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第4話・罪の重さを自覚する ~悪意の残した傷の跡~

第1章 聖皇国を襲った事実



       第4話・罪の重さを自覚する ~悪意の残した傷の跡~



 アインは、抜き取られた心の宝石を呪いの魔剣の制御のために使われていた。



 その上で、抜け殻の体の感覚までもを()()させられていて、インスが使った魔法の余波で焼け焦げた床の熱も。



 持たされたナイフの重みも。



 ジャンヌを刺した時の手ごたえも。



 浴びた血の温度も。



 そのすべてを『知って』いて、覚えていた。



 起きた出来事の、何一つとして欠けることなく記憶しており。



 自分の体感としてすべてを覚えており。



 けれど起こした奇跡は「ただそうなっただけ。」でしかなく。



 己の意図したものでも何でもないと、その功績に関しては認めようとしない。



 ジャンヌたちが神剣の意思を具現化させ、魔族と最後の一戦を交わそうと決意を固めた時。



 魔族はアインを自身の目の前に移動させ、その首筋に呪いの魔剣をあてがって人質にしたらしい。



 そこで、奪われた心の宝石と、抜け殻になった体の距離が近くなったおかげか、アインの心の宝石がはめ込まれていた魔剣の鍔から弾け飛んだ。



 その結果、心を取り戻したアインが倒れかかったところを、ファンが放った光の刃が掠めていき。



 具現した神剣の意思が放った光る刃で魔族は貫かれ、姿を消したのだという。



 倒しきれたのか否かは定かではないが、その戦闘の現場となった皇都西方にある旧都の廃離宮。



 更に西の端にある小島に建てられた監獄塔の一階部分には、その時の戦闘の余波で残された濃密な魔力が滞留し、人が近づけば発狂するか操られるかという魔窟と化している。



 そこの調査を皇宮呪師長こうぐうじゅしちょうから命じられているのがインスで、過去二回の訪問で二回とも死にかけるような重傷を負っていた。



「アイン君が、あの絶望的な状況から後遺症もなく……まあ、左腕の怪我は別としてですけれど……とにかく生還し、かつその精神が、すべてを知っていて、覚えているのに正常に保たれたままである理由は、神剣がアイン君を『生かすために』守っているのではないかと私は考えています」



 皇宮呪師としての授業を受けるアインの、その授業に神官呪師しんかんじゅしであるウスニーの同席を求める理由は腕の怪我もあってのこと。



 けれど、他にも気になる点があり、今度はそれに関してインスは話を続ける。



 あれほど凄惨な経験をして、まだほんの五歳ほどの……もしかしたら、それよりももっと幼いかもしれない子供が、狂うでも忘却するでもなく。



 すべてをきちんと『自分ごと』として覚えているにもかかわらず。



 心肺停止の仮死状態となって、それなりに時間が経ってからしか治療を受けられなかったにもかかわらず。



 アインにはこれといった後遺症もなく、精神も正常に保たれたまま。



 その、不自然な状態に神剣が関係している可能性に気づいたのはインスだった。



「そして、そうまでして神剣がアイン君を『生かそう』とするのには何か理由があるはずで……私は今、この国に……もしかすると、この大陸全土でみても……水の神剣の使い手になれる存在が、アイン君以外には居ないせいではないかと思っています」


