罰が当たったのでしょうか。
ガッ、ガシャガシャガシャ……
最後にガシャンと派手な音をたててから、あたりは静寂に包まれた。
「…………嘘でしょ」
先程、校舎のほうからブザーの音が聞こえてきた。
スマホを取り出して、念のため時刻を確認する。しかし、見間違えようもなく8:17と表示されている。
目の前には横たわった自転車たち。
一人の少女の、葛藤が始まる。
──お早う御座います、遅刻したお馬鹿者です。
遅刻の原因? ……二度寝かなぁ。
脳内で一人語りをしながら、この状況をどうするか考える。
駐輪場には少女のほかに誰もいない。当たり前だ、つい先程着席のブザーが鳴ったのだから。
しぃんと静まりかえった駐輪場に、一人の少女が腕組みをして立っている。その様子ははっきりいって異様だった。
さあ、この自転車たちをどうしてくれよう。
一、放置して教室へ行く
二、起こしてから教室へ行く
……起こすのも面倒だが、今教室に行ったところで皆さん絶賛朝読書中のはずだから非常に気まずい。
そうして悩んでいる間にも時間は刻一刻と過ぎていく。
少女はしばらく考えていたが、やがてするりと組んでいた腕をほどいた。
──よし、起こそう。
偉い? いやいやとんでもございません。
ただ単に、私の自転車の左側からドミノ倒しになっている時点で、私が犯人だとばれてしまうので。
あさましい理由で、倒れた自転車のハンドルに手をかける。そして、やっ、と声をかけて起こした。腕力だけで起こすのは意外とつらい。
そこで気になった少女は、ふと顔をあげて、いち、にー、さん、し……と指で自転車を数えはじめた。
一番端まで…………あと八台。
少女は手を下ろすと、はぁと溜め息をついて二台目に手を伸ばした。
「よし、ラストー……」
再びハンドルを掴んだ。九台目となるとさすがに嫌気がさしてくる。
しかも、それはなぜか真っ赤な自転車だった。おまけに掴んだハンドルまでも毒々しい赤。
なんか不気味だなぁと思いながら、くっと自転車を起こす。もうこの動作にも慣れてしまった。
──そろそろホームルームが始まる頃かな。
そう思い、自転車から手を離して鞄を持った、が。
がしゃん。
不吉な音がした。
ばっと振り向くと、つい今手を離した真っ赤な自転車が、さっきとは逆向きに隣の自転車へ寄りかかっていた。
あれ? ────今の赤い自転車、スタンド降りてない。
慌てて伸ばした手も空しく宙を泳いだ。
思わずぎゅっと目をつぶる。
ガシャガシャガシャガシャガシャ……
ガシャン。
おそるおそる目を開けた少女の前には、先程の倍以上の長さのドミノができあがっていた。
呆然とする少女の耳に、ホームルーム開始のブザーが響く。
一番上になった真っ赤な自転車の車輪が、カラカラと笑うように回っていた。




