表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/117

第44話 試みの結果

「マサ! マサ!? どうしただ!?」

 

 ディラスキンさんが体を揺すってくる。

 どうやら転寝うたたねをしていたようだ。

 

「……すみません。最近忙しかったので……ちょっとボーっとしてました」

「今日は帰れ! あとはオラがやっとくだ」

「……分かりました。お願いします」

 

 俺は支度をし、工房を後にする。


 

 

 

 館に向かい、街中を歩いてる。

 あれから……大体2カ月が経過した。

 街並みは激変し、人はせわしなく行き交っている。

 人口は7000~8000人くらいまで増加した。観光客を入れれば1万は越えるだろう。


 クレープの甘い匂いが漂ってくる

 いい匂いだ! 甘くて香ばしくて食欲を誘ういい匂いだ!


 お店には、今日もたくさんお客さんが並んいる。まさに長蛇の列だ。

 大半は女性客が占め、ほとんどがリピーターである。

 中には面白半分で並んでいる人たちもいるが――そういう人たちは一目で分かる。あまりの待ち時間の長さにブーブー文句を言っているからだ。

 でも一口食べれば……あまりの旨さに足をバタつかせながら踊りだす!

 結果的にそれが、客が客を呼ぶ噂となっているのだ。


 客たちのお目当ては、季節限定、数量限定の『イチゴクレープ』だ。

 原材料の関係で限定の商品となっている。

 希少な上に旨いと来る。病み付きになる客を絶賛量産中なのである。




 中身は生クリーム、イチゴ、コーンフレーク、チョコレートソース、色付けしたシュガーチップがトッピングされている。

 生地は、小麦粉をベースとしたクレープ用の小麦粉である。


 『イチゴチョコレートミックス』とでも表示したい所だが、意図的に表示を簡略化している。

 分かり易い表示にするためでもあるが、秘匿性を保つためでもある。


 ――秘匿の一つが『チョコレート』

 アンバーさんが見つけてきた木から取れた。


 チョコレートの製法も独特だ。

 実は白くてネバネバしている。それを香りの強い葉で包み数日間熟成させる。その後、天日干しにする。

 日光で色が黒くなると、それを粉末化して砂糖と絡めてチョコレートとなる。


 現世では化学的に作られる工程だが、手間を掛けることで比較にならない旨さを引き出している。

 ハッキリ言って――専門店で売られているチョコより旨い!

 意外と知られていないが、チョコレートは熟成工程で味が変わるのだ。

 この世界では珍しい部類の食べ物だから、余計に反響も大きいというわけだ。


 ――もう一つは『クレープ生地』

 製粉作業は家庭ごと店ごとに行っていた。

 それでは味に差が出てしまうので、関連の店で扱う小麦粉をまとめて製粉化する工場を作ったのだ。

 ただ製粉するだけでなく品質にもこだわり、最高品質の小麦粉に仕上げた。

 さらに各店の商品ごとに材料を混合し、配合作業を一手に受け持っている。

 味を均一にできる上に情報秘匿も行える。中間マージンを考えれば、一石三鳥なのだ。


 もちろん警備は厳重だ。

 同じ過ちは繰り返したくないし、街の活性化のための切り札とも言えるからだ。




 美味しそうな匂いに負け、ケーキを買う。

 俺が買ったのはミルフィーユやチェリーパイ、ショートケーキなどである。

 これを作ったのもリトーネさんだ。


 やっぱり俺の見立ては間違っていなかった。

 リトーネさんはパテシエとしての才能もあった。

 経験と感性だけで独創的な料理を作りだすオールラウンダータイプの料理人だった。


 甘い物以外にも新食感のパンやホットドック、ピッツァなどを作り上げた。

 基本は軽食を主体に開発し、レストランなど料理屋は独自色を打ち出す方針にしてある。

 なので、街には色取り取りの料理が溢れ返っている。





 まだ営業時間には早いが、酒場ゾーンに入った。

 ここは主に居酒屋やBARなど、水商売を中心とする店が立ち並ぶ。

 夜になると開店し、完全に夜の街になる。


 昼間営業している飲食店もそうだが、すべての店舗は許可制にした。

 そして種別ごとに営業ゾーンを分けている。

 理由は、差別化を図るためだ。


 ――この政策変更には、猛烈な店主たちの反対があった。

 かなり厳しい規則なので当然の反応なのだ。

 しかし、俺たちの事業がうまく行きだすと渋々ながら賛同者が増えた。

 

