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第三章☆エニグマからのなぞかけ
「アラン、エニグマが探してる謎の設計図って何のことだかわかる?」
レイは目線を低くしてアランの目の中を覗きこんで尋ねた。
「エニグマが欲しいのは、僕たち人間の生命の設計図」
「遺伝子の螺旋の模型とかかな?」
イーサンが言うと、アランは首を横に振った。
「近いけど、答えじゃないって言われた」
「人体を生成している元素の話とかは?」
「それも、近いけど違うって」
難しいなとイーサンは顔をしかめた。
「例えば、死んだ後、僕らがどうなるか?とかかな」
アランの言葉に、イーサンはちょっと言葉につまってから、
「死んだらおわり。後はなんにもない」
と言っていやなことを切り捨てたそうな感じになった。
ヴウウウウン。
なにか、電気の磁場みたいなものが三人の周りに発生した。
「その答えじゃダメだ‼」
アランが慌てて叫んだ。
「イーサン!僕らを無に還す気なの?」
「そんなつもりで言ったんじゃない!」
イーサンが焦って弁解した。なにかが三人の話を聞いている!
レイは全身の毛が逆立つのを感じた。このままだと非常にまずいことになりそうな直感がした。
「レイ!エコスフィアがヒントだよ」
アランがレイに言った。
エコスフィア。生態系の成立した世界。
「・・・私達は死んだ後、塵や水に分解されて、周囲の環境に散らばっていき、巡りめぐって循環した後、新しい生命になる」
「死んでも無にならないよね?」
「輪廻転生を信じるなら、きっと何度でも生まれ変われる」
『自分、とは何者だ?』
エニグマの声がレイの頭の中に直接響いた。
「私は私。それ以上でもそれ以下でもない」
『死ぬことはどう思う?』
「私は死にたくない。まだ、大人になって恋をして、結婚して、子どもを産んで育てていないし、知らないことがたくさんあるもの!私は自分のことが好きだもの。だから他の人のことも好きになるし、命は繋がっていく。」
『よろしい!その答えだ‼』
大きな声が響き、レイは気が遠くなりそうだった。
「レイ!レイ!やったよエニグマの問いかけにちゃんと答えられたんだよ!」
アランがレイに抱きついて歓喜の声をあげていた。
磁場みたいなものは消失していた。
「大丈夫か?レイ?」
イーサンが心配してレイの顔を覗きこんでいる。
「大丈夫。・・・エニグマが、射出された他の人たちの脱出ポットを回収してくれるって」
「本当に?」
「エニグマたちは、私達のそばにずっといるって言っている」
「恐いな」
「危害は加えないって。共存していこうって言ってる」
ふらふらしているレイをイーサンとアランは近くのソファに寝かせた。
「精神生命体の宇宙人ってことかな・・・」
イーサンはこれからどうなるんだろう、と呟いた。




