【5】
おわり、おわり
もう僕が呪われそうなので
ここまでよく読みましたね…
飽きましたでしょ?
もう称賛ものでっせ
では、最終章です。どうぞ。
嘘…でしょ?
どうして?
私は見捨てられたの?
でも、誰一人殺しちゃいけない、って…まさか嘘?みんなが私のことを殺すために私を騙したの?
また泣いてしまいました。
でも、みんなのことは信じたいので自殺なんてできません。きっともう少しすれば迎えに来てくれるはず…
かなちゃんには半ば申し訳ないことをしたと思っている。
私としても彼女を一人にはしたくなかった。これまで一緒にいた者として、置いていきたくなかった。
このゲームのルールを調べていた時にわかった事としては、前周回で「鬼」だった片岡は前周回をゲームオーバーに導いたことで生還したこと。
「鬼」はゲームオーバーを引き起こすことを目的とし、成功すれば次回以降はなりすましの別人が参加し、次回はその別人が生き残ってはいけないこと。
次回の「鬼」は、前回最後まで生きた人間であること。
ひとまず取り決めた事として、順に一人ずつ「鬼」となって他の奴らが全滅して生還させること。先ほど彼女に話した内容はかなり虚実が含まれている。今回は彼女を生還させる。
最後に残るのは誰になるかといえば、私だ。タカを除いた他の全てのプレイヤーは自分が自分が、と言っていたが、案の定タカの態度は変わらなかったので、彼を鎮めるためにも私が犠牲になることにした。
「さて…始めようか」
「おう」
「…怖い…」
「でもやらなくちゃ、みんなのために」
銃を喉に当て、深呼吸する。
「かなちゃんが襲われちゃう前に…」
「よし」
全員で息を合わせた。
「万歳!!」
前と同じ、暗い所に着いた。
hazeは無事に「鬼」となり−鬼になることを「無事に」と表現するのは些か憚られることではあったが−、同じ要領のことを何度も繰り返した。hazeに続きはるっち、TPG-1、タカ、ハピーと順に「鬼」となり、ゲームオーバーによって生還した。
次々と人が少なくなり、先ほどの暗黒空間に入るのが段々怖くなってきた。
「次は誰だったっけ…」
憔悴したKAZがため息のように言う。これほど連続で「自殺」し続けているのだから当然だろう。
「ナミィ、だったな」
「ん、そうですね」
「よし…向こうでもうまくやれよ?」
「おう、どうも」
これで7度目の心中。精神に異常をきたすことは間違いなく、4回目からは引き金を引くのに躊躇がなくなるのがわかった。生還したあと自殺でもしなければいいが…
かくして残りは5人。
アステカ、カイト、KAZ、アルトカ、そして私。
次はアステカの番だった。
「…なぁ」
ふいに口を開いたのはアステカだった。みんなの足が止まる。
「どうした?」
「俺たち、帰るために自殺してんだよな?そんで、これは最後の一人になるまで続くんだろ?」
「まあ…うん」
「どうせ一人帰れるかわかんねぇんならさ」
彼の目は心を病んだように虚ろだった。ぶらさがった腕で自分の頭を触る。
「…俺が死んだらどうなる?」
つまり、これまで「鬼」が生還できることがわかった上で作戦を遂行していたわけだが、そこで「鬼」を殺したら他のプレイヤーたちはどうなるのか、という提案だった。
「やめておけ」
口を挟んだのはKAZ。深刻そうな顔をしている。
「そんなことをしたら誰も脱出できなくなる」
「…そういえばお前、死んだプレイヤーが二周目に入ってきた時、かなりタイムラグあったよな。どうしてたんだ?」
「全く知らないところに飛ばされた。電波も繋がらないし、何か薄暗いしで出るのに苦労した」
KAZは少し身体をこちらに向けて言った。
「そこで見ちまったんだ。『鬼は死んではならない』って内容の文書をな」
「なんでずっと言わなかった?」
「それをする方向に誰も動かなかったからだ」
「他に何か隠してないだろうな」
「…いいや、なにも」
「…」
「…」
「…そうか、それならいい」
先へ進んだ。こんなところで仲間内の口論をしていたって何の生産性もない。
無事アステカを帰還させ、アルトカも続いた。ここまで来るともはや何も怖くなくなってきていた。むしろ、帰還するために彼らに何が起きているのかを知りたかった。そんな好奇心で何を掻き消そうとしているのか自分でもわからなかったが、とにかくそれだけが自分にとって気がかりだった。
カイトがおそらく生還した。
最後の自殺の時にはもう自分が何をすればいいのかはよくわかっていなかった。引き金を引く度に人が一人助かる、それだけだった。
「君で最後だね」
「ああ、君が残る気なんだよな」
「…うん、それがいいと思ったから」
「家族は?」
「もうずっと別居してるよ。お父さんは酒に溺れて病院行き、お母さんはそれで気が狂って殺傷起こして刑務所にいる…」
「…辛いことを思い出させてしまって申し訳ない」
KAZの顔が浮かない表情に見えた。どうせ最後だ、この男と話してみるのも悪くない。
思いきった質問をした。
「あのさ、一つ訊いていいかな」
「何?」
