【挿絵】無限ループな世界の中で[世界]【歌川】
黄昏時。二人きりの教室は静かだった。この世界には俺と彼女しかいないんじゃないかってくらいに。
緩やかに流れる時間の中、世界さんは、読んでいた分厚い本から目を離した。
「あの……一条君。私を助けてくれませんか?」
「え? 助ける?」
「実は私、今日と言う時間に閉じ込められてしまったんです。私が確認しているだけでも、今日が既に614回ループしています。今は615回目です」
「世界さんが……時間ループの被害者?」
全然信じられなかった。あんた、今日の現国の抜き打ちテストにめっちゃ抗議してたじゃん。しかも真っ先に!
「あ。その顔、嘘だと思ってますね? ですが、私は今から起こることも分かります。今から一分経つと何が起こるか、一条君に予想できますか?」
「いや、まったく分からないよ。何が起こるんだ?」
「今から一分経つと、その時――――六時になります」
くそッ。尋ねた俺が馬鹿みたいだ!
「そこから更に時間が経つとどうなるか分かりますか。夜になるんです。だからとりあえず今は帰ります」
世界さんはそうして立ち上がる。
めちゃくちゃ怖かった。
なにが怖いって、この電波なやり取りが俺と彼女の初めての会話ってことだ。
「ではさようなら、一条君、また明日です」
あ! 今「また明日」って言った! おもいっきり言った! ループ設定忘れてる!