですから、寛容な対応をしなさい」


「……女神さまがそういうなら、致し方ありません」


『すんごい不服そうじゃん……』


 口では納得しているようだったが、天使は悔しそうな表情で俺をにらんでいた。


 何なら今にも攻撃してきそうな感じじゃん。もうこいつと関わらないようにしよう。


「では、また会いましょう」


「さっさと行け!」


『もうやだこいつら……』


 口が悪い天使に話し方が急に変わるクソ女神。


 もっとまともな天使と女神はいないものだろうか。


 そう思っていると、この空間へと来る際に感じたように、意識がぼんやりと霞んでいった。





 そして俺は再び目を開けると、精神は自身の身体へと戻ってきていた。


「あっ、翔夜君」


「俺、帰還!」


 見渡す限り海が広がっている光景が目に張ってきて、俺は帰ってきたことを自覚する。


 そして俺がクソ女神に会いに行った元凶である結奈はどこかと周囲を見渡す。


「ん? あれぇどうなってるんだ?」


 見渡した先に俺の視界に入ってきたのは、憎しみの表情で俺を攻撃しようとしている結奈と、それを止めている怜の姿だった。



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