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ハヤトの謎

「・・・・・・コーヒー飲むか?」


「うん、ありがと」


部屋へと戻った後、ハヤトはコーヒーを入れるために、台所へと向かった。


サラはソファーの上で、膝を抱えていた。


ニオはというと、空気を読んでいるのか、先ほどの戦闘で魔力を消費したのか、刀の姿で鞘に収まったままだ。


サラは小さく震える手で、ハヤトからコーヒーの入ったカップを受け取る。


「・・・・・美味しい」


「良かった。 いい豆だな」


「・・・・・・・・聞かないの? あのワイバーンのこと」


「それは・・・・・・・」


気になっていないと言えば、嘘になってしまう。


巨大なワイバーンを見た瞬間に、サラは戦意喪失し、怯えた目をしていた。


「・・・・・・・俺が聞いていいことなら」


「・・・・・ハヤト君はアルジオと私のことを話してたよね?」


「聞いてたのか」


2人ともそこまで大きな声で話していたわけではない。


サラとハヤトたちの距離は小声で話していれば内容は聞き取れない距離のはずなのだ。


「結構耳に自信あるから」


「・・・・・サラのお兄さんのこと聞いたよ」


「なら、話していいかな」


サラはコーヒーを一口飲んでから、口を開いた。


「・・・・・私のお兄さんは魔力は低くかったけど、奇跡的に大型のワイバーンと契約した。 ワイバーンのような竜族の精霊は精霊の中では頂点って言われてて、お父様たちも大喜びだったんだよ、でも・・・・・・お兄様が謀反を起こした」


「・・・・・・サラは、お兄さんに会ったのか」



「うん、使用人たちの血で真っ赤に染まった廊下に、お兄様が立ってた。 いつもの優しいお兄様ではなく、感情を感じない冷たい瞳、血まみれの剣、奥の方ではお兄様を怯えたて目で見つめていた使用人たちがいた。 もし、あの時に王国騎士団が来てくれなかったから、私もここにはいないかも」


「・・・・・・サラ」


「あはは、ごめんね。 疲れてるのにこんな話しちゃって」


「もっと話してくれ」


「・・・・・・・え?」


「俺は・・・・・サラと知り合ったばかりだ。 だからこそ、サラのことをもっとよく知りたい・・・・・ダメかな」


「////////////ん〜〜〜〜〜〜〜〜」


ハヤトの言葉に、サラは顔を真っ赤に染める。


「・・・・・・そ、そういうこと、女の子に言わないほうがいいよ? 勘違いされるから・・・・・・ゴニョゴニョ」


「・・・・・・?? わ、わかった。 気をつけるよ」


よくからないものの、サラの言葉にうなづいた。


「・・・・・お兄様がクーデターを起こした理由が今でもわかってない。 政権には興味のない人だったし、何より剣術は私よりも下手だったから、使用人達が殺されるなんておかしいんだよ」


「・・・・・・俺が旅をしている時に聞いた話なんだけど、ある日突然、温厚だった人がまるで独裁国家のリーダーみたいになって、口調や性格が変わることがあったらしい」


「・・・・・・・性格が変わる??」


「ああ」


ハヤトはその話の真相が気になり、立ち寄った町や村で、その情報を集めたが、これと言った優良な情報を得ることは出来なかった。


「でも、その人がどうしておかしくなったりしたのか、知っている人には会えなかった」


「・・・・・・そうなんだ」


「昔の俺のツテがあれば情報を集めやすいんだろうけどさ」


「ツテ?」


「・・・・・・・いや、気にしないでくれ」


「・・・・・・?」








「・・・・・リズベット、いる?」


サラはハヤトと話した後、ハヤトについて聞きたいことがあったため、学園長のカトラの次の権限を持っている。


リズベットならば、ハヤトの過去についても知っていると思ったのだ。


「あら、サラじゃない。 どうしたの?」


「・・・・・・」


同い年の女の子とは思えないほどの、威圧感と迫力、そして自分と比べると惨めになりそうなほどの・・・・・・胸。


「ハヤト君のこと知りたいの」


「・・・・・・知りたいって、もしかして、好きなの?」


「なっ!?」


「・・・・・違うの?」


リズベットに言われて、初めて考えたが、自分がハヤトに対して思っている感情は、憧れや信頼とは少し違う気もするが、恋などしたことがないサラにとって、ハヤトへの気持ちが恋なのかわからない。


「・・・・・・わからない」


「そう、まぁいいわ。 お茶淹れるわね」


リズベットの部屋はサラたちと部屋の広さ自体は変わらないが、1人の部屋なため、家具なども少なく、広く見えてしまうのだろう。


「・・・・・・」




「ダージリンで良かった?」


「うん、平気」


リズベットは自分の分の紅茶もテーブルの上に置くと、サラの正面へと腰掛けた。


「・・・・・で、ハヤト君のことよね、彼の何が知りたいの?」


「・・・・・・ 私、ハヤト君に助けてもらったのに、彼のこと何にも知らないから」


「やっぱり好きなんじゃないの」


「そういうのじゃないのっ!」


「はいはい、資料持ってくるわ」


リズベットは本棚にある封筒を2枚を手に取り、テーブルの上に広げた。


「これがハヤト君に関しての全資料よ」


「・・・・・・これだけ? 諜報機関が調べたんでしょ?」


「それが・・・・・・ハヤト君は結構謎が多いというか、諜報機関も手を焼くくらい何も見つからなかったの、おそらくは彼の出身は諜報機関かそれに似たような組織なんだと思うわ」


サラ自信がハヤトについて知っていることといえば、刀を2本所持している、黒髪、東の国から来たことくらいで、他には何も知らない。


「・・・・・・ねえ、リズベット。 リズベットはハヤト君にも負けない?」


「負けないわ、というより、私に勝てる人なんていないのよ」


「・・・・・・リズベット」


リズベットの発言は一見は嫌味に聞こえるが、本音はそう思っていないことをサラは知っている。


最強は最強なりの悩みがあるんだということだ。


「・・・・・・雨が降りそうね」


リズベットは曇り空を見上げながら呟いた。

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