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第40話 子供の喧嘩とズルイ取引

秘密会議が終わり、皆それぞれの仕事に向かって行く。


「さて、俺はどうしようかな・・・」


やる事は分かっている。

問題は、作戦が現時点では空想上の物になっている事だ。


作戦には俺の能力を使う。ただ、俺の能力は不安定だ。

物に対する知識と理解が足らないと十分な力が発揮されない。

使い過ぎれば、長い眠りに陥る危険性もある。


つまり、万能ではあるが効率が要求されるのだ。

特に今回は、規模が大きい。


あれもこれもと力を使えば、すぐにガス欠になる。

自分の限界がどこなのか分かりにくい以上、ホイホイと使える代物ではないのだ。


むしろ、現時点での最大の問題点は、メルディ達にどう説明するかだろう。

みんなあの性格だ。二つ返事で協力してくれるとは思う。

だが・・・本当にそれでいいのだろうか?

説明するかは後で考えるとして、俺は俺で目の前の問題を潰して行くしかないな。


「そういえば・・・」


セイルはちゃんと授業を受けているだろうか?

なんとなく、メルディに叱られているイメージが思い浮かぶ。





様子を見に学校に戻ってみると・・・やっぱり!彼は期待を裏切らない。

セイルが怒鳴り声を上げ、他の子達相手に口喧嘩をしている。

メルディも間に入って止めようと必死だが、どうにも収集が付きそうにない。


「パン!パン!はいはい、みんな。落ち付くんだ」


やっと少しだけ静かになった。


「セイル様。いやセイル。いいかな?」

「・・・はい」

「俺は言ったよね?高圧的な態度はしないようにと」

「・・・はい」

「最初からうまくできると思わないけど、努力が足らないんじゃないかな?」

「聞いてください!こいつらが悪いんだ!」


セイルが男の子達を指差す。

客観的な意見を聞くために、メルディに状況の説明をしてもらう。





「なるほど・・・」


簡単に言うと、悪ガキ3人組だ。

セイルが真面目に授業を受けていたところ、悪ガキ3人がちょっかいを出し始めた。

最初は無視していたようだが、段々とエスカレートし、最後は石を投げ付けたらしい。

で、セイルが怒り出したというわけだ。


「ふむ・・・。これは4人とも退学だな」

「マサユキ殿!それはあんまりだ!」

「んーっと、うちの学校は無料だけど、規律を守らない奴には教えない。やる気の無い奴にも教えない。それに・・・仲間を傷つけるクズはもっといらない。例え、金貨1000枚出されても絶対に教えないよ」

「しかし・・・」

「あ"あ"、ダル!帰ろうぜ!」

「ああ」

「・・・(うん)」


悪ガキ3人組は帰っていく。

セイルは悔しそうな顔をしながら、必死に懇願してくる。


「マサユキ殿!私になんとか授業を受けさせてください!ここでの授業は、将来必要となる知識だ!こんな事で挫けたくない!」

「セイル。君は頼めば、自分だけは授業を受けられると思っているのか?」

「私は授業を受けたい!やりたくない奴は放っておけばいい!」

「つまり・・・彼らを見捨てて自分の正当性を訴えるという事は、将来領主になったとしても、領民を見捨てて自分の保身を優先するつもりなのだな?」

「・・・」


セイルは反論できずに黙り込む。


「一つ提案をしよう。セイルの本気を見せてくれないか?」

「授業を受けられるならやります!」


彼の目を見る。

迷いなく真っ直ぐ見詰める目は、彼の決意を示していた。


「ガルア。ちょっとあいつら連れて来て」

「ニヒヒヒ。おうよ!」





しばらくすると、悪ガキ2人を両手に抱えて帰って来た。

1人は大人しく付いてきた。


「離せ!離せよ!この筋肉バカ!」

「ウガー!」


2人は、引っかいたり噛みついたり酷く暴れている。

俺は彼らの前に立ち、提案を出す。


「ねえ君達?あの世間知らずの坊ちゃんを、気が済むまで殴っていいって言ったらどうする?」

「はあ??」

「あの子は男爵様の息子だけど、学校では身分は関係ないからね。気にせず好きなだけ殴っていいよ」


セイルはその提案に最初は驚いていたが、決意の方が高そうだ。


「ただし、1対1だ!! 1人で殴り合いもできない腰抜けや卑怯者には用が無い!嫌なら逃げ出しても構わない。単にお前達の事を「腰抜け~」とか「卑怯者だ~」とか言い触らすだけだ。・・・いや、お前達のお父さんお母さんの仕事だって無くなるかもしれないね。俺にはそれだけの力がある。さて、どうする?(ニヒ)」