 まぁ簡単な理由だ。

 俺たちの店ばかりが儲かって、一種の独占状態になっているからである。

 参加には厳しい規則を義務付けられる。


 規則は――

 売上の管理を徹底させ、財務官の命令いかんでは開示しなくてはならないこと。

 通常とは違った高い税法が適用されること。

 非合法な商品を扱ったり秘匿情報を漏洩した場合、最高死刑が執行されること。

 届け出がなかったり書類に不備があった場合、営業停止および高額な罰金が科されること。


 などなど、かなり無理を押しつける規則なのだ。


 その代わり――

 ゾーン分けにより有名店の近くで営業でき、客が呼び込み易いこと。

 衛兵と自衛団の支援が受けられ、荒事から店を守れること。

 領主から店舗変えの補助金が出ること。

 経営の知識や、算術のできる人材を将来的に紹介してもらえること。

 新レシピの提供や、ミックス粉を買える権利。


 など、知識面や資材面での援助が受けられる。

 まぁ、一種のフランチャイズと思ってもらえば分かり易いだろう。




 知り合いのお姉ちゃんがヒラヒラと寄ってくる――ヤ、ヤバイ!

 

「ユキちゃ~ん! ねえ、私たちといいことしない?」

 

 クリクリと俺の乳首をコネまわす。

 

「ま、また今度――って! ソコは駄目! 触らないでください!」

「(もぉこんなに大きいわよぉ? サービスするから、ね? どぉ?)」

 

 豊満な体を押し付け、俺の股間をいじくり回し、上目遣いで誘ってくる。

 

「メ、メルディと離婚したらお願いします!」

「やーよ! 今すぐベットに……」

 

 グイグイと引っ張られるが、最近こういう扱いが多くて困る。

 お金はいらないとか……。

 お金を払ってでも抱きたいとか……。

 訳が分からないアタックをしょっちゅう受ける。

 

 魅力的な提案ではあるが……だが断る!

 俺の性欲は全部メルディのためのものだ!

 これがマイルールなのだ!





 館が見えてくると、衛兵さんたちが寝むそうに門番をしている。

 衛兵たちが眠くなるのも分かる。

 治安は以前にも増して良くなったからだ。

 

 俺が提案したのは、裏道に砂利を敷き詰め足音で人気ひとけが分かるようにした。

 住民には夜の通行を規制させ、近隣の住民同士での連絡会を設けた。

 ゾーン分けにより警備範囲が狭まり連絡会との連携もあって、頻発していた物取りは壊滅した。

 

 壊滅とは、文字通り『壊滅』である。

 自白剤を開発し、捕らえた犯罪者から問答無用で情報を吐かせた。

 その結果を元に拠点をすべて撃破したのだ。


 街から物取りがいなくなり、治安が高い基準で維持されるようになった。

 勢いに乗って、近隣の町にも同様の処置を行った。

 町ごとに士爵などがいたが、実績と男爵様の威光を借りて強引に提案を受け入れてもらった。

 結果、近隣の町も含めて治安が安定している。


 街道も同様だ。

 ジールさんたちのおかげで、主要な経路の野盗はすべて一掃されている。

 

 たった2カ月だが、劇的な変化を遂げたのだ。

 

 

 

 

 館の隣には学校を併設した。

 急造ではあるが、今では100人程の生徒がいる。

 

 生徒が増えたのでコース分けも行った。

 基礎学習コース、執務官コース、料理人コース、商人コースである。


 ――基礎学習コースはメルディが担当している。

 基礎的な語学と算術を教える。


 ――執務官コースは男爵様と執事さんが担当。

 執務官候補の生徒が集まっている。


 ――料理コースはリトーネさんたち料理人が担当。

 料理人も免許制になったので、子供だけでなく大人もいる


 ――商人コースは主に俺が担当している。

 今は生徒数も少ないしやることが山積みなので、執務官コースと合同授業となっている。


 今は4コースではあるが、職種の多様化に合わせ専門的な教育を施して行く予定だ。




 執務官コースの教室を覗いてみると……やっぱり!

