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エピローグ☆エニグマからユリイカへ
宇宙船の乗組員が乗った脱出ポットが次々と船内に回収された。
誰の手も煩わさずに通常航行している宇宙船の中に活気が戻った。
「俺は気が気じゃないんだ」
やつれた顔でイーサンがレイに言った。
「このままエニグマたちを連れて地球に帰っていいのかって思う」
「それは・・・私にはどうしようもないわ」
レイも困惑して言った。
それよりも今は優先しないといけないことがあった。
アランのことだ。
一人でいる時に何人もの声で話をして、大笑いしたり、泣いたりするのだ。
「精神科の医者が蘇生していたらアランを見せに行こうか」
「そうね。そうしましょう」
レイとイーサンはアランに付き添って精神科医を訪れた。
「統合失調症に似た症状だね」
と医者は診断した。
「精神病に分類できるんですか?」
「地球でもポピュラーな病気だよ。原因はわかっていないがね。投薬で症状が改善できる」
「治るんですか?」
「残念ながら完治はしないね。完解にはなるけれど」
レイとイーサンは顔を見合わせた。
「レイ!僕はレイのことが大好きだよ」
アランがレイに言った。
「私もアランが好きよ。かわいいと思ってる」
「そんなんじゃ嫌だ!大人になったら僕と結婚して‼」
「大人になってみないとまだわからないわ。アランに他に好きな人ができる可能性だってあるし、何が起こるか未来は予想できないもの」
レイの答えにアランはちょっと考え込んでいたが、
「じゃあ、予約しといていい?」
と無邪気に聞いてきた。
「それは・・・いいわよ」
レイは頷いた。
「それよりも、エニグマたちをなんとか制御できる方法を見つけなきゃ、アランが普通の人生を送れないわよ」
「エニグマはもういない」
「えっ?」
「エニグマはユリイカに変わった」
「どういうこと?」
「人間のことがわかった(ユリイカ)」
エニグマたちは自分たちの呼称をエニグマからユリイカに変えたらしかった。
「レイ!一緒に生きて行こう」
アランのその言葉に、レイは心揺さぶられた。
「もちろん‼何があっても、私たち、生きていくわ」
希望だけはいつも心の中にある。レイはそう確信した。
<fin.>