「「……………」」



 伝えられた可能性。



 そして、それを裏付けるかのような現状に、ウスニーもディオネラも顔色が青いを通り越して白くなっていく。



「……インゼラ大神官だいしんかんからお聞きしたのですが……」


「ちょっと待て!」



 そっと、一息つくように呼吸したインスをウスニーが止める。



「神剣の封印が解かれた時、天使が姿を現したそうです。『この地の封じを解いてはならない。使い手に足る者よ。疾く、疾く。契約を』そう言ったそうです」


「待てと言っただろう!!」



 無視して続けたインスに、頭を掻き毟るようにしてウスニーは怒鳴り散らし、ディオネラはもう半分魂を飛ばしている。



「コレを私一人が背負って授業をしろと?」


「分かるけどなぁ!! 分かるけどやめろ!!」



 無になって言うインスに、喚くように理解はできるがやめて欲しかったとウスニーは返す。



「……最悪。アイン君が自我を喪失するまで追い込まれれば、神剣がその体を器としてつかう可能性があります……」



 けれど……。とインスは重い溜め息を漏らした。



「……明日行う()()は、その最悪にアイン君を追い込んでしまうかもしれません……」



 俯いて額を押さえたインスの唇から、掠れた声が零れ落ちる。



「……ラント呪師。明日の授業では、何をさせるつもりなのですか?」



 それを聞いて、魂を飛ばしかかっていたディオネラが問いただす。



 ここまですべてが現状の確認と、現状から導き出された可能性。



 その、すべてを知っている筈のインスが、それでもアインに課そうとしている授業の内容。



 それを、事前に伝えるための集まりであったことを思い出す。



 頭を抱えていたウスニーも口を閉ざし、インスを見る。



 ゆっくりと、深く呼吸を吐き出したインスは……



「……幻影人形……」


「「……っ……!?」」



 囁くように告げられた、その一言で二人は察する。



 影人形が黒い影のような魔物の姿を形取らせた訓練用の人形創造魔法であるのに対し。



 幻影人形はより()()に即した、模擬戦闘で使われる人形創造魔法。



 影人形が基本的には生徒に実害を与えないのに対し、幻影人形は精神的なダメージを与える『ダメージ判定』という効果がある。



 この、ダメージ判定効果で実戦で戦った時に受けた損害……負傷の度合いを計り、戦闘不能と判断されるほどのダメージを受けた生徒が模擬戦闘から脱落していく。



 中には、戦闘不能どころか死亡判定を受けるほどのダメージを与えられてしまう場合もあり、幻影人形を使う側も、幻影人形と戦う側も、本当の戦闘さながらの緊張感を強いられる。



「……と言っても、幻影人形に攻撃させるのはアイン君に、ではないんですけれどね……」



 溜め息を吐いて続けたインスの言葉に二人は眉を顰める。



 アインの攻撃魔法の実践授業で幻影人形を使うのに、攻撃対象がアインではないというのはどういう意味なのか?



 疑問を隠しもしない二人に向かって、淡々とされたインスの説明に……



 聞くにしたがって渋面を作ったウスニーとディオネラは、やり方を変えるようにと再三告げる。



 けれど……



「……この形で克服できなければ、きっとアイン君は本当の意味で乗り越えることはできません……」



 緩く、首を横に振るインスの言う通り。



 インスの言う方法で乗り越えなければ、表面的には乗り越えられたように見えても、いつか瓦解すると分かるから。



「……とんでもない授業に巻き込みやがって……」



 忌々しそうに毒づくウスニーも。



「……ラント呪師が、そこまで覚悟を決めなければいけない状況。と言うことなのでしょうね……」



 愁いを帯びた溜め息をもらすディオネラも。



 二人共が覚悟を決める。



「申し訳ないとは、思います……けれど、すみません……お願いします……」



 静かに頭を下げたインスに、ウスニーもディオネラも了承を伝えた。


第1章第4話をお読みいただきありがとうございます!


今回は、アインが先の事件でどれほど過酷な記憶と感覚をそのまま抱え込んでいるのか。


そして彼を生かしている「神剣」がもたらすかもしれない最悪の可能性について、インスの口から語られました。


あまりにも重い事実の連続に息が詰まりますが、それらすべてを踏まえた上でいよいよ明かされる「明日の授業」の内容。


やり方を変えろと渋面を作るウスニーたち大人もさらなる決断を迫られ、最後には苦渋の了承を下します。


アインを本当の意味で救うため、インスが覚悟を決めて行おうとする「幻影人形」の授業。


張り詰めた空気の中、次回へ続きます!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【番外編・第3弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞③~重なり合うのは悪意おもいの欠片~

(https://ncode.syosetu.com/n5078lu/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第4弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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