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第百二十二話 探検


 鈴の友人を助けに行くということで、俺たちは今竜となった未桜の背中に乗り、空を飛んでいた。


 そして見えてきたのは、とても大きな積乱雲であった。


「竜の巣だ……」


「ちがうよー。こんなのじゃないよー」


「ごめん未桜、つい言いたくなってな……」


 大きな積乱雲を見つけたときは、ついそのようなことを言ってしまうんだ。


 男子ならば仕方のないことだろう。


 実際の竜の巣はどんな感じなのだろうか。



「この積乱雲の中に奴らの要塞があります」


「防御魔法を張ろうか?」


「わたしがはるからだいじょうだよー」


 積乱雲は雷雲と言われているため、内部に入るためにはその中を突破しなければいけないのだ。


 そのため俺が結界でも張ろうかと思ったが、未桜が張ってくれるそうなので今回は任せることにした。



「主様、この度は使い魔の私の厚かましいお願いを聞いていただき誠にありがとうございます」


「気にすんなって、どうせお願いを聞くって言っていたし」


 雷雲の中を抜ける途中、その蚊の鳴くような声で発した鈴は申し訳なさそうにしていた。


 だが使い魔の願いを叶えることは、主としては当たり前だろう。



 そうこうしているうちに、雷雲が晴れ光が照らされる。


「ここは私が認識阻害の魔法をかけますね」


「ありがとう、鈴」


 竜となった未桜が急に現れた場合、侵入はおろか攻撃を受けてしまう。


 そうならないために、鈴は俺たちに認識阻害の魔法をかけてくれた。


「どこにおりる?」


「あのあたりでいいんじゃないか?」


 俺は周りに何もない場所を指さし、そこに降りるよう未桜に提案する。


 敵にばれることなくこの要塞へとたどり着くことができ、俺はホッと胸をなでおろした。


 未桜は元の銀髪ゴスロリの姿に戻ると、俺に引っ付き甘えてくる。


 可愛いかな、俺の使い魔。


「さて、これからどうするかな」


 そんな未桜はさておき、これからどうするか思考する。


 バレて戦闘、なんてなったら鈴の捕らわれの友人がどうなるかわかったものじゃない。


 侵入するとは言っても、このまま行ってしまえば流石にバレてしまいかねない。


「このマントをお使いください」


「あ、なるほど!」


 すっかり忘れていたが、そういえば鈴にはこれがあったことを思い出した。


「これはぁ?」


 鈴より受け取った金色のマントを手に取り、訝し気に尋ねてくる。


「鈴お手製の、隠密マントです」


「隠密とはぁ、かけ離れていると思うんだけどぉ」


 本当に隠密することができるのかという、これ以上目立つようなものはないというような、輝いて見えるそのマントを羽織り半信半疑な様子だった。


 そのため、俺は自身の知っていることを神長原さんへと説明する。


「ふっふっふ、なんとこのマント、魔力感知に引っかからず、熱源感知にも引っ掛かからないんですよ!」


「……それはぁ、素直にすごいねぇ」


「しかも、魔法攻撃を半減させることができる代物なのです!」


「それはなんともぉ……」


 まるで自分のことのように神長原さんへ説明し、漸く納得してくれたようだった。


 だが俺は念を押して伝えなければいけないことがある。


「一応言っておきますが、このことは内密にお願いします」


「わかってるよぉ、流石にこれが知られたらぁ、ヤバいもんねぇ」


 このようなものが、おいそれと世の中に出てしまえば犯罪のオンパレードである。


 シスト隊員とはいえ、内密にしてもらわないといけない。




「そういえば、自然が豊かなところじゃないんだな」


「要塞ですからね」


 自然のしの字もなく、そこは外部からの攻撃に備えているのか、物々しく大砲やバリスタなどが構えており、とても俺の想像している『城』とは形容しがたかった。


 まさに要塞らしい要塞であった。


「私はぁ、制御室とかに行きたいなぁ」


「行ってどうするんですか?」


 同伴者として来てくれていた神長原さんは、俺たちとは別行動をするようだった。


 制御室の制圧は後々必要なことではあるが、先にしなければいけなことではないような気がする。


「そりゃあねぇ、墜落させようかとぉ」


