39 友達に相談
そしてそのまま、気がつけば二ヶ月以上経っていた。
私、また、流されてる。
ダメじゃん。
夕べも四人で一緒にご飯を食べた。トシ君が豪華な肉を買ってきてくれて、みんなで焼肉。千沙は大好きなウインナーを食べてご満悦な表情。
先生とトシ君はビールで乾杯して会話も弾んでいた。
すっかり友達になっちゃって、変な感じ。
週イチで食事をする仲になった私たちは、もしかしたら結婚してた時よりもたくさんおしゃべりしてるかもしれない。
気を遣って私に触らないようにしていたらしいトシ君が、昨日焼肉のタレを渡す時に私と手が重なったら真っ赤になって手を引いてた。驚いた。
付き合ってた時だって、そんな初心な反応しなかったでしょって思った。
ご飯を食べ終わると、みんなで少しトランプやすごろくで遊んで、その後私が千沙とお風呂に入る。二人はその間、いったい何を話しているんだろう。
お風呂から出ると、千沙は半分寝ているような状態。お布団につれていくとぽてっとすぐに寝てしまう。かわいい。
その後、リビングでテレビを観ながら、まったり、三人で過ごす。
千沙が起きている間は千沙の話題がほとんどだけど、三人の時は、それぞれ自分のことを話すことが多い。
今の仕事のこととか、学生時代の頃の話とか。
前にも先生が話してくれた医大での先生の話に、トシ君は大ウケして、自分も大学生の時の面白エピソードを語ってくれた。
三人で大笑いして、千沙が起きちゃうねって慌てて声をひそめて笑った。
そんな風に過ごす時間は楽しくて。
でも、一人になった時にハッと思う。いや、ダメだって。
いつまでもこんな状況にいちゃダメなんだってばって。
でも具体的にどうしたらいい?
どうしたら?
私はどうしたいの? どうするべきなの? どうするのがいいんだろう?
ううー・・、わからないよう。
そんな時。天の助けのようなタイミングでメールが来た。
カナちゃんのママから「その後、どうなった?」って。
私は迷わずすぐにメールを返した。
「おねがい! 相談にのって! もう、どうしたらいいか、全然わからないよ」
って。
午前の診察を終えてお昼ご飯を食べ終えると、、千沙が帰って来るまでの二時間近所のカフェで会うことになった。
「やっほー! って、あらら。ずいぶん煮詰まっちゃってるわねえ」
カナちゃんのママは私の顔を見たとたんカラカラ笑う。そばにいた店員さんに、このお店の看板メニューのカフェラテを二つ注文して、どかりと席に座った。
「さあさ、全部、ぶちまけちゃって! なんでも聞いたげるから!」
「う、うん。あのね・・」
私は今の状況と、過去を大まかに説明した。
とは言え、こういう相談事をしたことのない私は、話すのがすごく下手クソで、自分で話してて眩暈がしそうだった。時節も飛び飛びだし、言葉も詰まって全然思うように話せない。
なのにカナちゃんのママは、ちっともイライラする様子もなく呆れることもなく辛抱強く聞いてくれた。
時々くれる相槌や質問に助けられて、何とか私は話を終えた。
カナちゃんのママは、うんうんと腕を組んで目を瞑って頷く。
そして、私に聞いた。
「のぞみさん、元旦那さんと先生と、どっちが好きなの?」
「ど、どっちって・・」
ズバッと聞かれると困ってしまう。だってそんなの・・。
「・・・わ、私は、どっちも選べないよ。そんな立場じゃないって思う。
千沙には、父親が必要だろうし、経済的にも支えはいる、けど・・」
「あー、そういう難しいことはいいの。
ちさちゃんのことも、結婚のこともひとまずは置いといて。
のぞみさんは、どっちが好きなの? 正直なところ」
「好き・・」
口に出して見ると思い浮かぶのは、先生の笑顔。
でも、ぶんぶんと頭を振った。
「好きなのは、昔から・・・先生、だけど。
だけどっ、先生には私じゃあ駄目だよ」
「駄目って?」
「だって、先生は患者さんにもみんなに尊敬されてて可愛がられてる、その、すごい人だから。
だから、こんなバツイチの子持ちと結婚なんて、許されないと思う」
「許されないって、誰から?」
「う・・、えっと、世間・・から」
「なに、ソレ」速攻でツっ込まれ、はあっと溜息をつかれてしまった。
うう。だってしょうがないじゃん。
本当にそう思うんだもん・・。




