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曲がり角  作者: 加藤無理
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酷いクリスマス

 十二月二十四日のクリスマスイブの早朝。道久は自宅近くの公園の周りをジョギングしていた。時々、立ち止まっては拳で縦横無尽に宙を連打する。殴り方は様々で下から上から横から正面へ、不規則な動きをする。文字通り目にも留まらぬ速さである。重く殴る時もある。相手を想像しながらそれを避けたりもする。


 約二十分に一度ほど、公園のベンチに寄ってそこに置いてある鞄からタオルや水筒を取り出しては休む。汗を拭き取り水分補給する。


 ほぼ毎朝の日課である。道久は今朝最後の休憩をしてから帰ろうとした。水筒の湯冷ましを何気なく飲む。蓋を締め、鞄にタオルと水筒を入れると立ち上がる。何歩か歩くうちに奇妙な感覚に襲われる。


 ゲエエ、ボトボトボト。道久は突然、嘔吐した。膝が地面に付き、やっとのことで手をついて四つん這いになる。吐瀉物は赤い。血だ。まだ吐き出てくる。呼吸をしようにも出来ない。窒息する。身体中の血の気が引いていく。意識が遠のく。


 道久が横向きに倒れた時、犬の散歩をしていた老人が驚いて犬を抱える。

「救急車だ!」

 と、老人が叫ぶと、通勤途中の壮年期の男が動揺しながらもスマホで呼んだ。


 暫くすると救急車が来て道久を搬送して行った。


 道久は一命を取り留めた上に、奇跡的に後遺症は無かった。昼頃には既に意識は回復していた。病院は道久を三日ほど入院させることにした。翌日の昼頃にジムの監督とコーチが見舞いに来た。道久は平然とした様子だった。肌の血色も良くなっている。道久は二人に慇懃に挨拶した。


 水筒に何者かが薬物を入れていた。荷物を置いていたベンチは防犯カメラから遠くて犯人は見つかっていない。致死量に近い量だが、体内に吸収される前に勢い良く吐いたので、道久は命拾いをした。医師からの説明を道久は淡々と監督とコーチにした。


 薬物は新しく出回っている危険物だと判明した。幻覚作用や快楽を与える上に大麻や覚醒剤よりも手軽に入るが、毒性と依存性が非常に高い。安全な扱い方も確立されていない。警察や麻薬取締局は後手に回っている。


 それを聴いた監督は、

「犯人は随分と悪質な事をしやがる」

 コーチは眉をひそめて、

「愉快犯で被害者は誰でも良かったのだろうか」


 退院前に和美も見舞いに来た。和美は荷物を持って道久を家まで送ろうとしたが、道久は断った。和美は、

「まだ入院した方が良いんじゃないのか」

 道久は無表情で頭を振り、

「スッカリ大丈夫だ」


 その頃。実鶴は真波の家に寄っていた。実鶴はにこやかな様子で腹を擦っている。その正面では真波は青白い顔で俯いている。実鶴は穏やかな声で、

「失敗しちゃったね。またやる?」

 真波は黙っている。


 実鶴が危険薬物を入手して真波に渡した。道久の行動範囲や習慣も教えている。真波はそれを元に実行した。


 実鶴は楽しそうに、

「貴方が諦めても私は続けるけどね」

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