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第3話・授業が終わったその後で ~幼い眠りに微笑んで~

第3章 最初の一歩を改めて



      第3話・授業が終わったその後で ~幼い眠りに微笑んで~



 ほんの一瞬沸き上がった強い風の魔力の気配に、インスはもちろん、ウスニーとディオネラも息を飲んだ。



 けれど、それは一瞬。



 すぐに鎮静化して、ごく普通の……自然界に存在する風の精霊の魔力で魔法が構築され、放たれたのを感じ取る。



 感じるが、起こった現象に事前に話を聞いていたディオネラとウスニーはもちろん、知りもしなかった護衛官たちは唖然として立ちすくむ。



((((……今、使ったの、初級の精霊魔法、のはず……?))))



 護衛官たちが表情を強張らせてアインを見つめ、インスやディオネラ、ウスニーに問いた気な視線を投げる。



 アインのケアに集中しているインスはそんな護衛官らの視線はすべて無視。


 対して、ディオネラとウスニーは説明のしようもなくて無言で頷くだけ。



 初級の風の精霊魔法である『空刃切裂エウディヤ・ドゥグン』は、本来小さな風の刃を()()発生させるだけ。



 効果も、触れるとちょっと切れる、といった程度のはずで、全身を切り刻み、首を飛ばすなどという芸当ができるものではない。



 それはもっと高位の風の精霊魔法で使われる同系統の攻撃魔法の効果。



 初級や中級の範囲しか学んでいない見習いが使える魔法ではない。



 いや、理屈は……分かるのだ。



 同系統、ということは魔力を大量に込めてやれば下級の魔法でも再現が可能になる、と。



 ただ、効率はすこぶる悪いし、当然コントロールも難しくなって、暴走の危険性が高まる。


 言うならば、学びたての見習いが、学んだばかりのことをやって見たくて、加減も分からないままに勝手に使い、暴走させる時と同じ。



 なのに、完璧に制御してみせたことも分かって……



((((……止めきれるのか……?))))



 万が一にもアインが魔法を暴走させた場合、止めきる自信が……あまりない。



 特に、今日、アインの担当として付いている神殿護衛官は顔色が悪くなっている。



 なぜなら、万が一、アインが魔法を暴走させていた場合、止めなければいけない立場にあったから。



 それも、最悪の場合は殺さなければならないのに、初級であの効果を……問題なく使いこなせているなんて……!!



 一方、そんな周囲の無言の混乱と戦慄を一切気にせず、アインが()()()課題を成し遂げたことを確認すると、インスはその場に座り込んでアインが泣き止むのを待った。



 さんざん泣いて、泣き疲れて眠ってしまったアインは、ぎゅっとインスの服を掴んだままで。



 それが、主神殿の医務殿に入院中、アインが()()()年相応の幼さを見せた時と同じで、こっそりと笑みが浮かぶのを堪えきれない。



 周囲の殺伐とした空気感との差に風邪を引きそうだ。



「……まったく……」



 溜め息を一つ。


 舞台台座の上に上がってきたウスニーが呆れを隠さない声を投げかければ、真っ青になって、白く青ざめたインスは少しだけ、申し訳なさそうに微笑んだ。



 その表情に不審気に眉を寄せたウスニーは、だが先にアインの様子を見る。



 離れるのを嫌がるかのようにインスの服を掴んだまま眠っているのを見て、大きく溜め息を吐く。



「脱げ」



 それから、一言そう告げて、アインの左腕の袖を染める血の色に顔を顰めた。



 軽く肩を竦めたインスは、言われるがまま、アインが掴んでいる上着を脱いで、そのままその小さな体を包み込む。



「一旦、二人とも医務殿に連れていく。アインは治療が終わったらそのまま呪師寮に戻せ」



 インスからアインを引き取り、抱き上げたウスニーに、今日のアインの担当だった神殿護衛官が頷く。



 まだ若干顔色が悪いが、とりあえず、無事に終わった様子なので少し安心もしていて、落ち着きは取り戻しているようだ。



 他の護衛官らも、内心では多少混乱が残ってはいるものの、各々の役目も分かっているので落ち着きと秩序は失われていない。



「インスも運べ。どうせ歩けもしない」



 アインを渡して、頷き返して、ウスニーは続いてインスの担当である皇宮護衛官に声をかける。



 溜め息で返したその皇宮護衛官がインスに歩み寄った。


第3章第3話をお読みいただきありがとうございます!


今回は、漸く過酷な授業が幕を下ろし、静かに事後処理へと向かう訓練場の様子です。


アインの規格外な魔法に周囲が混乱する中、インスはただ静かにアインが泣き止むのを待ちます。


インスの上着を掴んで離さないアインの姿に、彼がどれほど気を張って頑張ったのかが伝わってきますね。


そして、限界を迎えて動けなくなったインスと眠るアインを、呆れ顔で素早く医務殿へと搬送させるウスニーの保護者っぷり(笑)


重苦しく過酷だった授業がようやく完全な終わりを迎え、少しだけ穏やかな空気が戻ってきました。


この後、物語はいよいよ終盤へ向かいます。


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【番外編・第3弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞③~重なり合うのは悪意おもいの欠片~

(https://ncode.syosetu.com/n5078lu/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第4弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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