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第百一話 思わぬ助け

すみません、予約投稿の日付を間違えていました。

一時に投稿できずに申し訳ありません。



 先生を観月先生や使い魔たちの元へと向かわせた。


 そのため俺は遠慮することなく暴れることができる。


「さて……。一応聞いておきたいんだが、今ここで投降するやつはいるか?」


 しかしだ、投降してくれる奴がいるのであれば戦う必要はない。


 寧ろ投降してほしいと思っているほどだ。


「というか、そもそも会話できるのか……?」


 三人に対して声をかけてみるものの、だがその誰もが口を閉ざしていた。


 答える気がないのか、それとも会話そのものを行うことができないのか。


「まぁいいや。そんなことよりも言っておかないといけないことがあったな」


 どんな理由があるにしろ、投降してこないのであれば倒すしかない。


 それはもとより決めていたことだ。


 それでも事前に言っておかなければいけないことがあった。


「俺はお前たちのことを殺さないといけなくなったわけだが、恨まないでくれよ?」


 睡眠魔法の効果が期待できない今、相手を行動不能にするには殺すしかない。


 もちろんそれ以外で倒せれば問題はないが、初めからそのような心構えで行くほうが得策だろう。


「ぅおっと」


 三人のうちの一人が手刀にて俺の首を狙ってきた。


 その動きは見えているので躱せるが、強者三人を相手取るというのは初めてであるため気を付けなければいけない。


「多分今まで会った中でで一番動きが速いな」


 結奈と怜は本気を見せていないから、俺の見た中で言えば最速である。


『あああああああああああ!!!』


「ぐっ!」


 一番に攻撃してきた奴が急に雄たけびを上げ、そして後ろにいた二人が俺に攻撃を仕掛けてきた。


「あぶねぇあぶねぇ」


 唐突に叫ばれたため少々体が硬直してしまったが、攻撃を食らうことなくその拳や蹴りをいなす。


「とりあえずは、いろいろと試していくか」


 一つ一つの攻撃は重く、そして速い。


 必ず俺の命を刈り取ろうとしていることを理解させられる攻撃だ。


 だがそれは、当たってしまえばの話である。


 それまでは、どうにかして敵を無力化できる方法を探していく。


「とりあえずは、何か魔法でもぶち込みますか」


 三人が近接戦にて俺に攻撃を仕掛け、そして俺はその攻撃をかわしたりいなしたりしている。


 時にはその元々の身体能力で殴り蹴り飛ばしたりする。


「えっと、岩石をできるだけ高温で熱して、どろどろに溶かす」


 近接戦を繰り広げているその頭上で、岩石を高温で溶かして液状化していく。


 そのせいで少し垂れてはきているものの、そんなことを気にせず敵は攻撃を続ける。


「さぁて、お手製の溶岩を食らいやがれ!」


 俺はその場を離脱して、タイミングよく落とす。


 普通の人間であれば即死してしまう代物を躊躇いなくあてようとする。


 相手が元は人間で荒れ化け物であるということを前提として戦っているため、これほどの攻撃でも問題はないだろう。


「まぁ躱すなり防ぐなり行動を起こすよな普通。でも視線は上にいってしまったな」


 三人が各々行動を起こそうと、まずは上を見た。


 そして俺の狙いは、攻撃を当てることではなくそちらへと意識を向かわせることだった。


「『フリーズ』」


 氷魔法にて、全員の首から下が薄い氷で覆われた。


「これで動けねぇだろ」


 そのままでは溶岩が当たってしまうため消滅魔法にて消し飛ばす。


「どうせ溶岩なんて効かないだろうと思っていたからな」


 動こうとしているものの、俺はかなり強めに魔法を発動したのだ。


 見た目に反してかなりの強度を誇っているため、ちょっとやそっとじゃあ破壊することは難しいだろう。


「動けない相手にやるのは卑怯とかいうなよ。『紫電・雷刀』!」


 紫を帯びた雷を生成し、そして形状が刀へと変化する。


 質量をもった雷を持ち、相手へと斬りかかった。


 相手の抵抗もなく肩から脇腹へと袈裟斬りにし、その氷もろとも体を二つに分けた。


「はぁ……。あんま犯罪者でも人殺しはしたくないもんだ……」


 本物の刀で切ったわけではないため、実際に切った感触などはわからない。


 それでも雷刀にて斬った感触は手に残っている。


「しかも今は冷静だから、結構思うところはあるんだよなぁ」


 今しがた斬った相手を一瞥して、しかし自分はまだやらなければいけないとが残っているため思考を切り替える。


「いやでも、楽にするって考えれば救済と捉えることはできるか?」


 行き過ぎた宗教観を考えつつ、雷刀を構えて二人目へと斬りかかろうとする。


「さてと、こいつを斬れば残りは———」


 二人目を斬ろうとしたその瞬間、俺の視界は唐突として回転した。


 否、実際は俺が回転したのだろう。


「……なんだぁ?」


 今俺は倉庫らしき場所から壁を突き破って隣の倉庫へと吹っ飛ばされたのだ。


