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第百五十一話 世界最強の…


 転移した先は、太平洋のど真ん中。


 それも、飛行機と同じ高さである高度一万メートル弱。


「ここなら流石に直ぐには来ないだろう」


 そんなところへと転移してきて、酸素が薄い中俺たちは大丈夫なのかと、多少の心配はしていた。


 だがそれは杞憂に終わった。


「翔夜、やってくれたね……」


「あそこでは仕方なかっただろ」


 俺たちは普段通り話すことができ、また怒ることも問題なく出来ている。


 現状、身体的な問題は全くといっていいほどない。


 身体的な問題はないが、残念ながら精神的な問題は残されていた。


「それはそうだけど、ほかにも何か言いようはあったでしょ!」


「無茶いうな!」


 転移してくる直前、俺は結奈に禁句である「貧乳」と発言してしまった。


 それを聞いた結奈は、今までに見たことのないほど魔力が荒ぶり、般若のような顔をし、傍から見ても静かに怒り狂っていた。



「言い争っていても仕方ないか……」


 そんな状態の結奈に迫られたら逃げるしかなくなるのは仕方がない。


 そしてもう過去を変えることはできないため、言ってしまったことはしっかりと受け入れ、今後の対策を考える。


「どうして結奈がああなったか教えてくれ」


「もう……はぁ」


 ため息をこぼし、気持ちを切り替えて話し始める。


「どうして操られているかだね。まず…………」


「ん、なんだ?」


 怜の次の言葉を待っていたが、中々話さずにいるため尋ねる。


「これは話していいものか……」


「迷ってる暇なんてないだろ」


「いやぁ、これは言わなくてもいいかなって……」


「原因がわかることで対処出来るかもしれないだろ」


「そうなんだけど……」


 解決策が全く思い浮かばない今、原因を知ることで解決策を見つけることができるかもしれない。


 そのため怜に聞いているのだが、その怜がどうしても答えようとしてくれない。


「すぅ、はぁ……。もし、今から話す事実を結奈から聞かれたら、絶対僕が言ったって言わないでね!」


「……よくわからんが、まぁわかった」


 深呼吸をして、そして怜は詰め寄って俺に念押ししてくる。


 そこまでしなければならない事実とはいったい何だろうか。


「あのね、結奈が操られたのは心の隙間があったからなんだ」


「心の隙間?」


「翔夜見たいな人には無縁だろうけど」


「一言余計だぞ?」


 心の隙間、つまりはアイデンティティが確立していなかったりバレたくない秘密だったり、そう言ったもののことを言っているのだろう。


 あと俺も多分あるだろ、心の隙間……いや、俺の場合、隙間というか元からスッカスカなのか。


「んで、その心の隙間っていうのはわかってるのか?」


「……まぁ、一応」


「それはなんだ?」


 苦虫をつぶしたような表情で、中々教えてくれようとしない。


 時間が限られているのだから、もったいぶっていないでさっさと教えてほしい。


「……他言無用でお願いね?」


「わかってるって」


 再度念押しするように詰め寄って確認してくる。


 そこまで言うのだから、俺が言うわけがないだろう。元々そこまで興味があることでもないからな。


「えっとね、結奈はね———」








「翔夜のことが好きだったんだよ」








「いや、それはない」


「本当だって!」


 何かと思えば、結奈が俺のことを好きだというのだ。


 こんな時に冗談はやめてほしい。


「んで、本当のところは何なんだ?」


「いや、これが事実だって」


「……いや、いやいやいやいや、普段の対応思い出してみろよ!?」


 俺は結奈と出会ったときの頃に思いをはせる。


「暴言を言うわ、暴力は振るうわ、雑に扱うわ……本当に俺のことが好きな要素はどこにもないだろう」


 俺は結奈に好かれるようなことは一切しておらず、また好かれるような行動をとられたこともない。


「好きな人をからかう行動を知らないの?」


「それは小学生だろ。結奈は高校生だぞ?」


 何なら転生している以前を含めれば大人といっても過言ではない。


「愛情表現がわからないと、そういう行動をとってしまう人も中に入るんだよ」


「男子小学生がやるそれを、結奈がやったと?」


 甚だ信じられないが、怜が嘘を言っているようには見えない。


 それにこの状況で嘘を言うとは到底思えない。


「自分で言うのもなんだが、俺好かれる要素ないぞ?」


「人は見た目じゃないんだよ」


「馬鹿にしてるな、貴様?」


「してないしてない」


 どうして、俺のことを好きになるんだ?


「もう事実を認めてよ」


「でも、俺が沙耶のことを好きだって知ってるわけだし……」


「だから、その感情を件の男に利用されたんだよ」


「……どういうことだ?」


 もし仮に、結奈が俺のことを好きだったとして、何故それが男に利用されてしまうのだろうか。


「好きな男が大切な友人と付き合う。それが心を不安定にしていたんだよ」


「……そこを付け入れられたと」


「そういうこと」


 なに、単純なことだ。


 恋する乙女の心を、男は弄んだというわけだ。


「にわかには信じがたいが……」


 未だに半信半疑ではあるものの、理にかなっている。


 恋する乙女と形容したことは少々自分でも疑問に思ってしまうが、それでもそれが事実なのだろう。


「……いや、それをしったところで俺にどうしろと———」


「見つけた……」


「あっ、やっべ!」


 まだ数分と経っていないが、結奈に見つかってしまった。


 作戦も考えていないこの状況で、結奈に見つかってしまうことは避けたかった。


「しかも魔法効いてねぇなオイ!」


 割と本気で魔法を打ち込んだにもかかわらず、傷一つついていないところを見るに、俺の最強の魔法は効かなかったということになる。


 流石、神の使徒の中で一番強いだけはあるな。もう嫌になるわ。


「殺す……!」


「ほらもうすんごい怒ってるじゃん!」


「操られているから自我がないんじゃなかったのかよ!」


「翔夜、コロス……!」


「あれぇ、お前絶対自我あるだろ!」


 先程会ったときは言葉を発さなかったにもかかわらず、怒りを露わにしているときだけは話すなんて、絶対に自我があると思ってしまう。


 しかし俺の問いかけには答えないため、本当に自我はないのだろう。


 そんなことを考えていると、結奈はおもむろに右手を天に掲げる。


「なぁ、アレなんだと思う?」


「……ん~ちょっとまずいねぇ!?」


 俺が指さしたそれは、結奈が今行っている行動。


 結奈の手のひらの魔力が凝縮されていき、それは暴流の如く荒れ狂う魔力を無理やり閉じ込めていた。


 そしてそれは、今にも爆発しそうなほどの魔力量だった。


「あれが解放されたらさ、どうなると思う?」


「ん~大怪我?」


「大怪我で済めばいいがな……」


 俺はそれが振り下ろされる直前、怜と同じタイミングで動いた。


「全力で回避するぞっ!」


 二人とも転移魔法も使い、数キロほど距離をとった。


 その魔法は対象を失い、海へと落ちていった。


「……ねぇ、あれさ———」


「ばっかじゃねぇの?」


 俺たちの視線の先には、ラ〇ュタの雷でも撃ったかのような爆発が起こっていた。


「範囲で言えば、関東消えてる?」


「いや流石にそこまでは……」


 俺の発言に怜は否定してくるが、それに匹敵するような攻撃を今しがた俺たちにしたのだ。


「どうしよ……」



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