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三つ葉テクノロジー株式会社  作者: 秘密結社苺牛乳
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第三章「天才児の革命」

 -2059年04月05日-


 「行ってきます!」


 未香は元気に登校していった。

 中学校生活最後となる3年生。


 「お母さん、姉ちゃん卒業したら就職するの?」


 「何言ってるの一也。高校進学が待ってるわ。それより、20年後から英語が世界共通語になるわ。勉強しておきなさい」


 「そうなんだ。僕、もう喋れるから」


 学校に通えれば、めでたく中学校入学の一也。

 しかし、通う事は無かった。

 時々、大人びた発言をする一也に、佳子は驚きながらも実際に英語なんて喋れるはずが無い。

 そう、子供の言う事は信用できない。


 「お母さん。パソコン欲しい!」


 「パソコンなんて使えないでしょ。どうせゲームなんだから」


 「違うよ!僕が世界を変えるんだ」


 「一也。大きな夢を持つ事は大切で良い事よ。だけど、うちにはそんなお金は無いの」


 佳子は、息子の発言に喜びながらも、パソコンを買い与える事が出来なかった。

 いつの時代になっても家電製品はやはり高い。


 二ヶ月が経った6月。


 「一也!馬鹿なあんたにプレゼントあげるよ。空けてみて」


 未香から突然のプレゼント。

 和也は嬉しそうに梱包を破った。


 「わー!どうしたのこれ?何で姉ちゃんお金持ってるの?」


 中身は、ノートパソコンであった。

 型の古い中古品ではあったが、まだまだ使えそうな代物。


 「ネットは本当に便利だね一也。不要物の貰い手を探すサービス『リサイクルオンリーワン』で無料で頂いたの」


 「タダ!?姉ちゃんありがとう」


 リサイクルをテーマにしたビジネスは、年々その勢いを増している。

 中でも現在注目されているサービス『リサイクルオンリーワン』は、一見変わっている。


 壊れたパソコン、不要になったパソコンを組み合わせカスタムパソコンを製作。

 これらを、無料~低価格で譲ってもらえるとあって人気は急上昇中だ。

 パソコンボディには、広告デザインがかっこよく彫られている。

 広告費で収入を生み出す、新たなデザインビジネスである。


 一也は嬉しそうに毎日のようにキーボードを叩いた。


 そんなある日、突然、大手企業からの電話が。


 「未来創世記JAPAN株式会社の山谷と申します。お宅の一也様とはメールでやり取りさせて頂いたのですが、そちら様の代表者が佳子様と伺い直接ご連絡を致しました」


 佳子は何の事だかさっぱりだった。

 山谷は続けた。


 「お宅の制作されたプログラムを売って頂きたいと思いご連絡しました。一度、お会いできませんか?」


 佳子は、内容をよく理解出来ぬまま、一方的に商談日が決まった。


 「一也、今日電話が来たんだけどあんたなに……」


 「今日来たんだ。お母さんが”ここ”の代表だから行ってきてくれる?詳細は折り合っているからプログラムの譲渡に応じるサインをしてきて」


 そして、商談日当日を迎えた。


 「一也、何してるんだろうね?変なトラブルに巻き込まれなければ良いけど……」


 未香も心配していた。


 「うん……とりあえず行ってくるね。戸締りはしっかりしてね」


 商談が行われるのは、東京にある本社では無く、家に近い埼玉のオフィスとなっていた。

 電車で1時間。バスで10分。

 未来創世記JAPAN株式会社の埼玉オフィスに到着。


 「こちらへどうぞ。お話の方は担当者である”一也”様と折り合っています。プログラムの譲渡について書類のご記入をお願い致します」


 書類が手渡され佳子は驚愕した。

 譲渡について、掲示された額は8000万円。


 「お宅様の所では素敵なものを開発しているのですね。小学から中学で習う勉強が先生無しで行えるなんて画期的で驚きました。そのボリュームにも」


 義務教育で行われる学習プログラムであった。

 パソコン一台あれば学校に通わなくても勉強できる。

 音声システムは当たり前の事、評価システム、レスポンスの面でも申し分ない構築が施されていた。


 「本当に学校が無くなってしまうんじゃないかってくらい大変良く出来ていました。今後ともどうぞよろしくお願い致します」


 未来創世記JAPAN株式会社は大手企業なだけあり、社員の対応もとても良かった。

 佳子は、サインに応じ来た道を帰っていた。


 「何で一也がこんなものを……」


 12才の一也を疑っていた。

 学歴は小学生。専門知識に触れた事も無い子供が作れるはずが無い。


 「一也。一体どうゆう事なのか説明して!」


 「僕、プログラム作ってるんだ。今日も新しいの作ったよ」


 佳子は、混乱しながらも現実を受け止めた。

 話を聞いた未香は、一也を褒め称えた。


 「あんた、やれば出来るじゃん。もう”馬鹿”だなんて言えないね。お姉ちゃんも頑張ろっ!」


 その夜、佳子は未香に相談していた。


 「ねえ、未香。あの子が本当に作ったと思う?きっと何かの間違いよね?」


 「お母さん!私ね。昔、本で読んだんだけど、一度亡くなって息を吹き返した人は特別な能力を持つ事もあるんだって」


 オカルト話を信用する事は出来なかったが、現在、考えられるのは少なくともこれくらいしか無かった。


 -2059年7月02日-


 未来創世記JAPAN株式会社のニュー”アプリ”リリースが特集で放送されていた。

 アプリ『スクールスタディホーム』は、空前の大ヒット。

 これからの”学習”の有り方を大きく変えるものとして、脚光を浴びていた。


 佳子の家庭には、プログラム譲渡金8000万円も入り、今までの貧乏生活を抜け出した。

 しかし、生活風景は荒れ狂う事なく平穏な生活であった。

 子供たちの未来に使うお金として、ほとんどを貯金、積み立てに回しているようだ。


 「お母さん。この書類の空白を記入して出してきてくれる?お願い。あっ!代表取締役社長はお母さんね」


 一也が手渡したのは、会社設立に伴う書類であった。

 『三つ葉テクノロジー株式会社』


 -2059年7月28日-


 佳子は社長となった。

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