08 密談の後に
密談が終わったエリカは、少し出てくる、とみぃたんのいる外へと向かった。今後のことが、色々急に決まってしまって、みぃたんとの生活が壊れてしまうのでは、と不安になる。
エリカについて来て、人里まで降りてきてしまったが、本当は森で暮らしていく方がいいのではないか、そんなことも頭を過る。
この格好で出てきたが、大丈夫だろうか?
エヴァから譲り受けた息子さんの服を着て、長い髪は後ろでひとつに括り、服の中に隠してある。一応だてメガネもかけて印象も変えている。
エリックとして、この家にお世話になるからには、女だと気付かれないように隙を見せてはならない。
それにしても、なぜジンは魔法騎士団に入れと言ったのだろう……色々と引っかかることが多すぎる。信頼の置ける人だと思うし、そう信じたいが、エリカが言う『石の遺跡――コンパス』『触ると10歳くらい若返った白い石のこと』『異世界』『二つの月が変だと思ったこと』それと『言葉が通じなかったこと』に異様に反応してた。それも悪い意味で。
このキーワードが、ジンの言う『エリス』に繋がるもの……?
ジンの言う『エリスから来たアイツ』という人物が、何かのキーワードではないだろうか。
「エリス……異世界……宇宙からみたエリスは美しい……エリスは違う星? ……それで科学がきっと進んでいる……?」
エリカは今までの会話を思い出して、自分なりの推測をしてみる。
こうして、改めて情報をまとめてみると、エリスと言う世界は、限られた情報だけでみると、極めて地球に近い印象を受ける……が、エリカからしてみれば、たまたまこの世界に来たエリスの人間が宇宙から自分の星を見たことがあって、そしてあの謎の白い巨石がエリスに関係があるものだとすれば、エリスほど遠い理解の及ばない世界はないのではないかと思った。
エリスはとんでもなく科学の発達した星……?
それでも、ジンからみるエリカとエリスから来た人の印象は似ていたのだろう。
エリスとはこの世界にとってどういう存在なのだろうか?
この国のほとんどの人間はエリスのことを知らないとヴィンセントが話していた……やっぱりこれから自分で調べていくしかなさそうだ。
そんなことを考えながら、みぃたんを探しに村を歩いていた。
あの窓枠にぶつかった後、すぐに会いに行けなかったことが、気になっていた。
酒場の裏にはいないようだったし、何処にいるのだろう?
獲物を狩に行ったのだろうか?
「みぃたん?何処~?」
村の外れまで来たみたが、見当たらない。
「おい、おいってば!」
甲冑さんが立っている。
ありゃ、気が付いたら橋のところまで来ちゃってたか。
「はい、何でしょう?」
笑顔を張り付けて甲冑さんの方を向くエリカ。
甲冑さん、中身入ってたんですね。
「ここから先は、危ないぞ。行かないように」
「はい、わかりました。すみません、僕知らなくて……あの、この辺で白いふわふわな毛に覆われていて、猫に翼がついたような動物みませんでしたか?」
とエリカは問う。
もしかしたら森に行ってるかもしれないし、ここを通ったかもしれない。
「いや、見てないが……その動物、魔従か? 魔従だったらメリーさんの牧場にいっぱいいるぞ?」
(マジュウって何だろう? それってもしかして魔獣ですか? 恐ろしい)
「えーと、そんな恐ろしものじゃないんですけど、むしろかわいいというか……」
「何いってるんだ? お前。とりあえず、早く引き返してくれ、ここから先は侵入禁止だ」
あまり噛み合っていない二人の会話。
「はい、わかりました」
とエリカはその場を引き返した。
「おい、メリーさんの牧場はあっちだぞ!」
と甲冑さんが、示してくれる。
結構優しいな甲冑さんなんて考えながら、エリカはそちらに歩き始めた。
「ありがとう! 甲冑さん」
手を振りお礼を言いながら遠ざかると、遠くで甲冑さんが、ズッコケルのが見えた。
読んでくださりありがとうございます。
仮題『(仮)なんでこうなった』から『君を喚ぶ声』にやっとタイトルを決めることができました。