毒リンゴの最終定理[林檎]【此処何処】
■ヒロイン7[理路 林檎]■生粋の理系女子。好きな数学者はフェルマー。
数学の定期考査、終わった……。
フィニッシュではなく、もちろんジ・エンドの方だ。一週間後、補習を受けさせられている姿がありありと想像できる。
「一条君」
「ん? えーっと、なに?」
いつか来るべき拷問に思いを馳せていると、苗字は確か、理路だっけ――黒髪メガネの、如何にも優等生そうな出で立ちである彼女が話しかけていた。
「一条君の解答用紙、ほぼ白紙だったのだけれど」
「え、ちょ、何勝手に見てんのさ!」
知らない間に俺の個人情報が漏れてしまっている!
「ほら、だって私の席って一条君の二個手前じゃない。回収している時に思わず見てしまったのよ……いや、正確には何も見えなかったのだけれどね」
なんてったって白紙だし。と呟く理路氏。
「数学をいい加減にしていると、怒るわよ」
「ぐっ……」
意外と毒吐くなコイツ。
「いい加減と言えば、貴方の苗字もよ」
「苗字!?」
ええ、そうよ。と彼女は深刻な顔を浮かべながら、
「なんなのよ、『いちじょう』って。あのね、一条君。どんな数字を『一乗』しても、何も起きないの。知ってた?お願いだから、そんな意味のない、生半可で、無益な苗字を名乗るのはやめて頂戴。どうせならいっそ、百乗くらいにしておきなさい。分かった? 百条くん」
「はい……」
生まれて初めて苗字で罵倒された……。