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第4話・冬枯れ告げる歴史の狭間 ~まだ来ぬ春を待ち望む~

第3章 最初の一歩を改めて



      第4話・冬枯れ告げる歴史の狭間 ~まだ来ぬ春を待ち望む~



 ウスニーは皇宮内にある神殿の医務殿に運び込んだアインの、怪我の様子を確認する。



 血に染まった左腕は、先の事件でジャンヌの護衛騎士団長である、ファン卿ディアスが振るった風の神剣が放った、光る刃に掠められてできた怪我。



 神剣は、剣の姿をしてはいるが魔法そのもの。


 だから、光る刃というのも魔力の塊そのものだったのだろう。



 傷口に強い魔力が残っているせいで一切治っていない。



 話は聞いていたが、実際に傷口の状態を見て眉を顰めたウスニーは、止血という概念すら意味をなしていない状況に戦慄した。



(……神剣の魔力がここまで厄介だとはな……魔力が強すぎて治癒を阻害しているのか……)



 助手を務める神官呪師らに指示をして、傷口を縫合し直し、できうる限り出血量を減らす。



 どれだけ出血量を減らすことができるか。


 それがアインの生命線で、その上で、多少無理にでも食事や投薬で血肉を作らせ、体力を底上げさせる。



 それでも、止まらない出血はじわじわとアインの命を削り続けていて、保護された直後には順調に増加傾向にあった身長や体重は伸び悩み、この年頃の子どもの成長曲線を下回っている。



 このままの状態が続くと、良くて成長が止まり、最悪の場合、命を落とす可能性もあった。



 縫合と投薬の処置を終えたところで神殿護衛官に任せてアインを送り出す。



 アインはずっとインスの上着を掴んだまま放そうとしなくて、帰り道も黒いローブにその小さな体を包んでいる。



 とっくに服に残っていた体温なんて冷めてしまっているであろうが、それでも気配を感じるのか、そうしていると静かに眠っていてくれた。



 見送って、ウスニーは日が暮れるのが随分と早くなったな……とふと思う。



 幾分冷え込みも酷くなって、すぐそこまで近づいている冬の気配を強く感じる。



 枯れ行く季節の秋が過ぎ、命の眠る冬が来て……ぶるりと一度身震いをして、ギュッと拳を握りしめた。



(神剣の封印が解かれたのが夏の終わり……それから早くも二か月ほど……この二か月で、どれだけのことが起きた?)



 皇孫皇女・ジャンヌは大陸の守護神である女神に祝福された巫女姫。


 けれど、女神の祝福は、女神自身がいつでも助けてくれるという特権ではない。



 確かに、その加護の証である魔力(ひかり)は強くて、呪師ならすぐに感じ取れる。


 だから、それを疑うことはないし、実際に、()使()が降臨して言祝いだという事実がある以上、魔力を感じ取れない普通の人間も、それを疑う()()はしない。



 それが、救いにはならないことも、五年前の魔族の襲撃で証明されてしまっているが……



(……女神様は、なぜ、巫女をお選びになり、祝福をお与えくださったのか……)



 喜ばしいことであるのは間違いないが、理由までは分からない。


 むしろ、誰も考えようともしなかった。


 五年前まで。



〈この大陸の、生きとし生けるものたちの、その子孫()らの……輝ける未来のために。闇の帳を照らし払う、明けの光の女王の、その巫女として……〉



 ふと、ジャンヌを言祝いだ天使の言葉を思い出す。



〈いかなる艱難辛苦にも、屈することなき魂魄(たましい)の輝きを……秩序を守る戦女神の乙女として、ふさわしき行いを……〉



 季節が巡るかのように、歴史の中に何度となく現れる女神の巫女。


 それは、時代の変わり目か。


 それとも、何かの目印か。



〈汝の想念(おもい)の強さを示せ。それはすべてを育む生命(いのち)の脈動。汝の祈願(ねがい)は混沌に射し込む眩き光となりて十字を掲げるであろう〉



 歴史の中に名を残す、女神の巫女らは皆、偉業を成し遂げている。



 それが、何かの符牒のようで、空恐ろしささえも感じてしまうのは、女神に対する不敬だろうか?



 どちらにしろ、一介の神官呪師にできることなど、祈ることだけ。



 どうか、世界に安寧を。


 親しき者らに幸福を。


 願わくば……


 これ以上、悲しみの涙を流す者が、増えることがないように……


第3章第4話をお読みいただきありがとうございます!


今回は、医務殿に運び込まれたアインを診察するウスニーの視点です。


アインの左腕の傷が二か月経っても全く治らない理由。


それが「神剣の強大な魔力」によるものであり、止血すら意味をなさないほど命を削り続けているという事実に、ウスニーでさえ戦慄と焦りを隠せません。


対処療法しかできない歯痒さを抱えながら、インスの上着に包まれて眠るアインを見送るウスニーの姿が痛ましいですね。


迫り来る冬の寒さとともに、彼らを取り巻く過酷な運命……。


この短い期間にどれほどの激動があったのか。


そして、女神の祝福を受けた巫女姫ジャンヌが背負う運命と、天使が残した言葉の意味とは……。


一介の神官として、ただ世界の安寧と親しい者たちの幸福を祈ることしかできないウスニーの切実な思い……。


物語も残りわずかです。


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【番外編・第3弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞③~重なり合うのは悪意おもいの欠片~

(https://ncode.syosetu.com/n5078lu/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは本日22時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第4弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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