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サラとハヤトの共闘

「うん、みんな何も言わないけどね。 サラの変わりぶりに驚いてるのよ、前は本当に暗かったから」


「そっ・・・・・・か。 サラはいつも笑っててて、俺はサラが強いからだと思ってたんだけど、強がっていたんだな」


「あの子は小さい時から強がりというか、自分の悩みを打ち解けたこと無いの。 私にも・・・・・リエラにもね」


昔のことを思い出しているのか、ゆっくりとルティアは目を閉じ、ふぅと息を吐く。


「・・・・・・・サラの昔のこと、知りたい?」


「ああ」


ハヤトはサラの言葉に迷うことなく頷いた。





「サラはリズワーナ家にとって、待望の女の子が生まれたの」


「待望? 貴族なら、男が生まれた方が良いんじゃないのか?」


「普通はね、でも、私達魔導士は特別なの。 ハヤトも知ってるでしょ? 魔力を持つ子供って優遇されて育つことがあるって」


「そういえば・・・・・」



旅の途中に立ち寄った村で一夜を過ごそうとした時のことだ。


ハヤトのことを客人とは思えないような雑な対応をされたのだ。


宿も馬小屋のような場所、食事もパンが一つだけだ。


しかし、ハヤトが魔導士だとわかると、村人たちは手のひらを返し、貴族をもてなすかの様な態度に変わったことがある。


「俺もそんなことがあったよ、まるでヒーローになった気分だった」


「・・・・・・・それから、魔導士は女の子の方が向いてるって言われてるの」



「確かに、ここも女の子の方が魔導士が多いよな」


「女の子の方が精霊に好かれやすいっていう理由みたいだけどね。 それで、サラは小さい頃から優秀だった。 私とリエラが、サラに出会ったのが、ボストニアの貴族が集まるパーティの時だった」











