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君を喚ぶ声  作者: 佳月紫華
第1章 はじまり
19/45

19 コーワン学究院

 大分ハウメアでの生活に慣れてきたエリカは、今日からリーラベルの学究院へ通うことになった。

 ハウメアの常識が全くないエリカの為に、一般教養や広く知られている歴史を学ぶためだ。魔法や武術はエヴァとジンから教えてもらっているので、学究院は定時制、パートタイムと言おうか、必要な授業だけを選択して短期で修了するというかたちのコースを選んだ。

 リーラベルのクレアモント通りを進み、街中よりも少し郊外に出たところにコーワン学究院はあった。 白いレンガ造りの大きな古めかしい教会のような建物が、中庭や校庭の緑々とした芝生に映えて、とても美しい学校だ。

「ここがコーワン学究院か」

 エリカはみぃたんを学校の飼育小屋に預け、レセプションルームへと入っていく。

「あの、今日からここで勉強することになっているエリック・カスティリオーニですが……」

 受付の女性に話しかける。

「エリック、エリック、エリック……ああ、ル・カスティリオーニね。この羊皮紙に記入を。書き終わったら、突き当たりの部屋へ行ってね。学力試験を行います」 

「わかりました」

 エリカは言われた通りに羊皮紙に名前や住所、年齢などを記入していく。

 試験が行われる部屋へ行くと、少し年齢に幅があるのか10代前半から後半位の人まで様々いる。ハウメアの教育はどのような仕組みになっているのだろう?

 エヴァに少し尋ねたことがあるが、このヴァレンディア王国では学校で学ぶ人や、家庭教師をつけて家で学ぶ人など様々らしい。途中から家庭教師を辞め学校へ通う人や、その逆もあるようなので、学校に途中から入る人には、学力試験をしてクラス分けをするのが一般的らしい。

 だから年齢とか関係ないんだな、と一人納得するエリカは、前に座っている少しだけ年上らしく見える人物によって思考を遮られた。

「なぁ、俺学校に通うのはじめてなんだ。俺はモーリー・ビンデバルト。よろしくな」

「エリック・カスティリオーニだ。こちらこそよろしくな」

 そう言って二人は握手を交わした。

 しばらくモーリーと話していたが、先生らしい恰幅のいいおばさんが入って来る。

「はい、今日からここで学ばれる新期生の皆さん、全日制の人も、選択制の人も、今日は同じ試験をしていただきます。羊皮紙を配るので、始めてください」

 そう言うと一斉に皆の机の上に羊皮紙が現れた。魔法だ。

 羊皮紙には国語であるヴァレンディア語、数学、古語、生物学、薬学、歴史の問題が並んでいた。

(うーん、国語、数学、古語まではなんとかなるかもしれない。問題は後の三つだ……歴史に関しては全くわからない)

 エリカの持っている貴石は、故人の能力――言葉や、魔法に関しては助けになるが、知識などは与えてはくれない。まぁ、ヴァレンディア語や古語もわかるのはとても有り難いが……。

 出来るところだけでもやろうと、エリカは問題を解いていった。

 数学は、この世界の数学は遅れているのか、理数系の苦手なエリカにも解ける問題ばかりだった。一応文系だが、二回も大学に通っていた身だ。出来なくてはおかしいが……。

 生物学も意外と出来たことに驚いた。魔従キャロやドラゴン、魔物についての問題はさっぱりだったが、しかし地球と共通の生物や植物もたくさんあることがわかった。ファンタジー小説などに出てくる魔物やマンドレイクなどの植物も存在することを知って、驚愕を隠せなかった。エリカの知っている架空のファンタジーの産物がその通りの設定であればいいのだが……そうすれば、生物もなんとかなるかもしれない。

 薬学は若干知っているハーブの用法を除いては全滅だった。これはこれから覚えていかなくては。

 歴史は……これは説明するまでもないだろう。全滅だ。白紙のまま提出した。

 ようやく試験が終わったエリカは、羊皮紙を魔法で提出して席を立つ。

 中庭に出ると、先に終わっていたモーリーがエリカの姿を見つけ駆け寄って来る。

「試験どうだった?」

 そう尋ねるモーリーにエリカはにやりと笑う。

「国語と古語、数学はたぶん大丈夫だと思う。生物は微妙かな。薬学と歴史はお手上げだ」

「はぁ、俺は古語がさっぱりだった。昔から苦手なんだ。だから魔法も苦手で……昨日の魔法の試験は散々だったよ。エリック、昨日はいなかったみたいだけど君は選択制なの?」

「そう、僕、選択制なんだ。魔法や武術は家庭教師に習ってる」

「俺は、ずっと家庭教師に習ってきたんだけど、あまりにも魔法が上達しないからって、学究院に通うことになったんだ」

 エリカとモーリーが話していると、中庭に続々と生徒が出てくる。どうやら試験が終わったらしい。

 試験の結果、クラス分けをするが、発表は明日になるらしい。今日はこのまま解散だ。

「なぁ、この後どうするんだ? 何も予定がないなら帰りに俺んち寄っていかないか?」

 そういうモーリーの誘いにエリカは無断外泊したこの間のように予定外に帰りが遅くなるのは避けようと思い、渋々断った。

「僕んちスビアコ村なんだ。ちょっと遠いから、家族に言ってからじゃないと寄り道あんまり出来ないんだ。また誘ってよ」

「そっかー。残念だけど、スビアコなら遠いから連絡なかなか取れないもんな。また誘うよ」

 モーリーと別れたエリカは、飼育小屋にみぃたんを迎えに行く。

「帰るよ」

「みぃー」

 そう言えば、ウィルはいるだろうか? と思い、少しだけリーラベルの酒場に寄ってみることにした。

 酒場にはいないようだ。まぁ、旅をしているようだったから、もうどこかに旅立ったのかもしれない。 酒場に併設してある商人ギルドの掲示板を少し見てみようと近づいていくと、エリカに宛てられたと思われるメモが貼ってあった。

 

 飲んだくれのエリックへ

 休暇が終わったから王都に戻る。

 来月の建国記念長期休暇にまた

 この町に来る予定だ。

 その時はまた飲もう。

         ウィル


「……来月、長期休暇があるんだ。ジンたちに聞いて何も予定がなかったら来てみよう」

 そう呟くとエリカは、そのメモを引っ張り鞄に突っ込んだ。

読んでくださりありがとうございます。

感想や、意見なども気軽に書いていただけたらうれしいです。

参考にしていきたいとおもいます!



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