 戦車など様々な兵器をなぎ倒しながらも、俺は無傷であった。


「頭を蹴られたのか?」


 体を起こして、自分が蹴られたことをようやく認識する。


 そして俺を蹴ったのは誰なのかと視線を俺の元居たところに向けた。


「はぁ!? なんで斬ったのに生きてんだよ!?」


 そこには、先程殺した敵が立っていた。


 恐らくは身体能力が向上したことによる純粋な再生力なのではないかと思われるが、それにしても斬った身体を元通りに戻す再生力というのは、もはや人知を超えているだろう。


「くそっ、せっかく殺したというのに……」


 油断していたのだろう。


 殺してしまえばもう動くことはないとフリーズを解いてしまっていた。


 それがこうして現状を引き起こしてしまった。


 そして攻撃を食らってしまったことでフリーズが弱まってしまい、残りの二人も脱出してしまった。


「ふりだしに戻ったな」


 もう同じ手は通用しないだろうし、それに再生するということは簡単には殺すことはできない。


「さて、どうしたものか」


 俺が考えている間にも、三人は俺へと距離を詰めてくる。


「とりあえずは、一旦これで押さえつけさせてもらう」


 考える時間が必要だと、俺は重力魔法で三人の動きを止める。


「動こうとしても無駄だ」


 全員地面へとたたきつけられて、そして動こうとしても指一つすらまともに動かすことはできていない。


 俺は手加減せずに重力魔法を発動したのだ。その超重力場で生きていることすらおかしい状態なのに、動くことなどかなうはずもない。


「消滅魔法なら被害は出ないし、それに対象がそう大きくないから安全だろう」


 相手の動きを封じた今、ある程度時間をかけて考えることができる。


「しかし人に対して使っていいものか……」


 消滅させてしまえば再生される恐れもない。


 しかし倫理的に使用してしまってもいいものかと。俺は解決策を前にしてしり込みしてしまう。




 そんな俺に声をかける人物が一人。


「あー、翔夜君やっぱりいたぁ」


 俺は知った声のした方へと見やり、驚きを露わにする。


「えっ、神長原さん?」


「なんかぁ、翔夜君の魔力があったからぁ、きたよぉ」


 俺の魔力を識別することができるのだろうかと疑問に思いはしたが、この際それはいったん置いておく。


 神長原さんがここにいるということは、ほかに誰がいるのかと思い見渡した。


 だが、誰もいない。


「あの、ほかの方は?」


「はぐれたぁ」


 ……ん?


「私を見失うなんてぇ、実力が足りてないよねぇ」


「……えっと、そうですね」


 いや絶対この人が身勝手な単独行動をしたのだろう。


 そう思いはしたが声に出さずに堪える。


「それでぇ、これはどういう状況なのぉ?」


 押さえつけられている三人を見て問いかける。


「青い液体を二本注射して、生き残った三人です」


「そうなんだぁ」


 あふれ出る魔力に真っ赤に染まった瞳。


 それを見て普通だとは思わないだろう。


 しかしその声に焦燥のようなものは感じられなかった。


「なんだか焦りがあまりないですね」


「まぁ相手が私の前だとどうしてもねぇ」


 その発言の意味するところは俺にはわからないが、恐らくはシスト隊員であるためかなりの実力がその余裕を生んでいるのだろう。


 あと俺が押さえつけてるということもあるのだろうか。



「結構苦戦してるぅ?」


「苦戦というか……」


 ただ相手を殺していいものかと悩んでいただなんて、正直答えたくはなかった。


 そのような覚悟もなしに乗り込んできたのかと、そう言われてしまいかねない。


 だが……。


「纐纈君の場合ぃ、相手を殺せるけどできるだけ殺したくないってことなんじゃないかなぁ?」


 言い当てられて何も答えられなかった。


 恥ずかしさと悔しさが胸中に渦巻く中、彼女は助け舟を出してくれた。


「私ならぁ、殺さずに無力化できるよぉ?」


「マジですか!?」


「マジだよぉ」


 頼ってしまう形になったが、しかし殺さずに済むのであればそれが最善であろう。


 私情ははさむべきではないため、気持ちを改めて切り替えて対峙する。


「でもぉ、ちょっと本気出さないといけないしぃ、それに相手の行動を抑えておかないといけないからぁ、そこはお願いねぇ」


「うっす!」


 相手は今のところ重力魔法で動けなくしてある。


 ならば俺のすることは、彼女を守るためにほかの敵を気にすることだろう。


「子どもがねぇ、殺人なんて事したらぁ、いけないんだよぉ?」


「えっと……すみません」


 覚悟がないということではなく、寧ろ殺人を行うことを怒られた。


 まさかそちらを言われるとは思っていなかったため、驚かざるを得なかった。


「まったくぅ、先生失格だよぉ?」


 ボソッとつぶやいたそれは、雪先生へと向けられた言葉なのだろう。



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