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第百四十四話 肝試し


先日投稿できずすみませんでした。

今後は遅れることのないようにしていきますので、よろしくお願いします。



 大切な話も終わったため、教員二人は自室へと戻っていった。


 俺たちももう用はないため、陸のいる部屋へと戻る。


「なぁ、もしだぞ?」


「なに?」


 俺たちも自室へと戻る途中、怜に問いかける。


「もし、あいつらが俺の告白計画をぶっ壊そうとしよう」


「うん」


「俺、世界を滅ぼすかもしれない」


「やめてね?」


 神妙な顔つきで俺は話し始めたが、内容があまり真面目ではないと思ったのか、怜は適当に返すだけだった。 


「シストの方々がいるんだし、途中で邪魔されることはないんじゃないかな?」


「いいや、俺はあいつと相対したからわかる」


 怜はシストを信用しているからあまり考えずに返答する。


 勿論俺だって信用しているし、もしものことは怒らないだろうとは考えている。


 しかしだ、絶対なんてこの世にはないし、それに少しだけだが話をしたからこそ男の異常性が理解できる。


「あいつ、人の嫌がることが好きなクソ野郎だ」


「嫌がること、ねぇ」


 前回も、俺たちが逃げないだろうと考えての作戦だったのだろう。


 俺の心情を利用して、いやらしく苛めるようなクソ野郎だと俺は思っている。


「どうするかなぁ……」


「とりあえず翔夜は自分の身を守ることに専念しないと」


「大丈夫だろ。多分だけど」


 その男のことが気になって告白どころではなくなってしまう。


 俺が狙われているといっても、告白のことに比べたら大したことじゃない。


「女神様からも言われているし、警戒しなよ?」


「俺が一番気にしなきゃいけないのは、告白のことだ!」


 どうやって邪魔されずに、且つ男を撃退できるかを考えた。


 しかし全然思い当たらず、頭を抱える。


 そんな俺に、怜はボソッとつぶやくような声で警鐘を鳴らした。


「翔夜の言う通りなら、その男は沙耶を狙う可能性だってあるんだからね?」


 その言葉で、俺はハッとした。


 考えもしなかった。


 どうせ狙いは俺だと高をくくっていた。


 相手の嫌がることをするならば、沙耶が危険にさらされることだって考えられる。


「ちょっとその男ぶっ殺してくる」


「どこに!?」


 俺は廊下から壁をぶち破って出ようとした。


 だが怜が俺の腕をつかんで邪魔してくる。


「世界中探せばいるだろ!? 異空間だろうが見つけ出して喧嘩を売ったことを後悔させてやる!」


「落ち着いてって! 仮にそうだとしても、シスト隊員が味方に付いているんだから、安全は保証されているでしょ!」


「それでも———」


「それに!」


 押し問答を続けていたが、突如怜は大声を出して、俺もそれに一瞬怯み次の怜の言葉を待つ。


「もし危険が及んでも、翔夜が守ればいいでしょ」


「……それもそうだな」


 怜の発言に、俺は納得して落ち着きを取り戻した。


 俺は沙耶を守ると誓った。


 なら相手が沙耶に危害を加えようとしても、俺が確実に守り通せばいいだけだ。


「なら今は、旅行を満喫しよう?」


「……おう!」


 そうだ、沙耶に危険が及ぶのならば俺が守ればいい。


 さぁ、来るならば来い! どこからでもかかってこいや!


「はぁ……」


「なんだ、ため息なんかついて?」


 もう先程の怒りはどこへやら。俺は普段の調子で、隣でため息をついている怜に尋ねる。


「いや、精神的に疲れたなって……」


「胆力が足りないぞ~?」


「誰のせいだと……はぁ……」


 そこからは普段と他愛もない会話をして、自室へと戻った。




「今戻ったぞ~……って、みんなどうした?」


「あ、翔夜っ」


 戻った先には、陸だけでなく女性陣もいた。


 全員、つい数十分前まで風呂に入っていたのだろう。風呂上がりで火照っている状態だった。


「あのね、これからみんなで肝試ししようって話になったのっ」


「肝試し?」


 俺はその話を聞いて、怜の方を見た。


 怜はうなずき、俺はそういうことかと納得した。


 つまりこれも、事前に仕組んでいた計画なのである。


「この辺ってそういう曰く付きの場所があるのか?」


「なんと、魔物の気配がしないのに奇々怪々な現象が起こる場所があるんだよ」


「結奈、なんか乗り気だな」


「だって、翔夜の怖がる姿とかみたいじゃん?」


「っは、誰が怖がるか!」


 俺はまるで何も知らないように振舞っているが、俺はすべて知っている。


 そこが魔物などおらず安全地帯であるということを。そして幽霊といった類のものもいないということを。


 つまり、ただの肝試しという名の夜散歩である。


「肝試し、楽しそう」


「こういう催しは初めてだな! 俺も楽しみだ!」


 しかしこういうものは雰囲気が大事であるため、そんな無粋なことは言わない。


 俺だってみんなとそういう催しができることは楽しみにしてるのだ。


「じゃあみんなで行くか!」


 そういって俺たちは夜の森へと行くこととなった。








 ===============








「魔物じゃない何かって、ちょっと不気味だね……」


 魔物はいないが、そういう曰く付きの存在がいると言われている。まぁ嘘だが。


 その話を信じている沙耶は、はたから見てもとても怖がっている様子だった。


 そのため俺は計画していた通り沙耶を励ます。


「何が出てきても、俺が守ってやるから大丈夫だよ」


「ありがと……」


 そう言って沙耶は俺の腕にしがみついてくる。


 俺の位置から沙耶の顔を見ることはできないが、声から多少の恐怖があることは伝わってくる。


 しかし、俺は恐怖を一切感じておらず、ただ『歩くこと』だけに集中してる。


 だって胸が、胸がぁ!!!


