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第百二十八話 墜落


 空での戦いを神の使徒二人へと任せ向かうが、要塞内で途中魔物が襲ってきた。


 だが、たかがしれている。首を切り落として、途中千里眼も多用して未桜の下へと馳せ参じる。


 転移魔法で向かうという手段もあったが、何せ常に移動をしている空飛ぶ要塞である。


 また未桜が戦っている可能性もあり、それに巻き込まれたり邪魔をしてしまう可能性もあったため、俺は普通に飛んで向かっている


「壁とか破壊してもいいよな」


 それでも最短距離で向かいたいため、壁という壁を破壊しながら突き進む。


 そしてどれほど壁と魔物を破壊したか、ついに開けた場所へと出た。


「おっ、おぉ……」


 しかしそこは、魔物たちの死体で溢れかえっていた。


「細切れの魔物の死体がこんなにあるってことは、未桜がやったんだろうなぁ」


 阿鼻叫喚という言葉が最適なのかと思ってしまうほど、凄まじい魔物の死体の山が連なっていた。


「それで、未桜は……っと、見つけた」


 最初こそ死体の山を見て引きはしたものの、しかし魔物であり人間ではないため直ぐになれた。


 千里眼を発動させ、俺は未桜を見つけて死体の踏みつぶしながら向かう。


「お待たせ、未桜」


「あるじ、ひさしぶり」


「久しぶりではねぇぞ?」


 いつも通りに、未桜は気の張っていないのんびりとした声で答える。


 ゴスロリを着た少女は、肌にもその服にも傷は見受けられないものの、もしかしたら傷を負っている可能性もあるため尋ねる。


「未桜は怪我とかしてないか?」


「うん、ぶじ。つよいにんげんはけした」


「そっか無事か……えっ、消した?」


 そういって手のひらを見せてきた。傷一つなくとてもきれいな、少女らしい小さな手がそこにはあった。


 そして人間を消したというとても物騒極まりない発言を聞いたが、それはあの注射針を打った者だと判断して、あまり気にしないことにした。


「ま、まぁ未桜が無事よかった。鈴と銀狐も無事だな」


「だいじょうぶ」


 三人の無事を確認し、胸をなでおろす。


 そこに未桜は頭を突き出す。


「ん? あぁ、そうだな」


 なぜ頭を突き出したのかと疑問に思ったが、直ぐにその意図に気が付く。


「よく頑張ったな、えらいえらい」


「ふふん」


 ただ、褒めてほしくて頭を差し出したのだ。


 そのため、俺は誇らしい気持ちで未桜の頭をなでる。


 俺が未桜に頼んでしまったのだから、後でお願いとか聞いてあげよう。


「あるじはだいじょうぶだった?」


「おう、もちろんだとも!」


 握りこぶしを作り、俺は自身が無事なことを証明する。


 実際のところ、結果的に無事であっただけで、もう一度同じことを行うのは難しいだろう。というかしたくない。


「まだ発射されているけど、下は俺の友達に任せてきたから大丈夫」


「そっか」


 地響きが未だに響いているが、それは下の二人に任せてあるため安心できる。


「あるじー」


「なんだ?」


「あのおとこのいってたこと、ぜんぶうそだった」


「全部?」


 あの男とは、恐らく先程話していた男のことだろう。


「りんがしぬとか」


「ほー、そうかそうか」


 そうなのではないかと、ここへ来る途中にも思ったことだ。


 発射に際してインターバルがあるといっていたにもかかわらず、それがなかったのだ。


 鈴に関しても嘘だと、そう考えることができる。事実未桜がそうだと言っているのだからそうなのだろう。


「だから、せんのうをとけば、かえれる」


「そうだな」


 俺は未桜の近くにいる鈴へと近づき、どうやって魔法を解除するか考える。


「魔法を解除する魔法は……できるな」


 あまたで考え、そして即座に魔法が思い浮かんだ。


 こういう時、神の使徒は便利だなと思う。


「『ディスペル』」


 思い浮かんだその魔法を発動し、鈴にかけられている洗脳の魔法を解除する。


「鈴、俺がわかるか?」


「……主様、えっと、これはどういうことでしょうか?」


「もどったー」


 確認のため話しかけると、俺を見た後に周りの惨状へと目を向けた。


 何処もおかしな様子は見受けられなく、元の鈴へと戻った。


「あー、よかった安心した!」


「あの、主様?」


「話はあとでな。とりあえずはここから脱出しないと」


 俺も安心すると同時に、説明はあとですることとした。


「神長原さんも見つけないとなぁ」


「呼ばれた気がしたぁ」


「うぉ! ビックリしましたよ!」


 唐突に、俺の後ろから声をかけられ驚き飛びのいてしまった。


 そこには、金色のマントを羽織った神長原さんがいた。


「制御室はぁ、見つけたよぉ」


「そうですか。では、墜落させることは……」


「まだだよぉ」


 墜落させるべく制御室へと向かったはずだったが、どうして何もしていないのだろか。


「君たちをぉ、逃がしてからだねぇ」


「いや、自分は大丈夫ですよ?」


「大人にはぁ、いろいろ事情ってものがぁ、あるんだよぉ?」


「わ、わかりました……」


 大人の事情というものだろう。


 俺は言うことを聞き、ここから使い魔たちと脱出しようとする。


『情報は一つも与えないよ~?』


「なんだ?」


 そこに館内放送だろうか、知らぬ男の声が聞こえてきた。


『君は、君たちは、人の命の価値はどの程度だと思う?』


「声は違うが、あいつか」


 話し方があの男に似ているため、そうなのだろうと考える。


『僕にとっては、この要塞の情報より軽いと考えているんだ』


「なにをぉ、言っているんだろうねぇ?」


『ここを、墜落させるよー!』


 その直後、今まで怒っていた地響きとは比べ物にならないほどの爆発が引き起こされた。


「なんだ!?」


「うわー」


 地面が傾き、立っていられないほどだった。


 立っていた地面が割れ、とてもではないが長居することはできないだろう。


「ちょ、まずはここを出よう!」


 転移魔法で全員を要塞から脱出させる。


「おちてくねー」


 そして出て直ぐに要塞が墜落していく様を眺めていると、神長原さんが上空を見て冷や汗を流していた。


「あれはぁ、ちょっとヤバいかなぁ」


 なんとそこには、要塞とは比べ物にならないほど巨大な隕石が降ってきていた。



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