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第百八話 三度目の正直

皆様、新年あけましておめでとうございます。

さて、新年を迎えて早々に二日ほど投稿予定日を開けてしまいまして本当に申し訳ございません。

どうしても年の初めというものは忙しくいつも以上に時間が取れない私です。

このようなことがないように以後気を付けていく所存であります。

説得力の欠片もございませんが、心身を引き締めて参りたいと思いますので、何卒宜しくお願い致します。


 あれから俺たちはシスト隊員と合流し、そして俺と使い魔はそのまま自宅へと帰宅を命じられた。


 地盤沈下を起こした敵組織は壊滅状態。そのため、多くの人材を派遣して問題は収束させるそうだ。


 そしてそれを起こした張本人は厳重注意で自宅謹慎を命じられたそうな。


「翔夜、ちゃんと聞いてる?」


 悪魔と女神のことについて話そうと思っていたのだが、事後処理や事情聴取など様々なことが重なってしまい会えていない。


 悪魔の処遇だが、彼は現在シストの管理下に置かれ、立場で言えば土岐兄妹と同じ扱いになっている。


 しかしその見た目はどうしても悪魔然としているため、学園には通うことはできない。


 魔法もまともに使うことができていないというので、まずはそこから隊員たちでどうにかしていかなければいけない。


「はい、しっかりと聞いております……」


 そしてその悪魔を作り出した敵組織の連中といえば、その全員が逮捕されたそうだ。


 しかし内容が内容なだけに、市民の不安を煽ってしまうということから、このことは詳しくは世間一般には伏せられることとなった。


 俺たちも他言無用ということで、このことは校長の許可を得なければ例え神の使徒であっても話そうとは思っていない。


「ずっと無反応だったけど?」


 さて、現実逃避もこの辺りまででいいだろう。


「反省しているためです」


 俺は今、絶賛説教中なのである。


「なら、私がどうして怒っているか、わかるわよね?」


「はい、重々承知しております……」


 帰宅した翌日、俺は母さんにリビングへと呼び出された。


 休日ということもあり、俺はその疲れた体を休めるため昼頃まで寝ていた。


 しかしそんな中、怒気をはらんだ声色で俺はすぐさま駆け付け、そして今に至るのだ。


「私前にも言ったと思うんだけど、危険なことに首を突っ込まないよう約束しなかったかしら?」


「恐らくそのような約束をしたような気がしなくもないような気がします……」


 何も食べていないまま、ずっと俺は正座させられているのだ。


 ちょっと時間を改めてほしいと思ったのだが、流石にそんなことは言い出せず。


 もちろんここには母さん以外にも父さんや宮本さんもいるが、静観しているため俺のことをフォローしてくれるとは考えにくい。


 そして使い魔の二人も、俺と一緒に正座して母さんに叱られていた。


 いや、未桜は殆ど眠っているから母さんの話を聞いていないな。


「約束を破ることはいいことなのかしら?」


「いいえ、悪いことでございます……」


 俺は腹が鳴りそうになりながらも、必死で反省して許しを請うしかないだろう。


 それしか、この現状を切り抜けるすべはない。


「そうよね。なら、どうしてあなたは危険なこととわかっていて首を突っ込んだのかしら?」


「その、沙耶を誘拐した敵組織の本部があるということで……」


「でもそれは大人が解決することよね?」


「そう、ですね……」


 どんな理由を並べたところで、俺が先に母さんとの約束を破ってしまったことに変わりはない。


 息子が危険なことに首を突っ込むのを止めることが親の責務であると同時に、母さんは俺のことを心配してくれているのだろう。


 だからそこ、ここまで怒ってくれるのだろう。


「鈴ちゃんも未桜ちゃんも、どうして翔夜を止めてくれなかったの?」


「そ、それは……私は、主様をこと尊敬していますし、私自身が使い魔ですので、その意思を尊重したまでです」


「わたしはたのしそうだったからー」


 しかし、しかしだ。


 今のこの現状を招いてしまったのは、そのほとんどが俺の責任である。


「まぁ未桜ちゃんは論外として、鈴ちゃんは翔夜が危なくなりそうだったら止めてよね?」


「はい、申し訳ございません……」


 つまりだな、母さんといえど俺の鈴に少しでも悪くいうのは許しがたいのだ。


「そんな鈴を悪く言わないでくれよ。元はと言えば俺が無理やり———」


「翔夜、ちょっと黙っててね」


「あ、はい……」


 まぁもちろん、言い負かすことなんてできないんですがね。




「それで、校長先生の方からは何か弁明はありますか?」


 そして、リビングにて俺が説教をされるからいた雪先生に問いかける。


「いいえ、何もありません。翔夜君の転移魔法を利用して危険にさらしてしまったことに違いはありませんので、私に弁明する資格はありません」


 俺たちと同じく正座して、俺と一緒に母さんに説教されている。


「そうですよね。元はと言えばあなたが翔夜を連れださなければ起こらなかったことなのですから」