「……いいんですか?」


「いいんじゃないのぉ?」


「…………俺たちは何も聞きませんでした」


「それでぇ、いいよぉ」


 助け出せればそれでいいと思っていたが、まさか俺より過激なことをしようとしているとは思わなかった。


「それじゃあぁ、別行動でいいぃ?」


「同伴とはいったい……」


 俺が無茶をしないよう、危険なことに巻き込まれないよう、見張るという意味で同伴されていたのだ。


 これは、同伴ではないような気はするが、深く考えないようにしよう。


「あの、私の認識阻害の魔法を使わなければバレてしまうと思うのですが?」


「大丈夫だよぉ、私も使えるからぁ」


「そうでしたか。蛇足失礼しました」


 離れてしまえば、鈴の認識阻害の魔法が効力を発揮しなくなってしまう。


 だがそれは杞憂であった。神長原さんも同じ魔法を使うことだできるらしく、軽く手を振りながら要塞の内部へと侵入していった。


 さすがはシスト隊員だろうか。


「主様、私たちはどうしましょうか?」


「まぁ、俺たちは俺たちで探そう」


「じゆうなひとだねー」


 俺たちも後を追う形で、要塞の内部へと入っていく。


「ここにも自由な奴はいるがな」


「……あるじ?」


「未桜のことだよ」


「お二人とも、だと思います……」


 適当に話すことができるのもここまでなので、入ってからは無駄話をしないように気を付けよう。


 


「なんだか既視感があるな」


「以前本部があるというところに似ているからではないでしょうか?」


「あぁ、なるほど」


 内部に入ると、明かりに照らされた長く続く廊下があった。


 所々扉があり、またガラス張りになっているところもあった。


 実験が行われていることがわかり、人の気配がないことを確認して会話を始める。


「それで、その友人がどこにいるのかわかるか?」


「申し訳ありません。大まかにはわかるのですが、何処にいるのかといわれると……」


「そうか。なら適当に見つからないように歩くか」


 ここの地図などを持っているわけもないため、そう簡単にたどり着けないだろう。


 それでも、いずれはたどり着くけるだろうから問題はないだろう。


 何なら、壁を破壊していけばいいわけだしな。


「あるじー」


「なんだ?」


「かたぐるましてー」


「……必要か?」


「つかれたから」


「……そっか」


 おんぶでもいいのではないかと思ったが、ここまで運んでもらったということで、少しくらい我儘を聞いてもいいだろう。


 普段会えないから甘えたいのだろう。


「お?」


「どうしたのですか?」


 未桜を肩車して少し歩くと、ガラス張りの部屋の向こうに、粘土質でできたような人型のロボットが横たわっていた。


「なぁ、あれってなんだ?」


「ゴーレムかと思いますが……」


 まるでその役目を終えたかのように、安らかに眠っているような状態だった。


 そのため俺は、とある言葉を口にすることとした。


「我を助けよ、光よよみがえれ……」


 唐突につぶやくが、一向にゴーレムが動く気配はない。


「動かないか」


「感知されていませんから、動きませんよ」


「そうか」


 感知して動くタイプのゴーレムだったことに落胆し、だが動かなくてよかったと、自分の浅はかな行動に申し訳なくなってくる。


「まぁ動いたら面倒だし、いいか」


「ろぼっとはおとこのろまん?」


「ロマンだな」


 俺はロボットが動いている姿を見たい。


 しかしだ、俺は実際に乗って操縦して戦いたいのだ。


 それが、男たちが抱いたロマンというものだろう。知らんけども。




「さて、と……」


「どうしたのあるじ?」


 ロボットの部屋を過ぎ去り、適当に扉をあけながら進んでいった。


 人に見つかることなく進んでいたが、十字路に出たことで俺はふと立ち止まり、辺りを見渡す。


「ん~、迷ったな」


 何処ぞやでも迷った記憶しかないが、何となくは鈴が場所がわかるため大丈夫だろう。


「元々わからないのだから、手当たり次第に探すか」


「おー」


「わかりました」


 時間はまだあるだろうから、焦ることなくしっかりと探していくことにした。



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