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擬似温度 × ***

疑似温度 × 木漏れ日

作者: 奈々月 郁

桜の花びらと一緒に雪が舞い落ちるような異常天候に見舞われながらも、ようやく季節は温暖なぬくもりを取り戻し始めていた。

今日もそんな日。明るくて温かな木漏れ日に、ほっとしながら帰り道を行く。


しばらくずっと、この道は通らないでいた。冬は木々が寒々しいし、桜が満開の時期は見物人で騒々しい。


ふぅ、と息を吐くと、自然と笑みが浮かんできた。


なんとなく、そう、根拠なんてないけれど。なんとなく幸せな気分だった。

自然公園と銘しているせいか、わざと舗装していない道は土で靴が汚れるのだけど、それも気にならない。


木漏れ日の中を歩いていくうちに、肩の力も、心のしこりも抜けていきそうな感じがした。


それと同時に、素直に反省した。自分が悪かったのだと頭では分かっていても、そんな気分になれたのは初めてだった。


視線を上げれば、木の緑の合間から見え隠れする日差しが眩しい。それでも顔を上げていられるのは、木の葉が優しく視界を覆っていてくれるからだ。


優しい温かさも。

優しく包んでくれた愛情も。


どうしてあの時は理解できなかったんだろう。


どうして無理にでも言葉を引きずり出そうとしてしまったんだろう。


「好き」と言われなければ駄目になってしまうほど、キミが好きだったのに。


日だまりのぬくもりじゃ到底満足できなくて、キミが泣こうが苦しもうがおかまいなしに、葉も幹も焼き尽くしてしまうような感情を欲しがった。

残ったのは、色のない灰だけ。当たり前だ、火に触れれば命あるものは燃え尽きてしまう。


ふっと日が陰った。びっくりするほど暗くなって、目の前の光景に違和感すら覚える。

まるで今の自分の心境のようで、苦笑いが漏れた。


日差しがないと、意外なほど気温を感じず、暗さのせいで寒いかのような錯覚が起こり、思わず身震いした。


だけどきっと、すぐに雲は通り過ぎる。

また太陽が顔を覗かせて、木漏れ日が僕に降り注ぐ。


穏やかさを好んだ彼女と何度も通った道を、誰かと通るようになるのかもしれない。

そして僕は今度こそ、木漏れ日のようなぬくもりの、その意味を間違えることはない。

焦らないで、静かに抱きしめればいい。




――――そのことを教えてくれたキミに、いつか謝ろう。




再び現れたぬくもりは、意識せず目を閉じてしまうほど気持ちがよかった。

あの頃の、キミを抱きしめているような暖かさだった。




~Fin~

ねむねむ……奈々月です。

昔の恋を懐かしく思う時、自分では反省することが多いなぁ、と思います。

たいていは、お子様だったなぁ……と。

自分らしく、自然に相手と一緒にいて、そしてそういう相手と出会うって、人生でもそうはないことかもしれませんね。

そうありたい、と気付けるのもまた、時間が必要だなぁ、と。

恋愛小説は、自分の経験が色濃く反映されるので、昔書いたものを見ていると、ちょっと感傷に浸れたりするメリット(?)があったりします。


それでは、おやすみなさいませ……。

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