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第百二十六話 本当の実力


今回は主人公がいないので、三人称視点で書いています。



 翔夜が転移魔法で『インドラの矢』という、核をも凌ぐほどの破壊力を有するアレを防ぎに向かった。


 そして未桜は鈴と件の銀狐を守るため残った。一人と一匹は全く微動だにせず、只々そこにいるだけだった。


 その二人乃至二匹を守ることが未桜の勤め。


 だがそれをお願いした当の本人、絶対的な力を持つ翔夜がいなくなってしまったことで、敵は油断するかと未桜は思っていた。


 その隙を伺いつつ主の下へと向かうことができればと考えていた。


 しかしそんなことはなく、男は常に不気味な笑みを浮かべ、未桜の一挙手一投足に目を向けていた。


「さて、彼がいなくなったことだし、もう僕はこの身体を捨てるね~」


 まるで自身のおもちゃがなくなったかのように話す彼は、だが最後に言い残したとばかりに未桜へと告げる。


「あーあと、そこの魔物が爆発するっていうのは嘘だから、君は仲間を連れて逃げてもいいよ?」


 未桜を知性のない魔物と同列視し、主に任されたことを放棄しても構わないといった。


 事実何の被害もなく主へ助力することができるのであれば、それが適切であろう。未桜も二人を連れて逃げることが望ましいことは理解している。


「にげない」


 だがそのようなこと、未桜が許さなかった。


 主に任されたのだから、ここで自身が逃げ出してしまうことは未桜の矜持が許さなかったのだ。


「そっかぁ、残念。魔物なのに逃げ出さないんだ~」


 さして残念そうに思っておらず、ただ未桜の感情を逆なでしているようだった。


「さてさて、君だけで本当に大丈夫かな~? あの頭の悪い主に助けを求めなくても~」


「うるさい、じゃま」


 流石の未桜も、ここまで侮辱され貶されるような発言を無視できるほど自制心があるわけではない。


 ただうるさかったということもあるが、自身の主を嘲る発言をしたことは未桜にとっても許されることではなかった。


 それらの理由により、未桜は風魔法で男の首を刎ねる。


「精々足掻きな……」


 胴体から離れた頭部は宙を舞い、途中で何かをつぶやくも未桜の耳には届かず地面へと転がる。


 その直後、轟轟たる爆音が響き渡り、経っていられないほどの地響きが発生した。


「……はっしゃされたかな?」


 先程と同じようなものであるため、恐らくは発射されたのだろうと未桜は思う。


 主が心配かと言われれば、未桜は否と答えるだろう。


 未桜は翔夜に対し、全幅の信頼を寄せている。そのため、何ら危惧することはなかった。


「りん?」


 今は自分のすることをするだけと、その守る対象である鈴へと話しかける。


 だが声をかけるも反応はない。


「えーっと、あなたは?」


 鈴は精神支配されていると考え、では銀色の狐はどうかと思い話しかける


 だがこちらも反応は返ってこなかった。ただ寝ているように見えるが、それが精神支配や洗脳の類のものかわからない。


「んー、まもればいいよね」


 二人が動かないのであれば、ここから移動する必要はない。


 自分の任されたことを再確認し、そして迫りくる気配にやる気を出していた。


「あるじからまかされたから、がんばる」


 そう発言すると同時に、辺りの檻からも魔物があふれ出てきた。


「んっ」


 瞬間、未桜が視界にとらえた魔物は、等しく細切れになっていく。


 体を動かさずとも、未桜は風の刃を幾重も発生させて飛ばしているのだ。


 並の魔物では、その一撃をもらっただけでも防ぐことなど叶わないだろう。


 それでも次から次へと魔物はやってきており、然しもの未桜でも切りがなかった。


「そこからー?」


 辺りにある檻の魔物はもうすでに片づけてあるが、それ以外にも天井や床下からもぶち破って未桜へと襲来する。


 それでもその全ての魔物を切り裂かんばかりに風魔法を行使しているため、未だ未桜へとたどり着く魔物はいなかった。


「めんどくさいなー」


 倒すことと比例して、魔物の死体は詰みあがっていく。それでも魔物の数は一向に減らない。


 上下左右、その天井や床、壁までも破壊してやってくる魔物に辟易し、多少本気を出すことにした。


「よっと」


 自身の腕を竜化させ、そして先程とは比べ物にならないほどの威力を発揮する。


 獣型、昆虫型、幻獣型など多種多様の魔物が未桜へと襲い掛かってくるものの、その竜化した手から放たれる魔法は、先程より威力、範囲ともに倍増されていたため、詰みあがっていた死体ごと吹き飛ばし粉微塵にした。