「ズルイぞ!お前こそ卑怯者だ!」

「そうだ!そうだ!」

「僕は殴り合いなんて嫌だよ・・・」

「クラティス、てめえ!こんな卑怯者、ぶっ飛ばしてやりたいと思わねえのか!?」

「そうだ!そうだ!」

「でも・・・」

「うるせえ!!黙れ!!」


ガルアの一喝で、無理やり3人を黙らす。


「もう一度言うけど、セイルと1対1で殴り合いする度胸はあるかい?もし勝ったら、うーん・・・(ニヒ!)金貨1000枚あげるよ。破格の提案だよ?やらない?(ニヒヒ!)」

「マ、マジかよ・・・」

「スゲエ・・・」

「・・・」

「その代わり負けたら、君達のお父さんお母さんの仕事は無くなる。この街にもいられない。この条件でどう?」


悪ガキ達は相談する。

その間にセイルにも確認する。


「セイル。君が勝てば授業を受けさせよう。負ければ・・・」

「金貨1000枚を払えばいいのだな?」

「いや、金貨は俺が負担するよ。これは俺がいい出した事だ。セイルが気にしなくていい。ただし、負けたら例え国王陛下の命令であっても授業は受けさせない!それにジャガイモの栽培も辞めて村に帰るよ。どうだやってみるか?」

「・・・やります!」

「よし!いい返事だ!」


再び、悪ガキ達の元に行く。


「さあ、セイルはやる気だぞ。お前達はどうだ?」

「やるさ!あんなやつに負けるはずがない!」

「よし、いい答えだ!じゃあ、代表者を決めてくれ。そいつが負ければ、連帯責任で全員同じ処分だ」

「俺がやる!」

「分かった」


決闘する事になったのは、ジェガという子だ。

念のために2人が凶器などを持っていないか調べ、地面の石や枝など細かい物まで綺麗に取り除く。

2人を対じさせ、ルールを説明する。


「ルールは簡単。素手で殴り合いをする事。凶器を使ったり、目潰しなど急所への攻撃は即時負けとする。仮に目を潰したら、そいつの目も俺が潰す。判定は俺がする。制限時間はなし。どちらかが参ったと言うまでは終わらない。2人ともこのルールでいいか?」

