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第百三十五話 内緒事


主人公が不在のため普段の一人称視点ではなく、三人称視点で書いています。よろしくお願いします。



 二人がいなくなった後、残った五人は今まであった課題を片付け、いい笑顔を浮かべて話し合意を始めた。


「やっといなくなったね」


「僕の手腕に感謝してよね」


 ここにいる全員が、二人がいなくなることは大前提という反応を示していた。


 それもそのはず。二人がいては話すことができない内容であるためだ。


「それにしても、翔夜が告白か!」


「好きだったもんね、お互いが、お互いのことを」


「そうですね、傍から見ても誰でも気が付きそうなものですしね」


 怜は事前に、翔夜が告白するということをここにいる五人へと話していた。


 翔夜には口止めされていたが、それでも邪魔が入ってしまいかねないだろうと考え、うまくいくよう働きかけていたのだ。


「まぁそんなはっきりしない二人だったけど、翔夜が今回告白することとなったのだよ」


 結奈はあたかも事前に知っていたような口ぶりで話す。


「僕が聞いた話を盗み聞きして———」


「人聞きの悪いことを。僕は『聞こえてしまった』んだから、仕方ないでしょ」


「よく言うよ……」


 怜と翔夜が話していた内容を、神の使徒の研ぎ澄まされた聴覚によって盗み聞き、もとい聞こえてしまったため、今回の話し合いを思いついたのだ。


 元々こちらへと意識を向けていたくせに。怜はその言葉を飲み込み話を進める。


「それで、翔夜から告白することになったわけだけど、僕たちも出来る限り協力しようと思うんだ」


「ホントはしたくないけどね」


「そんなことは言わずに、二人の幸せを祝いましょう!」


 言い出した本人である結奈は乗り気ではないような発言をしてはいるものの、傍から見れば楽しそうにしていた。


 それをわかって、エリーは嬉しそうに話を続ける。


「具体的には何をするのでしょうか?」


「祝うといっても、何かするのだろう?」


「そうだね、だからこうして話す場を設けたわけだし」


 いったい自分たちは何をするのか、三人はそれについて一切聞かされていない。


 そのため、発案者である結奈が説明する。


「まず翔夜の邪魔をします」


「しないよ?」


「違う違う、吊り橋効果を利用するんだよ」


「……なるほど?」


 邪魔をすると言い出した結奈を制止する怜。しかし結奈が言いたかったことは、吊り橋効果を利用するというもの。


 不安や恐怖が恋愛感情に転じる例のあれである。


「わざと危険な目に合って、そこからいい感じのムード作って、なんやかんやあって成功するでしょ」


「なんやかんやって……」


 大雑把ではあるものの、隣で聞いていた怜も何となくは把握した。他の三人も言わずもがな。


 だが今度は、危険なこととはいったい何かという疑問が浮上する。


「危険なこととはいったいなんだ?」


「それをこれから決めます」


「そうか、それは楽しみだな!」


 危険なことと言っているにもかかわらず、とてもいいい笑顔で答えた。


 もちろん、本当に危険な目に合ってもらうのではなく、危険な状態を演出することをしっかりとこの場にいる全員理解している。


 だからそこの笑顔である。


「俺は学んだぞ、手をつないだり抱き着いたりするような、いい雰囲気作りだな!」


「なんでそういうことを知っているんだろう……」


「勉強熱心でよろしい」


「いいのでしょうか……」


 土岐兄妹は元々、研究施設にいたため一般常識などの知識が不足している。そのため知識が偏らないよう日々勉強に勤しんでいる。


 だが、今しがたの発言は怜とエリーには少々不安に感じられた。


「それは、どんなことをするの?」


 奈那がそう問いかける。


「夏だし、海へ行って魔物が出現するのはどうだろうか?」


「魔物かぁ、ちょっとインパクトが弱いよね~」


「魔物が出現して、インパクトが弱いというのはおかしい気がします……」


「仕方がないよ、諦めよう……」


 普通の、一般的な学生としての意見として、魔物と遭遇というのは『死』と遭遇しているものと同義である。


 だが確かに魔物では、翔夜にとってはインパクトが足りていないというのは事実である。


「じゃあ、無難に肝試しなどはどうでしょう?」


「肝試しかぁ……。沙耶はともかく、翔夜は驚くかなぁ」


「魔物を相手しているから、幽霊も相手できないわけじゃないしね」


「翔夜なら消し飛ばしそうだな!」


 魔物ではなく幽霊であれば、或いはと考えた。


 しかしこれでも、翔夜はどうにかして消し飛ばす未来が見えてしまう。


「一応、やるだけやってみようか」


「近くにいい雰囲気の場所ある?」


「あるよ」


「なら、そこでやろうか」


 取り敢えずということで、沙耶が怯える可能性に賭け、肝試しはやることは決定した。


「怜の別荘の近くに何かないのかい?」


「ないこともないけど……」


「なに、歯切れ悪いけど」


 結奈が訪ねたことに対し、怜は答えにくそうにしていた。


「まぁ、応相談って感じなところなんだよね……」


「だから、それは———」


「何話してんだ?」


 そこへ翔夜と沙耶が帰ってきた。


「チッ、思ったより早く帰ってきた……」


「悪いかこの野郎」


 話し合っている最中に帰ってくるとは考えていなかった。


 恐らく途中で転移魔法を使い帰ってきたのだろうと察し、うんざりした様子で結奈は答える。


「もう少しイチャイチャしててほしかったなぁって」


「そ、そんなことしてねぇし!」


「そ、そうだよ!」


 慌てふためき、自分たちはそんなつもりではなかったと否定する。


 だが勿論、そのつもりで二人で買い物へと向かったことは他の五人は理解している。


「なんでこれでバレてないって思っているんだろう……」


「実際、お互いにバレてないけどね……」


 神の使徒二人にとって、否、五人にとって甚だ疑問であった。



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