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第百三十七話 神様からのお告げ


 俺たちの目の前に現れたのは、紛れもなくクソ女神だった。


 空間へと穴をあけてやってきたのだが、ただ普段と違うとすれば、空間をあけるときにいつも以上にその輪が光を放っていることだ。


 そして、女神自身からも神々しい光が放たれていた。


「ごきげんよう、我が愛しき使徒たち……」


「……誰だこいつ?」


「女神様、だと思うんだけど……」


 いつもであれば、俺はすかさずクソ女神を殺しにかかっている。だが今回は、そのクソ女神の様子が少し変であった。


 下卑た笑みを浮かべず、卑猥な発言をせず、デリカシーに欠ける行動をしていない。少し誇張してしまったが、普段の女神らしからぬ様子がうかがえないのだ。


 普段我が愛しき使徒たちとか言わないだろ。ごきげんようすら言わんだろこいつ。


「おいお前たち、何故跪かない。女神様の御前であるぞ!」


 そんな女神の姿を見て戸惑っていると、その後ろから光輪を頭上に浮かばせている女性が現れた。


 いわゆる天使という存在だろうと判断した。


「天使っていたんだな」


「神様もいるんだし、不思議なことじゃないよね」


「それもそうか」


 初めて目にする存在だったが、今まで様々な魔物を見てきたためか妙に納得してしまった。


 しかしその反応がいけなかった。


「おい、私の話を聞け!」


 俺たちに無視されたことが気にくわなかったようで、怒り心頭といった様子で俺たちの目の前へとやってくる。


「いいか、お前たちは女神様のお力によって存在できているのだ。それを感謝せず不遜な態度とは……恥を知れ!」


 何言ってんだこいつと、俺たちは首をかしげる。


 相手は全く嘘など言っているようではないため、俺はクソ女神を睨む。


「おいクソ女神、こいつにいったいどう説明したんだ?」


「ひどいね、いろいろと……」


「ありのままを説明しました」


 ほほ笑むだけでいるクソ女神だが、少し冷や汗を流しているのを俺は見逃さなかったぞ。絶対嘘を交えて教えたろ。いや、嘘だけを教えたな。


 間違っていることを訂正するが、まず俺たちはこのクソ女神の力で存在しているのではない。こいつのせいでこの世界へと送られたのだ。


 しかも男性同士が性交している様子を盗み見ていて、その時『神の槍』という武器を落としてしまったのだ。それが俺たちに当たってしまって死んだのだ。


 全部クソ女神のせいだろ。それをどうやって感謝しろと。寧ろ罪を償って死んでほしいくらいだ。


 ともかく、正しいことを教えなければと俺は天使に向き直る。


「あー、あなた少し思い違いをしていますよ?」


「く、クソ女神だなんて……もう許すことなど出来ん! お前たちの魂ごと消し飛ばしてやる!」


「翔夜のせいだからね?」


「いや俺まったく悪くないじゃん……」


 説明しようとするも、俺たちの話を聞こうとせず声も届いていなかった。それどころか、光を凝縮したような光剣を出現させた。


 直情的な者へ説明するほど面倒なものはないだろう。


 さてどうしてものかと悩むが、思わぬところから声がかかる。


「待ちなさい」


「め、女神様?」

のだg

 なんとクソ女神が止めに入った。


「彼らに用があるのは私です。矛を収めなさい」


「しかし……!」


「収めなさい」


「……わかりました」


 クソ女神が言ったことは従うようで、渋々といった様子ではあったが光剣を収めてくれた。


「私は寛大です。使徒たちの発言を許しましょう」


「流石女神様、懐が大きいです!」


「な、なんか話が落ち着いてきたね……」


「なんなんだ、この茶番は……」


 俺たちはまるで蚊帳の外と言わんばかりに二人の神と天使の世界が形成されていた。


 呆れて俺たちは二人がこちらへと戻ってくるまで待つこととした。


 あと、何が寛大だよ。お前いつも言い訳したり怒ったりしてるだろ。器小さいだろ。



「私は一人で大丈夫です。あなたはあなたにしかできないことをしなさい」


「……はい! この命に代えましても!」


 抽象的な命令をされた天使は、これ以上ないほど目を輝かせていた。


 それほどまでに女神から言われることは嬉しいことなのだろうか。俺はそんなこと思わないけど。


「では女神様、失礼いたします!」


 そう言って天使は先程クソ女神と共に来た光の輪より消えていった。


 まるで嵐のような人物だった。漸くいなくなってくれたことに嬉しく思っているのは、俺たちよりも寧ろクソ女神の方だった。


「は~~~~疲れました!」


