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第3話・彼女の正義がもたらした ~とんでも被害に絶句する~

第1章 聖皇国を襲った事実



     第3話・彼女の正義がもたらした ~とんでも被害に絶句する~



 神剣は主神殿の奥向きに近い森の中。



 禁足地となっている場所に隠された小堂に封印されていた。



 その日、神殿側で神官呪師しんかんじゅしとしての授業を受けることになっていたアインは、昼拝の後、奥向きに近い図書殿に借りていた本を返しに行った帰り道。



 午後の授業へと向かう途中で神殿に侵入してきたジャンヌとリオンに遭遇し……人を呼んでこないようにと強引に森まで連れ込んだリオンが、小堂に続く小路を封じる柵門前の木の幹に縛り付けて放置した。



 もちろん、帰りには解放するつもりはあったのだろう。



 その前にジャンヌたちを探しに来たファンとクロードに発見され、拘束を解かれたアインから目撃情報を得た二人は先を急ぎ。



 遅れてしまっている授業に向かおうとしていたアインが、異変を察して駆けつけた神官長たちの中の一人から注意事項などを説明されている最中に。



 森の奥から飛び出してきた重い水の魔力の塊が……短剣の姿をしたそれが、アインの体に突き刺さり、そのまま体内に入り込んだ。



 その時点では、その正体はわからなかったのだが、ジャンヌが神剣の封印を解いた、その直後の出来事であり。



 恐ろしいまでに重い水の魔力を注意事項を伝えていた神官長が感じ取っており。



 短剣が突き刺さったというのにアインに外傷は一切なく。



 ただ突然、無理やり押し入ってきた魔力に体内を蹂躙されて意識を失い、数日間酷い苦痛に襲われた。



 漸く落ち着いてきたと思ったら、今度は夜中に皇城しろを抜け出したジャンヌを探すのに、見えざるものを見る目を持つ者。



 通常は目には見えない()()()()()()()ことができる『見者けんじゃ』であるアインが駆り出され、結界に閉じ込められて魔物に襲われていたジャンヌとリオンを助け出し。



 結界内では無限に増殖していた魔物が、結界の外では増えないとはいえ剣では倒せず。



 ファンがアインに魔法を使うように指示し、そのアインの魔法にはしゃいだジャンヌが無意識にその身に纏う女神の加護の力を流し込んだがゆえにそのコントロールに精神をすり減らして。



 心身ともに限界を超えて倒れたアインは、数日後にはジャンヌたちが神剣を使えるようになるための訓練に呼び出されることになった。



「……そうやって聞くと……とんでもないな……」



 つらつらと時系列にそって話を続けるインスを止める気力もすでになく。



 ぐったりとソファに身を沈めるウスニーが頭を抱えて呟けば。



「……本当に……」



 隣のソファで同じくぐったりとしたディオネラも青い顔で億劫そうに頷く。



「……私も、詳細を聞いた直後は同じように感じましたよ……」



 つい昨日。退院前に主神殿の総括である大神官だいしんかんから聞かされたばかりのインスも、知らなかった詳細まで知った時には同じようにぐったりとしてしまった。



 思わず三人そろって遠い目になってしまったが、まだ話は終わっていない。



「その訓練の際に、私の使った影人形の魔法が何者かに乗っ取られて暴走し、ジャンヌ様とリオンさん、クロードさんの三人はそこで神剣の力を引き出す手がかりをつかんで倒しきれたそうです」



 インスが使った影人形……魔法で作り出す人工的な魔物……の魔法を乗っ取った何者か。



 ……おそらくは五年前にジャンヌを襲い、つい二か月ほど前の事件でもジャンヌの命を狙ったアーグと言う魔族であろうと思われる……



 によって、強制的に魔力を奪われ続けたインスは途中で意識を失い。



 その場に残っていた呪師はまだ見習いのアインだけになった。



 そのアインが、まるでインスが死んでからが本番とばかりにやる気を見せないファンに対して怒りをぶつけた瞬間。



 アインの中から水と氷でできた『何か』が噴き出したらしい。



 もつれるように水と氷がお互いを呑もうとしているような動きをしていたため、その詳細まではわからない。



 けれど、神剣には意思が宿っている。



 実際に、その意思とジャンヌたちは契約の際、幻視の世界で対話したという。



 そして、先の事件の際には、その意思を具現化させ、魔族に競り勝ち……



 五年間。成長することも、目覚めることもなく眠り続けていたジョンが意識を取り戻した。



 けれど代わりに。



 その戦いのためにアーグは神剣の相手をするのにふさわしい魔剣を作り出すためと言って、呪師の家柄の、十歳ごろの子供を十三人も誘拐し、呪いにかけて殺し合わせる舞台を整え。



 作り出す予定の魔剣の制御に利用するためにアインも誘拐し。



 居合わせたがゆえに一緒に連れ去られることになったインスを子供たちに殺させようとして。



 インスが生きている間に「子供たちが全員死んだら、インスを皇城に帰してやる。」と迫られたアインは、拘束されて、更に魔力切れに近い状態で無理やり魔法を使ったインスが殺しきれなかった三人の子供を魔法で殺してしまい。



 そのショックで精神が崩壊しかけたところを魔族に気絶させられて。



 心や精神そのものを結晶化させた宝石を体から抜き取られた。



 その、抜け殻になった体を魔族は操ってジャンヌを刺させて……



 直後に奇跡が起きた。



 心を失って、操られていたアインが流した涙が、白く光を放って重傷を負ったジャンヌや、呪いの魔剣に掠められて動けなくなっていたファン。



 神剣に宿る意思に暴走されたせいで疲労困憊だったリオンや。



 神剣と契約の上位段階である誓約を結び、その真の姿だという戦斧を振るって戦っていたクロードの怪我や疲労も。



 すべてを、相手に()()()()()()()()に癒しきった。



 その現象を目にした魔族は「水の神剣によるもの。」と言いだしてアインに持たせていたナイフで、アインの胸を突き。



 怪我を癒され、疲労を解消されたジャンヌたちは猛攻の末に競り勝った、というのが全容だった。



 しかし。



「その戦闘の最中に、ファン卿が風の神剣から放った光る刃がアイン君の左腕を掠めていて、傷口に神剣の強い魔力が残ってしまっています……その魔力が、傷が塞がるのを阻害していて、二か月たった今でも……縫合手術を施してあるにもかかわらず、ずっと出血を続けています」


「「……っ!?」」



 淡々と、あえて感情を抑えるかのように平坦な声になったインスが付け加えた言葉に、なぜ、これらの情報の共有が必要であったのかをウスニーもディオネラも察する。



 二か月経っても癒えない怪我を抱えたまま。



 アインは明日。事件後初となる復帰の授業を受けることになるのだ。



「……メンテ呪師の同席が必要なのは、その怪我のこともあってだったのですね?」



 静かに確認したディオネラに、インスもまた静かに頷いた。


第1章第3話をお読みいただきありがとうございます!


今回は、インスの口から「アインがいかにして神剣の使い手となったのか」、そして「先の事件の裏側でどれほど理不尽で過酷な目に遭っていたのか」が怒涛の勢いで語られる回でした。


次から次へと明かされるアインの凄惨な受難の連続に、ウスニーとディオネラがぐったりと頭を抱えて絶句してしまうのも無理はありませんね……。


二か月経っても治らない重傷を抱えたまま、アインは明日の授業にどう臨むのか。


次回も引き続きお付き合いください!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【番外編・第3弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞③~重なり合うのは悪意おもいの欠片~

(https://ncode.syosetu.com/n5078lu/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第4弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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