「サラ、歩きにくいわ」


「だって・・・・・・・知らない人ばかりなんだもの」


サラは母親のドレスにしがみついたまま、話そうとしなかった。


「困ったわねえ・・・・・・・・・あら?」


柱に隠れながら、こちらを覗いている長髪の女の子がいた。


「あの子は確か」


「わ、私は・・・・・・アルミット家のリエラ・アルミットですわ」


リエラと名乗る少女はドレスの両端を持ち上げながら、ぺこりと頭を下げた。


「・・・・・・・」


「ほら、サラも挨拶なさい」


「・・・・・・・・リズワーナ家のサラ・リズワーナ」


母親の陰に隠れながら、サラもそう答える。


「サラ、リエラと遊んできて良いわよ」


「行きましょう?」


「・・・・・・・うん」


リエラの手を取ると、二人は宮殿のホールを出る。


「待ちなさい!」


「え?」


二人の前にポニーテールの少女が立っていた。


「わ、私も連れて行きなさい!」


青いドレスの少女は薄っすらと涙を浮かべながら言った。


「寂しいの?」


「!?」


サラの無垢な言葉に、少女は胸を突かれた様に蹲った。


「ち、違うわよ!!!! この私が寂しいわけないでしょ! シェール家の女は強いのよ!!」


地団駄を踏みながら、ポニーテールの女の子は二人を睨んだ。


「あなたこそ失礼ですわ、私はリエラ・アルミット。 名を名乗らないだなんて、失礼ですわよ」


「・・・・・・ルティア・シェール」


ルティアは不満そうにそう言った。


しばらくの間、リエラとルティアの二人の睨み合いは続いた。









「あははははは」


「・・・・・・・・そんなに笑わなくても良いじゃないの」


ルティアの昔話に、ハヤトは腹を抱えて笑った。


「ごめん、ごめん。 ルティアって今よりもとっつきにくかったというか、生意気だったんだな」


「・・・・・・同じ年の子がいて嬉しくて、つい意地悪しちゃったのよ、私・・・・・・・・友達いなかったから」


「そっか」


なでなでと頭を撫でてやると、ルティアは気持ちよさそうに、ポニーテールを揺らした。


「ルティアは普通にしてれば可愛いんだからさ、自信持ちなよな」


「・・・・・・・何言ってるのよ、バカ」


ハヤトの微笑みから顔をそらしながら、ルティアは自らの髪飾りを指で優しくさすった。


「ねえ、ハヤト。 ルティアは寂しがりやなんだから、流せたら許さないんだからね 」


「しないよ、安心しろって」


ルティアの懇願する目に対して、ハヤトは答えた。













「・・・・・・・あれ? ハヤト君がいない」


治療やメンテナンスを全て終わらせ部屋に戻ると、部屋の扉には鍵がかかっており、部屋にはハヤトの姿はない。


おそらくどこかへ出かけているのだろう。


「・・・・・・・褒めてもらいたかったんだけどなあ」


ハヤトがいないことを自覚した途端、寂しさが押し開けてきた。


兄がいなくなった時とは違う、どこかモヤモヤしたこの感情。


サラはその気持ちを誤魔化すべく、体を大きく伸ばした。


「・・・・・・んっ・・・・・んんんっ、はぁ・・・・・・・・・んっ、んんんっ!」


サラの声がサラ以外いない部屋に響く。


「・・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・・・・ハヤト君・・・・・・」


サラが呼吸を整えながら、胸の気持ちを静めるために、自身の指を制服のスカートの中に忍ばせていく。


「・・・・・・ハヤト君、んっ・・・・・・ああっっ!」


「ただいま・・・・・・・いや、お邪魔しました」


サラの声でハヤトは最悪の状況に帰宅してきたと察し、静かにドアを閉め始める。


「ち、違うの! ハヤト君!! そういうのじゃないから!!!!」


「ご、ごめん・・・・・・・女の子もそういうことに興味はあるっていうもんな・・・・・・・またしばらく出かけてるから」


「待って、ハヤト君!!!! 待ってええええええええ!」








「・・・・・・・ご、ごめん、なんか勘違いしてたみたいで」


「気にしないでいいよ、紛らわしかったの私だから」


「・・・・・・・サラ、外歩かないか」


「外?」








ハヤトに連れ出され、二人は学園の庭園をのんびりと歩いた。


雨が止んだばかりだからか、地面が水分を多く含み、ぬかるんでいる場所を避けながら、転ばないように歩いた。


「・・・・・・サラはさ、ルティアたちのこと信用してない・・・・・わけじゃ無いよな」


「いきなりどうしたの?」


「ルティアからサラと初めて出会った時のことを聞いたよ、全然話してくれなかったんだってな」


「それを言うなら、ルティアだって意地悪してきたんだよ?」


「ああ、それも聞いた。 でも、サラ俺は君に色々世話してもらっているけど、君の本音を一度聞いていない」


「・・・・・・わ、私は別に」


「サラは俺たちが、お兄さんのように、どこかに行くんじゃ無いかって心配なんだろ?」


「・・・・ッ!?」


図星を突かれたのか、サラは一瞬だけたじろいだのをハヤトを見逃さなかった。


「・・・・・・私は家族の中でただ一人生き残ったんだよ、中には私とお兄ちゃんが画策してお父さんたちを殺したんだって言ってくる人もいた。 私といると、ハヤト君たちも悪く言われちゃう。 大切な人たちが、仲間が悪く言われるのを見るのは・・・・・・・・・・・もう嫌」


