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曲がり角  作者: 加藤無理
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危ない女

 二月の中旬。真波は起訴された。実鶴については触れずに、サイトで知り合った素性の知らない人物と一緒に四度も道久を襲った事を自白した。動機は痴情のもつれ。警察は真波が和美と交際しているのを知っていた。現在では和美と道久が交際しているのも分かっている。報道陣には、真波による四回もの襲撃事件は伝えたが、痴情のもつれについては伝えなかった。公判でそれが知られても、報道を規制しようとした。遊び半分でトランスジェンダーを話題にされるわけにはいかなかった。また、和美は警察官である正和の娘なので、警察の不祥事として非難されたくはなかった。


 何故、小柄な女が女嫌いで知られるボクサーを執拗に襲ったのか。報道陣も市民も不可解であった。


 しかし、和美と道久の関係に気付く者も少なからずいた。同時にそれを暴露する者もいない。暴露したところで信じられるとは限らないし、暴露の仕方によって逆に人間性を疑われるからだ。


 更には公安をはじめとする諜報機関は実鶴の存在に気付いていた。しかし実鶴を逮捕することも罰することもない。


 防音設備のあるマンションの一室に正和は公安として働いている佐竹にこっそりと呼び出された。正和は、

「俺をわざわざこちらに呼んだのは何故ですか」

 佐竹は腕を組んで、

「君の息子さん……娘さんの交際相手である坂東道久の母親がとんだ国賊なんだよ」

 正和は不思議そうに眉を寄せる。佐竹が説明する。


 実鶴の最終学歴は中学卒業。しかし頭は異様に冴えている。中学を卒業する前から複数の中小企業の社長達と寝ていた。その頃から男達を籠絡する能力が有り、大人達に弄ばれるどころか弄んでいた。二十歳になる頃には既に国内外の富裕層や権力者と寝ては機密情報を売買していた。


 実鶴は日本のホステスと中国の諜報員との間に生まれた娘で、七歳ぐらいまでは母親一人で育てていた。母親が過労死したことでその後は施設で育ったが、時折父親が秘密裏に会っていた。実鶴が十六歳で長子を妊娠すると父親が引き取って日本のアパートに住まわせた。実鶴が長子である道久を出産した後には父親は利用出来る男を紹介しては寝かせた。実鶴は嫌がるどころか率先した。むしろ密偵としての活動をそつなくこなしていった。


 実鶴を訴えたり捕まえたり罰しようものなら父親が全力で妨害する。実鶴もその父親も殺人に全く躊躇いがない。特に父親は諜報員として活躍が目覚ましく今では中国でかなりの権力者になっている。


 話を聴いた正和は、

「そんな絵に描いた様な女が実在するのですか」

 佐竹は困った顔をして、

「嘘なら君をここに呼んでこんな話はしない」

 正和は顔を少し前に出し、佐竹を見つめながら、

「息子の道久も諜報活動をしているのですか」

 佐竹は眉を下げ、

「一切してない。むしろ彼は実に可哀想な男だ」

 正和は不思議そうに眉を寄せる。佐竹は冷たい声で、

「彼が殺されかけた四つの事件全てを実母である実鶴が藤崎真波に指示したんだよ」

 正和は、

「何故ですか?」

 佐竹は首を傾げて、

「さあ。アレは実の息子すら平気で嬲る異常者だ」

 正和は無表情で、

「その異常者と親戚関係にならないように俺は娘と彼の交際を解消すれば良いのですね」

 佐竹は頭を振り、

「また君は娘さんを傷付けるのか?娘さん、君のせいで死にかけたんだぞ」

 正和は眉間に皺を寄せる。佐竹は、

「あの実鶴が今更、道久を利用する事は無い」

 正和は疑うような瞳で、

「断言出来ないでしょう」

 佐竹は、

「実鶴には警戒しておけ。けれども、君が交際をぶち壊せばあまりにも娘さんと道久が不憫だ」


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