GUEST
――地震か?
彼が目の前の状況を考察し始めてすぐのことだった。突然、足元が大きく揺れだしたのだ。食器どうしがぶつかり合って発生する金属音が空間を満たす。思わずバランスを崩しかけたが、近くの壁に寄りかかって持ちこたえた。だが、揺れは一回ではなかった。
「――またかっ!?」
足元が再び、大きく揺れる。
――余震?
余震の可能性を疑っていると,再び揺れに見舞われた。
――余震ってこんな短時間で何回も来るもんだったっけ?
来ません。一般に、余震というのは地震の規模が大きければ大きいほど、次に余震が来るまでの間隔が早くなる。しかし、日本周辺における観測史上最大といわれる東北地方太平洋沖地震のマグニチュードは9.0だが、一回目の余震までの間隔は29分である。対して、今彼が感じている揺れはだいたい震度4~5くらいだろう。仮に、二度目以降の揺れ全てが余震だとしよう。やがて来る大津波で日本崩壊必至である。それよりも、先ほどから一定の周期で起こる揺れに最も近いのは――
「――余震っていうよりはまるで何かの足音みたいだな」
彼は外がどうなっているのか気になったため、バランスを崩さないように気をつけながら、突き当りまで行ってガラス張りの壁から外の様子を見た。
「――え?」
外を見て発した彼の言葉には驚きと戸惑いの感情が込められていた。彼の視界の先に立っていたのは白いワンピースを着た長い黒髪の女性である。ただ、その身長は28階建てのマンションを優に超えていた。