 

「いや、これだけの経済成長率だ! 今は事業拡大の時期なんだよ!」

「ちげーだろ! 数値だけ見ても意味がねーんだよ! 経営側の問題を無視するんじゃねえ!」

「僕は両方大事だと思うよ。無理な開発は人員不足になったり貧富の差に繋がると思う。お金を稼ぐのは重要だけど、貧富の差を無くす政策を考えるべきだよ」

 

 セイル、ジェガ、ラギスが口論している。

 歳に見合わない口論ではあるが……これでも平常運転といったところだ。

 

 今、彼らが協議しているのは『街の成長戦略』である。

 これは形式的なものではなく、実際的な授業である。良い案が出れば領地改革にも採用される。

 具体性を持った授業だからこそ、討論が熱くなってしまうのだ。

 

 先生を担当している男爵様も困っているようだ。

 3人の元に行き声を掛ける。

 

「またやってるね」

「あ! マサユキさん、お疲れ様です」

「オツカレーッス!」

「お疲れ様です」

「熱心なのは分かるけど――討論というのは、自分の意見を押し通すことじゃないよ。相手の考えを受け入れることから始めないとね。その上で客観的な意見を交えて、先にある問題点を明らかにすることが肝心なんだ。そこまで来て初めて『正当性』を評価できると思う。同じ題材なんだから、そもそも揉める理由はないはずだよ? 君たちならできるはずだ」

 

 3人とも黙るが……表情から納得がいってないようだ。

 

「君たちは『事業拡大=儲かる』って考えてる?」

「そうです! 今は人の流入も多くなってますし、これを機に事業拡大すべきです!」

「だ・か・ら! お前は金しか見えてねーのかよ!?」

「貧富の差の改善が重要だよ!」

「なあいいか? ここまで街が活性化したのは『客層のニーズ』と『戦略』がマッチしていたからだ。ニーズは人の数に比例はするが、店が増えれば客の取り合いにもなる。それでは潰れてしまう店も出る。それと格差の改善は金を出せば解決する問題じゃない。働く場があるかということだ。成功した理由とバランスが大事だと思うぞ?」

 

 再び3人は黙り込む。

 

「目先の金に飛びついているようじゃ……まだまだ先が思いやられますよね? 閣下?」

「そうだな。ここまでの結果を出せたのは、マサユキ殿の機転のおかげだ。そちたちはその結果に踊っているに過ぎんな」

 

 3人はヘコみ、言い返せないようだ。

 

「例えるなら……この箱だ。中にはケーキが入っている。領地を箱としたら――」

「おい、黒髪!」

 

 ガルアが教室に入って来て、強引に俺を引っ張っていく。

 

「おいおい、どうしたんだ?」

「見つかったんだよ」

「何が?」

「例の盗賊だ」

「ジャガイモの件か?」

「……恐らくな」

 

 後を男爵様に任せ、俺たちはシドさんのアジトに向かう。

 

 

 

 

 シドさんのアジトに着く。

 部屋には犯人と思われる男たちが捕らえられ、既に拷問された後のようだ。

 男たちはぐったりし、体には無数の拷問の痕が残っている。

 

「シドさん、状況は?」

「強情なやつらでな……。なかなか情報を吐かねえぜ」

「自白剤を使いましょう」

 

 鞄から自白剤の入った瓶を取り出す。

 注射器で液を吸い出し、リーダーらしい男に注射する。

 

 自白剤はアクトバーさんと開発した。

 自白剤というと、映画の拷問シーンくらいしか出てこないだろう。

 成分も当然公開されていないだろうし、俺も知らない。

 だから、薬の知識があるアクトバーさんに協力してもらい、幻覚作用のある植物から自白剤を生成した。

 

 その植物というのは……『麻薬』だ。

 麻薬と言っても使い方次第では麻酔薬にも使われる。

 例に挙げるならモルヒネだろう。

 とまぁ、それを応用し自白剤を作り上げたのだ。

 

 依存症に陥らないよう配慮しているが、現時点では完璧には程遠い。

 領主という後ろ盾がなければ、犯罪行為スレスレなのだ。

 