 先程よりも怒気を強めて、雪先生へと怒っていた。


 先程俺に怒っているというよりかは、どちらかというとそんな場所へと連れて行った雪先生へと怒っているようだった。


 そして雪先生もそれを理解しているようで、自身が悪いということを認めていた。


「それでも、翔夜がいてくれたおかげで、今ここに私がいることできています」


 それでも俺がいなければ危険な目に遭っていたことは必至であり、また悪魔とも仲良くなることができた。


「敵との戦いにて翔夜がいてくれなければ、私たちだけではどうにもならない相手でした」


 もちろん全部が全部俺のおかげなんてことは全く思っていない。


 最初は私欲で動いてはいたが、それでも俺は彼女たちの役に立つことができたため、結果的にとはいえ言って間違いではなかったと思っている。


「そのため、シスト隊員の隊長としては間違ったことをしてはいなかったと考えます」


 俯いていた顔を上げ、その真っすぐな瞳で母さんを見つめる。


 しかしそれでも自分の行ったことを正当化するなど言語道断。


 自分の息子を危険にさらしておいて何を言っているのだと。


 母さんならそのように思い、発言をするだろう。


「なっ……あなたは———」


「しかし、それでもあなたの大切な息子さんを危険晒してしまったことに変わりはありません。そのため、改めて心からの謝罪をさせていただきます」


 だが雪先生は自分の過ちを認め、深々とその頭を下げた。


 俺は驚いた。


 厚顔不遜で傍若無人と思っていた雪先生が、俺のことに対して頭をこれほどまで下げるとは思ってもみなかった。


 綺麗な土下座を行ったことで、母さんはその口を閉じざるを得なかった。


「校長、あんた……」


 それを目にした俺は、ポロっと思ったことを口にしてしまった。


「謝罪とかできたんだな……」


「後で覚えてろよ……!」


 反省中に余計なことは言うもんではないな。


 思ったことを口に出してしまうことは考えものである。



「なぁ、本人たちもこれほど反省しているんだし、許してもいいんじゃないか?」


 そんな俺たちの母さんへの反応に、見かねた父さんが介入してきた。


「あなたは黙ってて」


「あ、はい……」


「父さん……」


 しかし俺と同じく何も言い返すことができずに撃沈してしまった。


「……はぁ、まぁいいわ」


 それでもその発言があったためか、はたまた俺たちの思いが伝わったのか。


 この声色には怒気はなくなっていた。


「本当に、今回限りは許します」


「マジですか。ありがとうございます!」


 もう何度目だろうか。母さんより許しを得ることができた。


 俺はこれ以上ないほど頭を下げて感謝の意を表した。


 しかし……。


「だけど、翔夜はテストで沙耶ちゃん以上に点数がよかったらね」


「おっととんでもない無茶ぶりをされたぞ?」


 とても実現不可能と思われるような課題を出されてしまった。


「大丈夫、期待はしていないから教科一つだけでも超えていたらいいから」


「実の息子に期待していないとか言うかな?」


 幼馴染である沙耶がどれほど頭がいいのか、俺以上に母さんは知っているのだろう。


 だからたった一教科でも上回れば御の字ということである。


 だがしかし、常にトップ争いをしているような沙耶に、例え一教科であろうとも勝つということはとてもじゃあないが難しいことだろう。


 そして今は『俺が沙耶のことを好きである』という秘密を知ろうと躍起になっているため、確実に学年一位の座を狙っていることだろう。


 つまりだな、俺が沙耶に勝つということは不可能なのである。


「それじゃあ、来週頑張ってね。それで許すか決めるから」


「因みに、沙耶より全部悪かったら……」


「……うふっ」


「なんか怖いんだけど! 俺何されるの!?」


 一応、保険の意味もかねて俺は沙耶に全教科で勝てなかったらどうなるのか聞いてみた。


 しかしそれに対する返答はなく、たた笑顔を見せるだけであった。


 逆にその笑みが怖く、おしっこがちびりそうであった。


 そんな俺に気にせず、雪先生へと声をかける。


「校長先生には、テストまで翔夜をお願いしますね」


「もとよりそのつもりです、お任せください」


 どれほど正座させられていたのか、足を小鹿のように震えさせながら立ち上がり、先程とは違いとても気さくに答えて見せた。


 だがそれを見て俺は何か違和感を感じた。


「なんか、二人とも仲良くない?」


 二人に共通点があるわけではないし、年齢が近いというわけではないだろう。


 ではどうしてそこまで初対面の人とそんな仲良くしているのだろうか。


 そして俺を危険な目に遭わせた張本人に頼んだりするだろうか。


「そりゃあ、お前の母親は……」


 それに対して、校長が教えてくれた。


「アタシの師匠だもん」


 師弟関係って、どこにでもあるものなのだろうか。


「なんか、世間って狭いなぁ……」



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