「サラ・・・・・・・・・・・」


サラはスカートの裾を悔しそうに、キュッと握りしめる。


今まで心無いものたちからの罵倒や批判を思い出していたのかもしれない。 その透き通る瞳には、薄っすらと涙が浮かんでいた。


「・・・・・・・・悔しかった、悔しかったんだよ? 私の肩を持ってくれてた人たちも批判に耐え切れずに、みんな離れていった」


「・・・・・・・本当に、≪みんな≫か?」


「え?」


「ルティアとリエラは何でサラといるんだと思う?」


「・・・・・・なんでって」


「サラと居たいからだよ、友達として、仲間として、サラを守りたいと思うから、側にいるんじゃないか」



サラは考えるように、少しだけ俯いてから、大きく息を吐いた。


心を落ち着かせてから、サラはゆっくりと顔を上げる。


「・・・・・・ハ、ハヤト君はさ、わ、私と・・・・・・・」


突如、サラの言葉を遮るほどの大きな爆発音が学園内に響き渡る。


「な、なんだ」


「爆発音だよね、行こう」


涙を拭い、サラとハヤトは音が聞こえた方向へと向かった。










「・・・・・・・はぁ、マジかよ、この程度で騎士だと? 毎日突っ立ってるだけだから腕がナマんだよ、クソ野郎」


「・・・・・・お、お前・・・・・・何者だ」


「・・・・・・・てめえらみたいな雑魚に、俺の名前を聞く権利はねえよ・・・・・あ?」


「・・・・・・・その人から、手を離せ」


「へえ、俺にここまで気づかれないで近づくやついるんだな、ちょっとだけ・・・・・・・気が変わったぜ!!!!!!」


「っ!! 速い!」


「オラああああああああああああ!!!!!!」


男は剣を力強く叩きつける。 その衝撃で、地面にひびが入る。


「・・・・・・・よくもまぁ、そんな力技でそれほどの業物を扱えるな、お前」


「こいつの価値わかるとは、益々気に入った。 お前には特別に俺様の名前を聞かせてやろう」


「・・・・・・お前の名前なんか知りたくもないね」


「俺の名前はザルドだ。 良かったな、死ぬ前に俺の名前が聞けてよ・・・・・・」


「読めたぞ」


「なっ!?」


ハヤトはザルドを動きを完全に見切り、なんてことないように、攻撃を流した。



「お前の動きは確かに速い・・・・・・が、速いだけだ。 剣術は我流、しかも力で振り回すだけ、何より・・・・・・・・俺の師匠なんかよりもお前はよっぽど弱い」


「・・・・・・俺が、弱い・・・・・・・だと? 俺が? はっ、はっはっはっーーーーーーーーー・・・・・・・気が変わったぜ、お前だけは確実に殺す」


「やってみな、サラ!!!」


「こっちは平気!!!」


「よしっ、行くぞ、ニオ」


「イエス、マスター」


ニオの力を解放し、ハヤトは再び刀を構える。


ザルドの構えも先ほどよりもサマになってきているのがわかった。完全に我流の剣術というわけではないようだ。


「俺は最速なんだよ!!!」


ザルドは先ほどよりも速く、ずっと速くスピードハヤトの周りを移動、攻撃を繰り出す。


「・・・・・・最速ねえ、神速流奥義 一ノ型 雷破!!!!」



雷を帯びた球体が、ザルドへと向かって飛んでいく。


「ちっ、喰らえ、ケルベロス!!!!」


攻撃をなんとか交わしつつ、ザルドは精霊を封印した結晶を空に放った。


「・・・・・精霊召喚か」


「お前も精霊を出したらどうだ」


「生憎、俺の精霊は単体で戦闘能力は無いんでな」


そう、ハヤトは2体の精霊と契約を交わしているが、ニオももう一体の精霊も単体では一般人となんら変わらない容姿と攻撃能力、つまり、契約者の実力者に頼りきりになるのだ。


「ハヤト君! お待たせ」


サラが怪我人を避難させ戻ってきた。


「・・・・・サラ、精霊を少しだけ足止め出来るか」


「任せて、これでも学園の期待株なんだよ」


サラは腰の双剣に手を掛け、構えを取った。


普段はおっとりしているサラからは想像もつかないようなしっかりとした形をした構えだ。


「・・・・・解放」


サラの言葉に反応し、双剣は真っ赤な炎を纏い、暗くなっていた空が一気に明るくなる。


「ガルルルル」


「大きいね」


「けっ、まぁ良いさ、どうせその女も直ぐにやられる。 そうしたら今度はお前だ!!」



「はっ!」


ザルドの攻撃にも、ハヤトは徐々に慣れてきていた。


「・・・・・くそが」


「お前のその独学の剣で、俺に勝てると思うな」


「・・・・・・・殺す」


「やってみな」


「ハヤト君、流石だね」


ケルベロスは大きな威嚇の後に、サラに襲いかかるが、サラは難なく攻撃を避ける。


「あなたは名のある精霊なのかもしれないけど」


「・・・・・・・・」


一瞬のことだった。


攻撃を交わされたケルベロスは第二陣の攻撃に移行した所、サラに身体を真っ二つにされたのだ。


「・・・・・・ガッ・・・ルル」


「・・・・・・・・あなたの敗因は、あなたが人間じゃなかったからだよ」


ドスンと音を立て、ケルベロスの身体は光に包まれ消えていく。


「・・・・・・・そんな、馬鹿な」


「さぁ、俺らもそろそろケリをつけよう」


「何言ってやがる、俺の攻撃を受け止めるのが精一杯だろうがよ!」


「・・・・・・お前は何にも気がつかないのか、俺が何でお前の攻撃を受け止め続けたのか」


「何?」


「・・・・・・・お前の動きはもう見切った。 神速流奥義 ニノ型 飛走!!」


「・・・・・・・・・・うそ・・・・・・だろ」


ザルドは目にも留まらぬ、ハヤトの動きに、全くついていけなかった。 いや、辛うじて、急所を免れたというべきか、ザルドは左腕を切り落とされただけだった。


「・・・・・・ぐはっ・・・・・・て、てめえ」


「お前、何者なんだ。 どこかの組織の一員なら」


「お前に言うことなんざねえ、覚えてろ。 必ずお前を殺しにくるからな」


「・・・・・・・・ふぅ」


刀を鞘に戻し、ザルドがいた場所を見ると、そこにはもうザルドの姿はない。 恐らく転移石でも使ったのだろう。


「・・・・・・疲れた。 久しぶりにまともに戦闘したぞ、にしても、サラはやっぱり強いな。 倒すとは思っていたけど、あんなに早いとは」


「これでも優等生ですから♪」

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