「問題ない!」

「余裕だぜ!」


そして、2人の長い長い殴り合いが始まった・・・。





決闘を始めて何時間経っただろうか・・・。

そろそろ日も沈みかけ、夕焼けが綺麗だ。


ただ・・・目の前は凄惨の一言だ。

顔はボコボコ。体にはいくつもあざ。それでも2人は殴り合っている。


途中、男爵様が止めに掛かろうとした。

しかし、危険なら即時止める事と、決闘である事を無理やり納得させた。

噂を聞き付け、シドさん達と3人のご両親も駆け付けた。今は様子を見守っている。


一応ご両親には経緯を説明しているが、納得を取り付けるのに苦労した。

まぁ、当然だろう。

俺のやっている事は、倫理的観点から非道とも言える。

そこは認めよう。


しかし、経緯はどうであれ、ちょかいを出した者には罪がある。

そしてセイルには、時期領主としての心構えが足りていない。

2人を納得させるには、決闘で白黒付けてやるしかない。


学校は厳しいと伝えてある。

更にこれは決闘である。

この2つの壁は誰も簡単には崩せない。いわゆる権利の横暴である。

だから、金貨1000枚の報酬か、村に帰るというという代償を支払うのだ。


もっと言えば、目先の金に目が眩み、まんまと契約を交わしてしまった2人が不注意なのだ。

この世界は非情だ。

ズルイ奴はどんな手を使ってでも、襲い掛かってくる。

コレが下らないと思うなら、俺は仕事を辞退してやるつもりなのだ。




そういえば・・・昔俺とガルアもやりあったなぁ。

ガルアはどう思ってるか知らないが、あの勝負はハッキリ言って、俺の負けだと思っている。

2人の殴り合いを見ていると、そんな思い出が出てくる。


殴り合いによる決着は、正直いい手段だとは思っていない。

単に分かり易いからだ。

それに、所詮は子供の殴り合いだ。

プロボクサーが殴り合っているなら危険過ぎるが、俺もガルアも12歳と13歳で殴り合っていた。

危険と分かればすぐ止めるし、今は見守るだけだ。


「さっさと倒れろ!ハアハアハア・・・」

「うるせえ!ぜえぜえぜえ・・・」


終始こんな様子だ。





日が完全に落ち、辺りは暗くなった。

明かりとして篝火かがりびを焚いて、それでも続行する。


2人は何も語らず、ただただ殴り合っている。

顔はさらにボコボコになり、出血もしている。


そして・・・勝負が着いた。

ジェガと呼ばれる男の子がなんとか立っており、セイルが大の字で寝ている。


「俺の勝ちだ!うおおおおおおおおおお!」


だが俺は、


「まだだ!まだ勝負はついてない!どちらか「参った」と言うまでだ!」


そう。これは終わりの無い戦いだ。

負けと認めない限り永続する。

俺の声に反応して、セイルがゆっくり立ち上がる。


「くそおおおお!」


ジェガはセイルを殴り付けるが、拳は外れる。

セイルは避けた勢いでバランスを崩し、また倒れる。

しかし、再び立ち上がろうとする。


「さっさと負けを認めろ!」


セイルは無言で立ち上がる。

何度も何度も、同じ事を繰り返す。


「もうやめろ!負けを認めれば終わるんだ!」

「お、終わらない。私は・・・俺は負けるわけにはいかない!」


セイルは反撃するが、拳は空しく空を切る。


「なぜだ!?」

「俺は・・・将来この領地を治める!逃げ出したら、領主になる資格なんてない!それに・・・」


セイルは息を整える。


「マサユキさんの仕事の邪魔をしたくない。あの人の仕事は領地の未来を左右する。俺が負けて、領民達を苦しめるのだけは嫌だ!!」

「俺だって・・・俺だって負けられねえ!負ければ父ちゃん母ちゃんの仕事がなくなる。タークやクラティスも同じだ!負けられねえ!!」


2人はそう言うと、また殴り合いを始めた。

周りの人もその言葉に納得しているようだが・・・俺への視線が微妙に痛い。

分かってるよ。分かってるって。





長い長い殴り合いの末、2人は倒れている。

そろそろ、いい頃合いだろう。

2人の前に出て、叫ぶ。


「セイル!ジェガ!もう終わりか!?」

「まだだ!」

「このおおおお!」


2人は立ち上がろうとするが、足元が覚束おぼつかない。

俺は、2人に問い掛ける。


「2人に聞く。・・・3つ目の選択肢を聞く気があるか?」

「・・・」

「・・・」


訳の分からない顔をこっちに向けてくる。

ガルアはニヤニヤしている。


「簡単簡単。2人とも負ければいい」

「嫌だ!」

「ふざけるな!」

「だって、2人の殴り合いの原因って俺じゃん。俺がいなければ済む話だろ?」

「今さら逃げるのか!?」

「クソ野郎が!」

「どうなの?3つ目の選択肢は選ぶの?」

「断わる!」