『なぁ怜よ……』


『なに?』


 俺は誰にも聞かれたくなかったので、念話を用いて怜に話しかける。


『ちょっと言いたいことがあってな』


 顔はとてもこわばっていることが自分でもわかる。それでも伝えなければいけないことがあった。


『ほんと、マジで、ありがとう……!』


『はいはい』


 沙耶とこんなに急接近したことはなかった。しかも持続的に物理的に近くにいるのは初めてだった。いや近くというかもう触れているのだが。


 とにかく、もう最高なのだ。


「なんにもいないね~」


「いなくてもいいだろ。こういうのは雰囲気を楽しむものなんだから」


「それもそうだね」


 結奈は本当は何かいてほしかったようで、沙耶とは対照的につまらなさそうにしていた。


「ねぇ、翔夜」


「なんだ?」


 唐突に結奈が、真面目な雰囲気を醸し出して俺に話しかけてくる。


 その視線の先には、結奈の腕に抱き着いているエリーがいる。


「女の子に抱き着かれるって、いいね」


「俺に同意を求めるな」


 沙耶が俺に抱き着いているこの状況でそれに同意していいものか悩む。


 だが内心激しく同意している。マジ最高だと。


「夜道を友人たちと歩くだけでも、結構楽しいものだな!」


「うん、楽しい」


 土岐兄妹は、肝試しもそうだが全てが新鮮なようで、何も出なくても楽しそうにしていた。


 もとは俺の計画の一部だったのだが、喜んでくれたのなら俺も嬉しく思う。


「奈那は僕に抱き着いてもいいんだよ?」


「大丈夫」


「そっか……」


 表情はいつも通り無表情ではあるが、心なしか寂しそうな様子がうかがえた。


 両手に花を目指したようだが、片手に花があるんだからいいだろう。


「翔夜死ねばいいのに……」


 何故か俺の方を見て睨みつけてくる結奈は、もちろんだが表情は変わっていない。


 そして結奈が見ているのは俺ではなく、沙耶を見ていた。つまり俺のことも羨ましいと思っているのだろう。


 それに納得しつつ、俺は敢えて無視して歩き続ける。




「なぁ、なんかいないか?」


 俺の指さす方向に、何か白い(もや)のようなものが見えた。


「魔力感知には引っかからないよ?」


「お前いつの間にそんな魔法を……」


 といいつつ、俺も先程の話を聞いてからずっと発動している。


 確かに目視では何かいるのだが、魔力感知には引っかからない。


 人間であれ魔物であれ、生きているのであれば誰しも必ず魔力を持っている。だが目の前のあれは魔力を感じられない。


「魔力がないけど、あれって人だよな?」


「「えっ!?」」


 俺の一言で、沙耶とエリーは何かを察したようだ。


「それってつまり……」


「そういうことなのでしょうか……」


 二人は顔を青ざめて、そして俺と結奈の後ろに隠れるように強く抱きしめる。


「おぁ……ゆ、幽霊か?」


 間抜けな声が漏れてしまったが、俺はその声などなかったかのように二人の考えているであろう対象の名前を出した。


「しょ、翔夜っ!」


「翔夜さんっ!」


「ごめんごめん」


 その名前を出した途端、二人とも叫ばんばかりの声量で俺へと怒鳴ってきた。


 それは怒りからくるものではなく、恐怖からくるものなのだろう。


 少々申し訳なくなり、俺は軽く謝罪した。


 しかし、沙耶とエリーに恐怖を与えるのは如何せん許せることじゃあないな。


「なんかよくみると、数も多そうだね~」


「おぉ、あれが幽霊か!」


「初めて見る。すごい、ホントに魔力感じない」


「おうおう沙耶を怖がらせるクソどもはどこのどいつだぁ?」


 人の形をしているような、しかしそれでいて朧気であるためその姿をしっかりと視界に収めることができない。


「うわぁ、ここ全然怖がってない人の方が多いんだけど……」


 三者三葉に俺たちは幽霊に対して反応を示していたが、二人を除き他の者たちは恐怖を感じていなかった。


「幽霊がなんだってんだ! 俺は人間の方が怖いということを知っているからな!」


「呪いとか……」


「解呪の魔法があるから怖くねぇなぁ!」


「そうですか……」


 雰囲気ぶちこわしなことはわかるが、俺だって沙耶たちを怖がらせないようにしているのだ。


 だが二人とも目を強く瞑っており、そして聞こえないように耳まで抑えていた。


「さてと、あれどうするかね~」


 俺は沙耶に抱き着かれながらも、どう対処するか冷静に考えを巡らせる。



今回一日遅れてしまいまして、大変申し訳ございません。

今回も読んで頂きありがとうございます。

これからも読んで頂けると幸いです。

今後ともよろしくお願いいたします。

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