「一周目で自殺したじゃん」
「ああ、そうだな」
「あのときさ、」
「死んでなかったでしょ」
「…」
「あの身体、君じゃなかったよね。それとも君手首切るような感じなの?はたまたあの件でそういうの始めちゃったの?」
「…」
「あの身体がhazeのものだってくらいわかってたよ。そして私たちが来た時ずっと私たちを見ていたことも」
KAZは黙りこくって下を向いていた。呼吸が荒い。
「でも死亡通知は来た…あなた何者なの?」
「……ふふっ」
KAZは笑いだした。満面の笑みで私を見た。
「いやはや、気づいていたか…もう少し巧く細工しておけばよかったかな?」
「…やっぱりお前が…」
「そうだ、君は正しい。言わなくていい。思考は流れ込んできている」
「僕が****だ」
KAZ、もとい****は、その場に腰を下ろした。廊下の壁に寄りかかり、力なく腕をぶら下げた。
「全部僕だ。君たちの家の位置も知ってるし、****として君たちにどうでもいい指令を出し続けたのも僕だ」
「…どうしてこんなことを?」
「こうすることが僕の仕事だ」
「仕事?」
「我らが大日本帝国から与えられた最後の任務だ。僕は誰かに見つけてもらわなくてはならなかった」
彼の周りが少し明るくなった。
二人だけが隔離されてしまったように急に孤独感を感じた。
「だから擬似的な殺し合いを?」
「真偽は帰ればわかるさ」
「…私はどうすればいい?」
「どうにもならない。君は余り駒だ」
「帰れない…ということか?」
「…ちなみに今死んだら向こうで死ぬぞ」
彼は冷たい顔をして言い放った。私が自殺する、という思考も読めているらしい。
「君は僕が憎いだろう?」
「憎しみが無いと言えば嘘になる」
「一つ教えてやろう…」
壁に黒い曲線が這い回る。
「君たちがやったことによって、帰った奴らはみんな死んだぞ」
言葉が出なかった。
死んだ?カイトもタカも、かなちゃんも?生還したんじゃなかったのか?
「片岡は最初に鬼として選んだ。全員生還の正しい方法は鬼が生き残って一人ずつ帰る方法ではない」
「…どう…すればよかった…?」
「今のところ生還できるのは君だけさ」
「待って、私以外は本当に死んじゃったの?」
「ああ、とっくに、な」
怒りが込み上げてきた。
この涼しい顔をしている男を直ちに殺してやりたかった。
殺したい。
こいつにも同じ苦しみを。
銃が手に握られていた。
そう、私はいま殺意の化身。
殺す、こいつを殺す。
意識がなくなった。
「僕を殺せば君は帰れる」
「ただし、呪いは君の中にある」
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日本家屋。
焼け落ちている。
東京に火が降った日。
襖を開ける。
黒く焦げた臭い。
防空壕の階段を見る。
中に声を投げた。
誰もいない。
中に入る。
灯りが消えた。
後ろを見た。
身体中に蟲が這い回る女。
虚ろな濁った目で私を見る。
視界が血染めに消えた。
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目が覚めた。
文字通りに飛び起きた。
目覚まし時計が鳴っている。
「…?」
奇妙な夢を見た。
日付は夢に出た最初の日から1日も進んでおらず、時刻もいつも通り7時。
悪い夢だ。久しぶりにひどく凄まじい夢を見た。最近のストレスのせいか?少なくとも現実ではなかったようだし、あまり気にしないことにしよう。テレビを点ける。
《…次のニュースです。》
《またしても「既読無視」の少年たちの変死体が見つかり…》
…え?
《警察は連続殺人事件の可能性も視野に入れて…》
《犠牲者名
高橋 哲弥さん
新井 加奈子さん
藤浪 憲人さん
佐藤 邦洋さん
片岡 雄輔さん
黒木 綾子さん
榎本 海渡さん
木田 幸助さん
鹿村 遥さん
石田 真一さん
石崎 和馬さん
龍崎 京平さん》
…あれ?人数が合わない?
夢が本当のことのように思い返され、そう考えることしかできなくなっていた。
…KAZは何で死んでるんだ?
スマホが振動した。
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****{「おわり」]
****{「次の身体を探す」]
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****はまだ生きている。
そして、私は思い出した。
私の家の鍵は、彼らが持っていることを。
私の後頭部から、蟲が滑り落ちた。私に幻覚を見せていたそれが息絶えるのを見た。
そして、私の背後に
「彼」がいたことも。
「次の…身体」
私は絶叫した。
や、やっと終わった…
凡そ一年かかってますからねこれ…うわぁ、仕事の遅さが目立つ…
そしてミステリー要素入れようとしたのが間違いだったなぁ
あんまり面白くならなくてすいません。
よろしければ感想下さい。
ボロクソ言っても構いませんで
それではまた次の小説で…って
あれ?うちの鍵開いてる…?