「そんなのいらねえ!」

「フフフハハハハハ!じゃあ・・・4つ目の選択肢だ!仲直りして、2人の勝ちにするならどうだ?」

「・・・」

「・・・」

「どうだ?簡単な事だろ?」


2人は俺を睨んだあと、お互い睨み合う。


「・・・俺はお前に負けたと思わないが・・・お前の勝ちでもいい」

「俺もだ。・・・こんなクソ野郎に騙されたぜ!」


2人は握手はしないものの、納得した答えを出したようだ。

ジェガが思い出したかのように、問い掛けてくる。


「ところでよ。金貨1000枚は貰えるのか?」

「んー。勝利条件満たしてないね。どちらかが「参った」と言って、勝敗が付かないと成立しないね」

「クソ!この嘘つきめ!」

「でもまぁ・・・勝者が2人だからね。2人とも同じ報酬でいいなら、金貨500枚ずつだな」

「お!よっしゃー!」

「俺はいらない」

「なぜだ!?金貨500枚って言ったら大金だぜ?」

「俺は勉強したいだけだ。それ以外望まない」

「・・・クソ!お前がいらないなら、俺もいらん!」


本当に金貨は渡すつもりだったんだが・・・まぁいい。


「分かった。金貨500枚は別の形で渡そう。ちなみにジェガ。お前も授業に出てもらうぞ。セイルの願いは授業を受ける事だからな」

「はあ!?・・・くそ!分かったよ」

「一応言っておくが、授業は無理やり押し付けるものじゃない。本当に必要ないと思うなら受けなくていい。よし!2人とも良くやった!」


男爵様が泣きながら拍手をしている。

周りのみんなも拍手を送る。


「さあ、金貨1000枚分の治療をしようか!ハッハッハッハッハ!」

「お前・・・ほんとエゲツないな・・・」


ガルアが厳しいツッコミを入れてくる。

言い分は分かるけど、そんな事で報酬を無かった事にするつもりはないけどね。

全力で治療するくらいは礼儀だ。


2人を椅子に座らせ、治療を始める。

周りにたくさん人が集まって、治療の様子を覗き込んでいるが・・・気にしないでおこう。




俺の全力治療は異常な回復を見せる。

傍目からは、魔法のようにも見えるのだろう。


止血が終わり、顔の腫れも大分収まった。

口の中も切っていたが、表面の傷はすぐに治った。

料理長さんが気を利かせて、料理を用意してくれたので、集まった人達も含めて宴を始める。





男爵様の館は、いつになく活気がある。

もうすぐ真夜中だというのに・・・シドさんとガルアが飲み比べをしている。

だが・・・もう止めておけ。ガルアの負けだ・・・。


男爵様は上機嫌だ。

セイル達の傷が綺麗に治ったおかげか、もう気にしていないようだ。


会議でハッキリ分かったが、男爵様は俺の能力を知っていた。

この様子だと、知らない人の方が少ない気がしてくる。


まぁ・・・これだけ万能さを発揮すれば、誰だって異変に気付くだろう。

シドさん達にも教えたが、実際能力を目の当たりにすると、目を見開いて納得していた。

まぁいい。気にしたら負けだ。


セイルが隣にやってきた。


「マサユキさん。今日はありがとうございます」

「いい勝負だったよ。最後まで諦めなかったね」

「当たり前です!俺だけの問題じゃないですからね。領民達のために必死でした」

「それでいいんだ。だが、勝負には答えなんてない。たまたま今回は理由があったに過ぎないよ」

「納得はいってませんが・・・元々こういう結果になる予定だったのですか?」

「いや言ったままだよ。セイルが負けてれば村に帰ったし、ジェガに金貨1000枚を払った。セイルが勝ってれば、あの3人は街を出ただろうね」

「・・・き、厳しすぎません?」

「言っただろぉ?俺は厳しいって?」

「フフ・・・アハハハハハハハ!」


子供達がうたた寝を始めたので、宴はお開きとなった。





俺は寝巻に着替え、ベットに横になっている。

隣にはメルディがいる。


「マサユキ様。今日はお疲れさまでした」

「うん、ごめんね。また勝手な事言い出して」

「いつもの事です。でも、良い結果に終わって安心しました」

「本当は、どっちかが勝って終わる予定だったんだ」

「フフフフ。マサユキ様。嘘はいけません。あなた様はそんな事をする人じゃありません。勝っても負けても丸く収めるつもりだったのでしょ?」

「・・・・フフフ。メルディには敵わないなぁ。でも、秘密だよ?」

「ええ。当然ですわ」


メルディに抱き付き、柔らかく温かな感触をゆっくり感じる。

今日はいろいろあり過ぎた。

農地といい、会議といい、学校・・・。

いつの間にか眠ってしまった。


「おやすみなさいませ」


メルディに優しく撫でられながら、俺は静かに寝音を立てる。





眠りから覚めると・・・暑い!!

