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サラの戦い方

「・・・・・これは凄いな、傷が完全に治ってる」


「私の能力は回復魔法ですから。 まぁそれも能力というよりは、この子の能力なのですけれど」


「その洋剣か?」


「ええ、この子は解放しなければただの洋剣ですわ。 けれど、能力を発動すると、私が指摘した人の怪我を治療します」


「へえ」


先日の戦闘を見た限り、リエラの剣術はハヤトにも引けを取らないのではないかと思うほどだ。


しかし、回復魔法を使えるということは、対戦相手になった場合はかなり厄介な相手になることだろう。


「しかし、歓声がすごいな」


「みんな魔法が好きなんだよ、人を傷つけたりもするけど、魔法が人を救うこともある。 この模擬戦を通して、更に魔法を磨くことができるようになれば、自分の成長にも繋がる・・・・・・っていうのが、学園長の育成法なんだって」


「流石は我が学園の優等生ですわね、サラ」


「優等生?」


「ええ、サラはランキングも上ですし、何よりも学業の成績でサラよりも高い方はいませんのよ」


「凄いな」


「そ、そんな・・・・・照れちゃうなあ」


本当に恥ずかしそうに、ハヤトから背を向ける。


「で、俺はこの後何かしなきゃいけないこととかあるのか?」


「部屋に帰って寝るのもいいし、勉強してもいい、他の練習場で魔法の特訓をしてもいい。 模擬戦が終わった人は即時解散だよ」


「なら、部屋でゆっくりしようかな」


「私はこの後試合があるから、ハヤト君先に帰ってて」





「・・・・・・・あっ」



「やぁ、ルティア」


サラと別れてハヤト部屋に戻る途中にルティアと出会った。


「・・・・・ハヤト、私はあなたを認めてないから」



ルティアはハヤトを睨んでその場を立ち去ろうとする。


「待ってくれ!」


「っ!! 」


弓を突きつけられ、脅されるもハヤトは動揺しない。



「・・・・・・俺はルティアのことが知りたいんだ!」


「っ///////// ば、ばかしゃないの!? 」


「ばかって・・・・・・・俺はルティアのことあんまり知らないから、仲良くしたいなって思ったんだけど・・・・・・・・ダメか?」


「・・・・・わ、わかったわよ」







ルティアとハヤトはゆっくり話せる場所を求めて、弓道場に向かった。


「で、何が聞きたいの?」


「なんでもいいよ、ルティアの好きなものの話とか、サラたちのこととかさ」


「・・・・・・・私は学園ランキング2位、属性は水、それから学園では数少ない弓使い」


「弓使いってそんなに少ないのか」


「あまり持ちたいと言われる武器じゃないのは確かね。 弓は重いし、地味だし、何より弱点が大きいから」



「弱点??」


ハヤトはルティアの言葉の意味がわからず、目をパチパチさせていると、ルティアはハヤトの心中を察したのか、話を続けた。


「近距離の攻撃が苦手ってことよ」


「でも、ルティアはリエラやサラよりも強いんじゃないのか」


「リズベットは別格として、他のメンバーのランキングの数字なんてあんまり意味ないわよ」


ルティアはそよ風に運ばれてきた落ち葉を摘み、クルクルと回した。


「・・・・・・ルティアってさ、そうしてれば可愛いよな」


「はあっ!? な、何言ってんの!?」


「だってさ、いつもあんなに眉間にシワ寄せてたら、綺麗な顔してるし、勿体無いと思うぞ」


「・・・・・・・・ばか」


恥ずかしさを誤魔化すように、ハヤトの肩を拳でぶった。


「・・・・・・・そういう顔も出来るんだな」


「え?」


「ルティアって笑わないやつだと思ってたよ」


「・・・・・・・・話は変わるんだけど、ハヤトは・・・・・サラと付き合ってるの?」



「・・・・・・・え? な、なんでそうなる」


「あの子があんなに懐くだなんて、それ以外考えられないから」


「・・・・・・・お兄さんの話か」


「うん、あれが原因で何人かの人に指差されてたこともあるの」


いつもは笑顔を浮かべ、ニコニコしているサラだが、その裏には1人で泣いているサラがいると考えると胸が締め付けられる。



「俺は・・・・・・・女の子に泣いて欲しくない」


「ハヤトって意外に優しいのね、ちょっとだけ驚いたかも」


「・・・・・・・俺ってそんなに怖い顔してるか?」


「というより、ちょっと怪しい感じかな」



ルティアの一言を聞いて、少しだけ胸が痛んだ。


「・・・・・・俺、そんなに怪しいか」



「ふふっ、そういうの気にするんだね」



随分とルティアの表情が柔らかくなってきたと感じる。


かなり心を開いてきてくれているようだ。


ルティアの綺麗に結ばれたポニーテールがふわりと揺れる。



「サラが懐くのがなんとなくわかった気がするな、ハヤトはサラのこと知ってる?」


「アルジオから聞いたよ、お兄さんのこともな」


「そっか」


ルティアは青く透き通るビー玉のような瞳で、ハヤトを見つめたあとにこう言った。


「・・・・・・・サラの子供の時のこと知りたい?」


「え?」


「サラね、時々1人で泣いてるのよ、お兄ちゃんってね。 相談に乗ろうとしても、サラは決まって『なんでもないよ』って屈託の無い笑顔で笑うのよ・・・・・・だから、ハヤトなら、サラのこと・・・・・・・サラに心から笑わせてあげられない?」



「・・・・・・・・俺は」


サラが時々嘘の笑顔を浮かべていたのは薄々気づいてはいた。


顔は確かに笑ってはいたのだ。しかし、どこか遠くを見ているような、心から笑えていないような顔と本当に幸せな瞬間に出る笑顔との差など、目の良いハヤトには明白だった。




「・・・・・・サラは、ここに来て右も左も分からない状態だった俺のことを助けてくれた。 余所者の俺を警戒することなく、色んなことを話してくれた。 今度は俺が・・・・・・サラを助ける番だ」


「・・・・・・・サラのことで続きがあるの、サラはここ最近まで心を開いてなかったの、今以上に」


「サラが?」






「速い!?」


「バーニングシュート!!!」


サラは試合開始から攻め続け、相手は防戦一方という状態だった。


「・・・・・・そんな、こんな簡単に」


サラが放った炎弾は対戦相手の発動した防御魔法の盾を軽々と破壊し、バラバラと崩れていく。


「私は負けるわけにはいかないの」



「・・・・・・・これが、ランキング上位の実力なのね」


「はっ!!」


サラは対戦相手の武器をはたき落すと、試合終了の合図が鳴った。


「・・・・・・また負けた〜」


「お疲れ様」


サラは対戦相手の少女に手を差し出し、少女はその手を力強く掴んだ。


「・・・・・・またですわね」


「うん、サラは武器を破壊しかしてない。 ルール上はそれでも勝てるけど、本戦はそうはいかないのに」


サラの試合を特別室で眺めながら、2人はサラの様子を観察していた。


「あの子は、誰にでも心を開いているように見えて、誰よりも心を開いて無いですわ」


「・・・・・・私と出会った時よりはマシになったけどね

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