「よゆー」


 以前は足止め、今回は防御兼殲滅だ。多少は本気にもなろう。


 本来であれば全身竜になってもよかった。だがそれでは、この要塞ごと破壊してしまうことになる。


 そのため腕だけを竜へと変化させたのだ。


「けっこういなくなったねー」


 未だに襲い掛かってくる魔物はいるものの、その数は先程より確実に減っていた。


 そのためこの戦いはそう長くは続かないだろうと思い、未桜は直ぐに主の下へと行けると考え、早々に終わらそうとした。


「ん? あれは、まえにみたことあるねー」 


 そんなことを考えていた矢先、今までの魔物とは桁違いのヤツが現れた。


 魔力量が桁外れな人間のような何か。


 ヒト型を保っているものの、それを人間というには少々体が歪だった。


 ある者は手足が異様に長く、またある者は半身だけが筋骨隆々という体躯をしていた。


「じゃま」


 それでも未桜はそこらの魔物と対処は変わらず、只々切り伏せるだけだ。


 その者たちも一様に首を切られ、その命が唐突に終わるように思えた。


「あれ?」


 だが切られた首は、その直後から再生し元通りになってしまった。


 そのため今度は切るだけではなく、切り刻むこととした。


 それでも、即再生するため中々決定打にかける状態となった。


「りんは、やらせないよー」


 彼らは攻撃対象である鈴へと攻撃を仕掛け、だがそれを未桜が許すはずもなく。


「じゃまー」


 竜化したその拳で思い切り殴りつける。


 吹き飛ばしはしたものの、それで倒せているなんてことはなかった。


 直ぐに起き上がり、攻撃を仕掛けてくる。


「まだくるのー?」


 その者たちに加え、未だ魔物も続々とやってくる。


 未桜が負けることはないが、勝つことが困難になりつつあった。








 ===============








 ところ変わり、ここはこの要塞の制御室である。


「……う~ん、なにもわからないなぁ」


 そこに一人、どうやって制御するのかわからず困り果てている者がいた。


「適当にぃ、弄ればいいかなぁ?」


 墜落させるといって翔夜たちと別行動をしていた、金色のマントを羽織った神長原千尋という引きこもり兼シスト隊員である。


「ボタンがぁ、ありすぎるよぉ」


 彼女は現在墜落させるべく制御室へと来てみたはいいものの、その制御方法がわからず右往左往していた。


「おぉ、これは見るからなものだぁ!」


 そんな中、『禁』という文字の書かれた赤いボタンを発見する。


「でもぉ、爆発とかしたら嫌だなぁ」


 如何にもなボタンを見つけるも、だがそれで要塞が爆破なんて事態になってしまっては自分自身を危険にさらしてしまうこととなる。


 それらを鑑みて、そのボタンを押すことを止める。



「不意を突いてもぉ、無駄だよぉ?」


 唐突に背後から神長原千尋へと襲い掛かろうと、男が複数名鈍器のようなものをもって振りかぶっていた。


 しかしその存在に気が付いていた彼女は、その者たちの全魔力を吸い取り、気を失わせることに成功する。


 魔力というものは、急激に失うようなことがあれば失神してしまうのだ。まるで血液や酸素のように。


「私はぁ、魔力を吸うことができるぅ、特異体質なんだぁ」


 意識のない者たちへと語るように話すが、その視線はこの制御室のモニターへと向いていた。


「吸った魔力を使ってぇ、爆発させたらどうだろぉ?」


 以前戦った薬物を用いた者たちより魔力量が少なかったため、それほど大きな破壊を生むことはないだろうと考え発言した。


「でもそれだとぉ、翔夜君たちが危険かなぁ」


 だがそれで、翔夜たちに危険が及んでしまう可能性も否めなかった。


 翔夜たちというより、未桜たち使い魔であるが。


「それにぃ、ここの資料とかもほしいしぃ」


 どうやって駆動し空を飛ぶ要塞なんてものを作り上げたのか。


 その他諸々の魔法技術なり科学技術の資料がどこかにあるはずである。


 それらを回収できればいいなと彼女は考えていた。


「監視カメラってぇ、どこで変えるんだろぉ?」


 モニターに映し出されているものだけなはずがないと、別のものを映し出すことができないかとその操作方法を模索する。


「説明書とかぁ、置いてないかなぁ?」


 彼女がここのセキュリティを突破することは別段難しいことではなかった。


 だが、制御室に人が一人もいないとは神長原も思っていなかった。


「人がいればぁ、脅して聞いたんだけどなぁ」


 資料室や翔夜たちが今どこにいるのかわかれば、ある程度は配慮して破壊活動をすることができるのだ。


 そのため、懸命にその監視カメラの映像を切り替える方法を探す。



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