ベットはふっかふかで気持ちいいが、うだる様な暑さで汗だくだ。

クーラーも扇風機もない部屋なので、余計に暑く感じてしまう。


体を起こし、部屋を見渡す。

やはり今日もメルディの姿はない。

まぁ当然だな・・・。


窓から外を見ると、日は高く昇っている。

授業は・・・外ではやってないようだ。

さすがに、この炎天下で授業はできないよなぁ・・・。


頭をボリボリ掻きながら、寝癖のついた髪を整える。

髪を切ってもらってから、そう時間は経っていないが・・・少し気になるんだよなぁ。

また髪を切ってもらうか。


ふと、机に置かれた鏡に目が行く。

鏡には刺繍の入った布が掛けられている。


布を退けると、平凡で冴えない男の顔が映る。

髪はボッサボサだ。

近くにあったクシで整えるが、寝癖が酷い。

これは・・・無理そうだ。


支度を済ませ、1階に降りる。





1階の食堂では、子供達が授業を受けていた。

食堂のテーブルは大きく、多少人数が多くても問題がないからだろう。


セイルもジェガも他の子達もしっかり授業を受けている。

昨日より人数が増えているが、この調子でいくと食堂に収まりきらない気もする。

やはり、無理をしてでも校舎を建てた方がいいかもしれない。


台所に向かうと、料理人達が昼の仕込みをやっていた。

料理長さんが俺に気付いた。


「やあ、おはよ。準備するからちょっと待っててー」

「ありがとうございます」


椅子を用意してもらい、台所の一角で食事を取る。


料理長さんはリトーネさんと言い、珍しく女性料理長さんだ。

何でも料理好きが高じて、お店を出していたらしい。

そこに噂を聞き付けてやってきた男爵様が、味に惚れて専属料理人として雇う事になった。と言う話だ。


「簡単な物だけど、おいしい?」

「うんうん!超美味しいです!なんて言うか・・・さすがプロ!って感じですね!」

「プロかぁ・・・って、それ何?」

「アハハハ・・・。プロフェッショナルの略で、その分野で生計を立てている仕事人って意味です。リトーネさんの料理は一級品ですよ!」

「フフフフ。私の腕は天下一品だしね!当然でしょ!」


ちょっとダメ元で提案してみる。


「提案なんですが、新しい食材に挑戦してみる気ありません?」

「何何!?どんな料理ができるの!?」

「食い付きいいですね~。ちょっと待っててください」


思いの他いい反応に、俺もビックリしてしまった。

これだけ腕のいい料理人だ。どんな料理ができるか楽しみだ。




袋を担いで帰ってくる。


「これです。ご存知ですか?」

「イモかしら?私の知ってる物とは違うみたいだけど・・・美味しいの?」

「美味しいですよ。薄く切って油で揚げて塩をまぶすと、ポテトチップス。棒状にして揚げれば、ポテトフライ。蒸して潰して野菜と絡めれば、ポテトサラダ。ペースト状にすり潰して、スープにもできますね」

「待って待って!紙に書くから!」


リトーネさんにゆっくり説明し、メモを取ってもらう。


「ふーん・・・毒抜きもいらないなんて、面白い食材ね。何で知ってるの?」

「秘密です」

「や~ん!教えてくれないとかイ・ジ・ワ・ルゥゥウ!フフフフ」


何だろ、この感覚・・・。

リトーネさんは若いし、たまに見せる仕草が可愛い。

体は小さいけど、堂々としている。

料理人というと男ばかりで固いイメージだけど、彼女はまったくそういう雰囲気がない。

どちらかと言えば・・・パテシエな雰囲気だ。


「と、ともかく、これはジャガイモと言って、今度畑で作る予定なんです。大量に作りますので、飲食店の目玉商品にしたいんですよ」

「なるほどね!そこで私の腕を見込んで、お願いって事ね?」

「はい。できれば、簡単には真似できない、サイコーに美味しい料理を作り上げて欲しいんですよ。出来そうですか?」

「まっかせなさ~い!私に出来ない料理なんてないわ!」


周りにいた料理人達から「オー!」という歓声が挙がる。

話をしていて、ある事に気付いた。


「そう言えば、イモに対して警戒心がありませんね?」

「毒イモの事?あれは食べれるわよ?」

「え!?」

「ちょっと手間だけど、毒抜きすれば問題ないわ。問題は味付けなのよ」

「んー、ん、ん、ん?どういった物なのですか?」

「プルプルしてて、味がないのよ。味も浸み込みにくいから、煮込み料理くらいしか使い道がないのよ」

「・・・まさか・・・コンニャクなのか?」

「コンニャク?」

「それって、現物あります!?」

「今はないけど・・・今度作ってあげるわ」

「お願いします!」


まさかアレがコンニャク芋だったとは・・・。

ぬか喜びしたくはないが、もしそうなら意外な食べ物が出来そうな予感がする。


大張り切りのリトーネさんに後を任せ、俺は畑に向かう。

さてさて、世紀の大魔術チートでも使ってやるとするか!


第40話です。

今後の展開で、本当にコンニャク芋かは置いといて。

コンニャク芋は、本当に毒イモらしいです。


シュウ酸カルシウムという毒素があって、生の状態で食べると、口内は爛れ、下痢などを起こすそうです。

摂取し過ぎると、危ない食べ物だそうです。


毒抜きは簡単で、すり潰して茹でて、灰汁を丹念に取ると無害のコンニャクになります。


コンニャク芋の栽培は結構大変みたいです。

収穫までに、3~4年は掛かるそうです。

作中では、短期の話になりそうなので、おそらく栽培まで書けないと思っています。


上の話に関連して、執筆のために色々調べ物をしていると、本当に野菜作りをしたくなってきています。

プランターで野菜作りもいいのですが、何を作ろうかな?

ジャガイモを作るってのもいいですよね。3章のメインがジャガイモですし。


その内、「野菜作りがオモシレー」とか言いだしそうです(笑)


さて次回は、水曜日2014/6/11/7時頃です。

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