 そう発言すると、空間にあけた穴はなくなり、先程からクソ女神から放たれていた光も消える。そして倦怠感を露にした。


「なんでそんな光とか出して神様らしくしてたんだ?」


 クソ女神が来てからの疑問を俺はぶつけた。


 疲れるのならば出さなければよかったのではないかと。俺たち二人は疑問だった。


「あの子たちの前だと神様らしく振舞わないといけないんですよ。これでも女神ですから」


「僕たちの前ではいいんですか?」


「一緒に仕事するわけじゃありませんし、それに私の性癖を知られてしまっているので別に構いません」


「そうですか……」


 なんともまぁ身勝手な理由だった。


 威厳を保つことが大切なのはわかる。一緒に仕事をするわけじゃないし、性癖がバレてしまっていることも、まぁ理解できる。


 しかし怜は少々納得できないようで、呆れ顔でクソ女神を見ていた。


 ちなみに俺はゴミを見るような目で見ている。


「まぁ、クソ女神がいつも通りで安心した」


「あ、心配とかしてくれたんですか?」


 実は俺は、クソ女神のことを少し心配していたのだ。改心して清い心を持ってしまっていたのではないかと。


 だがそんなことはなかったと知って俺は安心している。


「これで心置きなくぶっ殺せるぜ!」


「あそういう理由!?」


「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 俺は『疑似・神の槍』という魔法を使い全力で襲い掛かる。


 待ったはなしだ。積年の恨み、晴らさでおくべきか!


「もうこの茶番終わりにしません?」


「俺の殺意を茶番扱いするんじゃねぇよ!」


 しかし全く効いておらず、俺の疑似・神の槍は結界によって遮られていた。


 極小の結界を槍の切っ先に形成し、俺の攻撃を防いでいたのだ。


 しかもその結界に触れた途端、俺の魔法は形を失って霧散した。


「だって神である私のことを殺すなんて、夢のまた夢じゃないですか~」


「うぉぉぉいつも以上に殺意が……!」


「ちょっと落ち着いて」


 いったいどうやってこいつを殺してやろうかと悩む。


 だが怜は淡々とクソ女神に話しかける。


「女神様、どうして僕たちの前に現れたんですか?」


「あ、そうでした! 危うく忘れるところでした!」


 先程の人を小馬鹿にしたような態度を改め、真面目な表情になり語り始める。


「翔夜さんはご存じかもしれませんが、あなたが空中要塞で出会った男性は、私が才能を与えた相手なんですよ」


「いや初めて知ったな」


 聞いたことがなかったぞ。


「その男性なのですが、近々あなた方へちょっかいをかけてくるらしいんです」


「ちょっかいとは?」


「そこまでは何とも……」


 俺の発言などなかったように話は進むが、それは置いておいて。


 話に出てきたその男はなんと無謀にも俺たちに何かしら仕掛けてくるようだった。いや、俺たちのことをわかっている様子だったから、かなり迷惑を被るものなのだろう。


 注意しなければならないな。


「神なんだし、お前がどうにかしろよ」


「私が世界へと干渉してはいけないんですよ~。これが各所にバレたら色々と面倒なんです」


「めんどくせぇな」


 事前にどうにかしてほしかったが、クソ女神にもできないことはあるようだ。


 俺たちを殺したことも、バレないように使徒にしたんじゃないだろうか。


「人の命を奪ったやつのセリフだとは思えんな」


「それは謝ったじゃないですか!」


「謝って済む問題じゃないわ!」


 人をふざけた理由で殺しておいて謝罪で許されるとは頭お花畑状態だった。


「この件については、結奈さんにも伝えておいてください」


「わかりました」


 結奈がここにいてくれれば、協力して殺すことができたかもしれないのに。残念極まりない。



「でも、どうして今僕たちに教えてくれたんですか?」


 それは俺も疑問だった。


 どうして今伝えるのかと、アイツと出会った直後でもよかったのではないかと思ったのだ。


「それはですね……」


 クソ女神は俺へと向き直り、その思いを告げる。




「私も翔夜さんの告白を見たいためです! 邪魔されたら嫌じゃないですか!」




「おう今すぐにぶっ殺してやる!」


 俺は拳を握り締めて、全力でクソ女神へと殴りかかる。当たれば多少はダメージを与えられるだろう。


 しかしそれは叶うことはなかった。


「ではくれぐれも気を付けてくださいね~」


「あ、この、くそっ、絶対に見るんじゃねぇぞ!」


 俺の叫び声のような訴えも空しく、クソ女神は笑顔で空間に穴をあけて即座にその中へと逃げていった。



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