不器用な和夜
和夜は無事に保育園を卒業し、小学校に入学した。正和は和夜に柔道を習わせた。和夜は嫌がったが、正和は落ち着いた声で、
「少しは和美を見習え」
と、説得した。兄を男として認めない父親を意外に思った和夜は渋々受け入れた。一年続けて耐えられなかったら辞めることにした。
練習試合よりもジョギングや筋トレやストレッチや受け身の練習ばかりだった。和夜は全く面白いと思わなかったが、和男は一生懸命にこなしていく。そのおかげか和男は試合すると同年代の男の子にも勝っている。一方、和夜は全く上達しなかった。
ある日の夕食、それを知った母親の雪絵は和夜に呆れ顔で、
「もっと頑張りなさい」
と、諭した。和夜は咄嗟に、
「うるせえ、婆」
と、反発した。雪絵は額に青筋を立てて、
「あ?」
と、威嚇した。和夜の横にいた和男は和夜の耳を思い切り引っ張った。和夜は目を閉じて、ウッと唸った。和男は手を離し、
「母さんに謝れよ」
和夜は涙目で、
「母さん、ごめんなさい」
と、詫びた。
和男は和夜に今まで暴力を振るったことがなかった。怠けたりイタズラしたりする和夜には普段、言葉で鋭く注意してきた。和夜もまた、物心つく前から和男に畏怖を感じていて反発してこなかった。
雪絵は落ち着いた声で、
「和夜。弱虫でもかまわないけれど、女を大事にしない男はゴミだからね」
和夜は大きく頷いた。三人は何となく食事を再開した。




