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第百四十話 楽しんで話し合い


 話もそこそこに、みんなはそれぞれ海へと飛び込んだ。


 沙耶のことをもっと褒めていこうかと思ったが、やはり遊ぶ時間を大切にしたいため、そしてキャッキャウフフしたいため、俺はあとで褒めることにした。


 みんな海へ入り水を掛け合ったり魔法で跳んだり水球を出現させて遊んだり、普通に泳いだりして楽しんでいた。


「楽しそうだなぁ」


 俺を除いては。


「なんで翔夜は海に行かないの?」


 休憩とばかりにこちらへと戻ってきた怜は俺に問いかける。


「察しろ」


「ごめんちょっとわからない」


 砂浜で一人、パラソルの下で体育座りしている俺は、怜の問いにあやふやに答えた。


 簡単にわかるだろと思っての発言だったが、しかし怜はわからない様子だった。


「同じ男ならわかるだろ」


「……男だけどわかんないや」


 このように発言すれば大抵わかるはずなのだが、怜は本当にわからないようだった。



 先程沙耶を見て、そして立つことができず座っているのだ。男ならば簡単に答えが導き出せそうなものだのだがな。


「お前、もしかしなくても女の子なんじゃ———」


 言い終える前に、俺は宙を舞っていた。


「くっそ……!」


 俺は頭から海水へとダイブして理解した。怜が俺の腕をつかんで思い切り投げ飛ばしたのだ。


「いきなり投げ飛ばすことはないだろ!」


 声を張り上げて叫ぶが、結構沖の方に飛ばされたので聞こえたかはわからない。


 常人ならば怪我をしていたかもしれないものを、よく俺にそんなことができたものだ。


 まぁ大丈夫だからやったんだろうが、『女の子』呼ばわりすることは結奈の『貧乳』に相当すると考えてもいいかもしれないな。


 今度から気を付けよう。


「ったく……まぁ、海に入っているなら別にバレないか」


 あと、海に入ってしまえば、浅瀬に行くことがなければ問題はないだろう。


 最低限腰までの深さがあれば誤魔化せる。


 そう思っていると、浜辺から沙耶がやってきた。


「翔夜、体調は大丈夫?」


「あぁ、すっかり良くなった!」


「よかった。あんまり無理しないでね?」


「おう!」


 俺は体調が悪いからと休んでいることにしていた。そのため沙耶が心配して駆けつけてくれたのだ。


 なんて心優しいんだろうか。益々好きになってしまうじゃないか。


 それよりも、俺が吹っ飛ばされたことに対してはスルーなんですね。


「じゃ、遊びますか!」


 後ろ姿からも直視することが躊躇われるんだけど、どうか浜へ行く途中に治まっていますように。


 そう願って俺は沙耶と浜辺へと戻っていく。


「ん?」


「どうしたの?」


「いや、今何かに見られている気がしてな」


 ふと、背後から刺すような鋭い視線のようなものが感じられた。


 直観みたいなものだし確証はないのだが、それでも見られているような気がしたのだ。


「でも、私たち以外いないよ?」


「そうだよな……」


 見渡しても俺たち以外には誰もいないため、気のせいということにしてみんなの下へと戻った。








 ===============








「それで、三人でしか話せないことって何?」


 日も暮れてきて、俺たちは片付けて別荘へと戻っていく。


 そんな中、俺たち三人は浜辺に残り話し合いを始める。


「わかっていると思うが、クソ女神関連だ」


「なに、殺す算段でもできたの?」


「残念ならがそうじゃないんだ」


「チッ」


「まぁそう怒るなって」


 『疑似・神の槍』が通用しなかったため、逆に殺すことができないことがわかってしまっただけだがな。


「殺すこと前提で話を進めていくのやめない?」


「「無理」」


「そうですか……」


 そう考えてしまっても仕方のないことだろう。


 それてしまった話を戻す。


「んで話を戻すが、先日俺たちに喧嘩を吹っ掛けてきたアイツって、俺らと同じ転生者だったんだよ」


「アイツって、翔夜の言ってた空中要塞の?」


「そうそう」


「そいつが校長先生と同じってこと?」


「そうそう」


 類稀なる才能をもってこの世界へとやってきた人間が、その全員が全員善良な人間だとは限らない。


 神の命を狙うやつだっているのだ。悪巧みをする奴が至っておかしなことではない。


「それで、そいつが?」


「そいつが、また俺たちにちょっかいをかけてくるそうだ」


 だが問題なのが、その男が俺たちへとちょっかいをかけてくることにあるのだ。


 使い魔の友人を人質にとったりと、俺たちのと直接的な戦闘は控えるようにしてるところを見るに、結構慎重なのだろうと推測できる。


 そのため、次に会う時もまた小賢しいことをしてくるのだろうと考えている。


「……何か問題がある?」


 だが、結奈はそうは思っていないようだ。


「いや、問題ありだろ」


「どうせ何かしてきても、僕たちならどうにでもなるでしょ」


「そうだけど、俺からしたら邪魔されたくないんだよ」


 確かに結奈の言う通り、俺たちならばどんな敵が来ようとも打破できる自信がある。


 しかし俺には邪魔されたくない理由が存在する。


「なんで?」


「それはほら……楽しく遊んでいるのに邪魔されたら興ざめだろ?」


「そりゃそうだけど……」


「何か隠してない?」


「べ、別に何も隠してねぇって!」


 俺は沙耶へと告白するということをまだ結奈に言っていない。


 邪魔されたくないためだ。茶化されたりしそうだしな。




「と、とにかく!」


 そう言って怜が俺たちの間に入り、話を逸らす。


「取り敢えずそういうやつがいるっていう情報を共有したんだし、もうお開きにしよ!」


「そうだな、沙耶たちも待っていることだし!」


「夕飯は期待していいよ!」


「おっ、それは楽しみだな!」


 俺たちはそのテンションのまま、別荘へと戻っていく。


「後で……」


 ボソッと結奈が何か言った気がしたが、なんと言ったのか聞き取ることができなかった。



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