ルームメイト
「部屋はランダムで決められるので、女子生徒がルームメイトということになることもあるので、ご了承ください」
「そうなのか」
「お互いの意思があるなら止めませんが、くれぐれも無理やり襲うことは控えて頂きたいです」
「襲わねえよ!」
どうやらこの学園は女子生徒の方が比率としては多いらしく、男女のルームメイトができることはよくあるようだ。
それが理由か校内で交際しているカップルもそれなりにいるんだとか。
学園としてそういうのを取り締まるべきではないかと思うが、一種の少子化対策なのかもしれない。
「ここがあなたの部屋です。後これを」
「・・・・・・・これは?」
「学生証です、そしてあなたの素性を証明するためです。 それからここの鍵です」
「何から何まで、ありがとう」
いくらセーラの推薦状があっても、他国から来たハヤトという存在はかなり対応に困るだろう。
「・・・・・・・それでは」
フィノはぺこりと頭を下げて、元来た廊下をスタスタと戻っていった。
ハヤトはドアの前に立ち、ドアをノックするが返事はない。
居ないのか、出られないのかのどちらかだろう。
鍵穴に鍵を差し込み、右に回すと、ガチャリと音を立てドアが開いた。
「・・・・・・・ん?水の音?」
部屋の奥で水が流れる音が聞こえる。浴室も備え付けてあるのかもしれない。つまり、ルームメイトは入浴中だ。
「おっ、いいソファーだな」
リビングのソファーに座ると、長旅の疲れか、一気に睡魔に襲われた。
「・・・・・・なかなか熟睡出来なかったからな」
そのままハヤトは深い眠りに落ちていった。
「ふふっ〜ん、ふふふふーん、良いお湯だった〜、あれ? 誰かいるのかな?」
サラはソファーからする寝息を確かめるため、ソファーの後ろからゆっくりと近づき上から覗いた。
「スースー・・・・・・・・」
「ハヤト君!? ルームメイトって・・・・・・・ううっ・・・・・って寝てるのか」
「んむ・・・・・・・うー」
「ふふっ、なんだか可愛い」
サラは細い人差し指で、ハヤトの頬をツンツンとつついた。
思っていた以上に柔らかいハヤトの頬の感触をサラは楽しんでいた。
ハヤトは謎が多い。
ここにくるまでの道順でも周囲の警戒を怠っていなように見えた、そんなハヤトの無防備な姿にイタズラ心をくすぐられた。
「(温かい手の感触が頬を触ってる。 誰かにこんな風に触られるなんていつ以来のことだろう・・・・・・・・・母親ってこんな感じなのかな)」
などと夢見心地な気分になっていると、すーっと目が開き、夢から覚めた。
「・・・・・・・・んっ・・・・・寝てたのか、俺は」
「おはよう、ハヤト君」
「サラ? ・・・・・・・・・・な、なんでここに」
「フィノが部屋を間違えてなければ、ハヤト君のルームメイト私だから」
「・・・・・・・ごめん、挨拶する前に寝るなんて礼儀なかったな」
「気にしないで、疲れてたんだし」
「それは・・・・・・・まぁな」
「(それに、良いものも見れたし)」
なんだかサラが嬉しそうだけど、まあ深くは追求しないでおこう。 ハヤトはそう思い何を言い返すことはしなかった。
「えっと、ということはハヤト君はこっちの部屋ね」
案内されたのはリビングの奥にある二つの扉があり、ハヤトの部屋の扉は左側の扉だった。
「右側は私の部屋だから何かあったら来てね、っていっても隣だし、それは大丈夫かな」
「・・・・・・にしてもお腹空いたな」
「何か食べたいものある?」
「眠いし、起きたら食べるよ。ありがとう」
「うん、私は少し勉強してから寝るからね」
そうは言ったものの、ぐっすり睡眠を取ったからか、横になってから睡魔が襲ってくることはなかった、ハヤトは窓の外から見える景色を眺めながら、壁に立てかけてある二本の刀を見つめていた。