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第1話・冬の初めを告げる白 ~漸く貰った証のグレー~

第2章 幻影人形ビジョン・ドールが穿つのは



      第1話・冬の初めを告げる白 ~漸く貰った証のグレー~



 空気が、ここ数日で一気に冷え込んできたなと思っていたら、今年初めての霜が降りていた。



 もうすぐ本格的に冬が来る。



 エスパルダ聖皇国は例年、深い雪に長く閉ざされ、春から夏、そして秋までがあっという間に過ぎていく。



 この世界には、四柱の神々が存在し、それぞれ一柱ずつが一つずつ大陸の守護を担っているといわれている。



 他の大陸を守護するという神々のことはほとんどわかっていないが、全く同じ性質を持つ神は存在しないらしい。



 その中でも、このインフォース大陸を守護するのは女神であり、神々が定めた決めごとに則って世界が運用されているのかを見守っているのだという。



 女神・ディエルは公正を司り、その秩序を守るため、自ら戦場を駆ける戦女神。



 夜明けの女神でもあり、裁きの女神でもある。



 その性質ゆえにか、実は白魔法にも強力な攻撃魔法が存在していて、魔物や魔族に対しては時に黒魔法を使うよりも大きな効果をもたらすことができる。



 ディエルは暁の女王。春を告げる東方の女神。ぬくもり宿し、命を育む火の女神。



 だから冬は、女神の加護が最も弱くなる春待ちの季節。



 命の再生と新生を待つ、眠りの季節。



 皇宮呪師学校の、普段は閉鎖され、出入りが禁じられている特別な訓練場には、インスの他に、皇宮呪師学校の校長であるディオネラと……アインの知らない、神官呪師の男性が一人。



 そして、それぞれに護衛官が付いてきていて、合計で八人がその場に集まっていた。



「こんにちは。アイン君」



 神殿から神殿護衛官に付き添われて皇宮を訪れ、ディオネラに案内されてここに連れてこられたアインに、ふわりと微笑みかけたインスを見て、緊張で強張っていたアインの表情がほんの少し緩む。



「こんにちは。インス様……今日は、よろしくお願いします」



 ぺこりと一礼したアインに、はいと頷いて、インスはアインが一瞬戸惑いを見せた相手を手招く。



「皇宮内神殿の医務殿を預かっているウスニー=メンテだ……多分、挨拶をしたことはなかったな? お前が一時期皇宮医務殿に入院していた時には私が担当していた」



 挨拶されて、アインもアッと思い出す。



 ジャンヌたちが神剣の力を使えるように訓練をすることになって、そこに授業の一環としても参加したアインが、途中で意識を失ってしまい、事情聴取をしたいからと主神殿ではなく皇宮の神殿に付属した医務殿に入院していたことがあった。



 意識を取り戻してすぐにインスと二人、赤い光が描き出した魔法陣によってどこかに……後から聞いた話によれば皇都西方にある旧都の廃離宮だったらしい……連れ込まれてしまったため、ほんの一瞬、病室を覗き込んだウスニーとはすれ違うような会い方しかできなくて、だからアインの記憶からも言われるまで浮かんでこなかった。



「その節は、色々とご迷惑を……」


「お前に迷惑をかけられた覚えはないな……どちらかというと、いつも迷惑をかけられているのはインスの方にだ」



 改めて頭を下げたアインを遮って、憮然とした表情で言うウスニーに呆気にとられる。



「酷いですねぇ……。私だって、好きで医務殿に行くわけでもないのに……」


「その割に、お前ほど頻繁に担ぎ込まれてるやつも少ないけれどな……」



 言葉もなく二人を見比べるアインを前に、軽く応酬し合う。



 その、気安げな様子から、何だかんだ言って二人が親しげであるのが見て取れた。



「お二人とも。そのくらいで」



 まだまだ続きそうではあったが、そこでディオネラが口を挟んで止める。



 今日の目的はアインの最初の授業だ。



「ああ。そうでした……。ウスニーさんにご参加いただくことになったのは、途中で体調不良などを起こした時に迅速な対応をお願いするためです。神殿側にも皇宮側にも許可はとってありますから、心配はいりませんよ……それにしても……」



 にこりと笑って告げたインスが、改めてアインの姿を上から下までじっと見つめる。



「……………」



 居心地悪そうにもじもじとするアインが着ているのはこれまでと同じ、神官呪師見習いのグレーのローブ。



 けれど、これまでと違って、きちんとサイズが合っている。



「……制服。できたんですね」


「……えっと……はい……」



 ふわりと微笑むインスに、ちょっと恥ずかしそうに頷いたアインもはにかむような笑顔を見せる。



 呪師学校の入学年齢は十三歳以上。



 対してアインはどう贔屓目に見ても五歳には満たない体格。



 当然、サイズの合う制服の予備などあるはずもなく……これまでは一番小さいサイズの制服の、裾や袖を折り曲げ、紐で縛って何とか着られるようにしていた。



 けれど、保護されてからそろそろ三か月ほど。



 漸くサイズの合った制服が出来上がってきたようで、今日着ているのはその真新しいローブ。



 神官呪師見習い初年生の、男児用の制服を着た……



(((((((……どこからどう見ても絶世の美少女……)))))))



 大人たちの心の声が一致していることなど知らず、じっと見つめられて恥ずかしそうにしているアインがかわいらしい。



 けれど……



(……これから、私はこの子を泣かせてしまうのですね……)



 フッとよぎった思考を振り払うように、インスは改めてにこりと笑いかける。



「それでは、そろそろ始めましょうか?」


「……ぁ……。はい。よろしくお願いします……」



 言われて、ハッと表情を引き締めたアインは真剣な顔で頷いた。


第2章第1話をお読みいただきありがとうございます!


いよいよ復帰後初の授業が始まります。


特別な室内訓練場に集められた大人たちと、緊張した面持ちでやってきたアイン。


インスとウスニーの遠慮のない軽口の応酬や、ようやくピッタリのサイズの制服をもらえてはにかむアインの姿など、一見するととても穏やかで温かい時間が流れています。


しかし、インスの胸によぎった「これから、私はこの子を泣かせてしまうのですね」という悲壮な思いが、これから始まる授業の過酷さを静かに物語っています。


いよいよ幕を開けるインス主導の実践授業。


彼はアインに何をさせるのか?


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【番外編・第3弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞③~重なり合うのは悪意おもいの欠片~

(https://ncode.syosetu.com/n5078lu/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第4弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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