 

 

 

 自白剤を投与した男がフラフラし始めた。

 どうやら自白剤が効き始めたようだ。

 シドさんが尋問を始める。

 

「おい! お前がジャガイモを盗んだんだな!?」

「……ジャイモ?」

「ジャ・ガ・イモだ! コレのことだ!」

 

 そう言って、ジャガイモを見せ付ける。

 

「それ旨い……」

「だれの指示だ!?」

「……姉さん……」

「そいつは誰だ!?」

「…………ローズ」

「ロ、ローズだと!?」

 

 シドさんの表情が強張る!

 

「ローズとは何者なんですか?」

「……あ、ああ。極悪野郎の名だ。帝国を恐怖に底に陥れたという極悪人の名だ。やつらが動いてるとなると……」

「何が問題なんです?」

「奴らは半端じゃねえ! キチガイの集まりだ! 強盗、強姦、殺人、拉致、なんでもやりやがる! ボヤボヤしてたら奇襲されるぞ!?」

「どれくらいの規模なんです?」

「ハッキリとは分からねえが……数千とも数万とも言う。こうなってくると……伯爵は関係ない気もしてくるぜ」

「……まぁ聞いてみましょう」

 

 俺は男に質問する。

 

「アジトはどこですか?」

「アジー?……カシェリァ……」

「連絡はどうしてる?」

「……村に帰る……」

「次の連絡はいつだ?」

「……満月……の日」

「フェデルクは知ってるか?」

「……フェ?……知らない」

「商人のフェデルクだ! デブ商人だ!」

「あのデブ! ブヒヒ! ブーブーブヒヒ!」

「頭がハゲてないか?」

「ブヒヒヒ! ……ハゲてる! ブヒヒヒ!」

「笑い声が変だろ?」

「ウヘへ、そうそう変! フェフェとか……ニヒヒヒヒィィイ!」

「お前の名は?」

「……ビトリス……ゴホッ! ゴホゲフ!」

 

 フェデルクというのは、シドさんの部下たちがマークしていた商人だ。

 デブでハゲで「フェッフェ」っと、特徴的な笑い方をする。

 だが……。

 

「シドさん。今の情報から何が読み取れます?」

「ちょっと待ってろ!」

 

 シドさんが地図を広げて確認する。

 

「……あった! カシェリアは伯爵領にある。ここからだと片道5日は掛かるな。満月となると……半月後か!? とすると……ひと月後には襲ってくる可能性があるな。これで確定だ!」

「シドさん。俺の見解では伯爵との関連性は確定してません。フェデルクを捕らえて吐かせる他ないですね」

「クッ! ……作戦はどうする? 相手は数千以上だぜ?」

「そうですね……情報が足らないです。こいつらから情報を引き出すしかないと思いますが、伯爵領だと手が出しにくくありません?」

「だな! こちらには口実はあるが、伯爵領で暴れるとなると……ユイルの立場が危ういな」


 進軍中の敵を奇襲するなら、口実上でも戦略的にも楽だと思う。

 問題は、『先手』を取れるかということだろう。

 

「シドさん。こいつは殺さずに拘留しておきましょう。自殺も考えられるので、常に監視と猿轡さるぐつわをしておいてください」

「分かった! 戦いの準備も急ぐぜ!」

「その前に、閣下に報告しなく……」

 

 その時、男がブツブツと小声で何か喋り出した。

 

「……ジェリ、ス……すま……ちま……」


書式変更を試みましたが、どうでしたでしょうか?

何かあればご意見をお願いします。


1話の修正状況は、ボリューム的に増えてしまったので0話としてプロローグを設けることにしました。

戦闘シーンの追加を行った以外は、内容には基本的に変更ありません。

特に何時に更新するとは伝えられませんが、今日明日中には更新を完了させる予定です。

その後の修正は随時更新という感じです。


最新話は・・・来週の月曜日にでも1本出しましょうか。

無駄に更新間隔空けたくないという理由もありますが、終わり方が気持ち悪いですよね?


一応予定ですが、月曜日2014/6/23/10時頃更新します。

あわわわ、更新遅れました。

今日も1日頑張りましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