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曲がり角  作者: 加藤無理
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真波の憎悪

 十一月の半ば。とある公園の樹に背中を預けて道久は腕を組んで真波を待っていた。


 真波が蓋付きの金属製のコップを持ちながら向かって来た。道久は動かずに真波を見つめている。真波は無表情のようでいて眼光が鋭い。真波は三歩手前で立ち止まる。道久は見下ろし、真波は見上げる。


 真波はコップの蓋を開けながら、怒気を含んだ声で、

「お前。私の男と寝たんだろ」

 道久は無表情だ。真波はコップの中身を勢い良く道久にかけた。しかし浴びる前に道久はよけた。道久は無表情のまま体勢を整えると、冷静な声で、

「もうアイツは生き方を変えた」

 真波は空になったコップを道久の腹めがけて思い切り投げた。道久はそれもよけた。コップが十メートルほど先の芝生の上に落ちる。道久は腰に手を置いて、

「俺を殺すのは良いが、アイツには手を出すな」

 真波はコップに向かいながら、

「最初からそのつもり」

 道久は何も言わずにその場を去った。


 その後、和美は道久の家に来て真波について尋ねた。道久は無表情で、

「大した話じゃなかった」

 和美が半信半疑の様子でいると道久は、

「お前はまだあの女に未練が有るのか?」

 和美は頭を振った。道久は軽く和美を抱き、

「お前、俺の事が好きか?」

 和美は頷く。


 真波は出会い系サイトを利用するようになった。どの男も陳腐に見えた。美形でも高収入でも高学歴でも家事が出来ても口説くのが上手くても、下らない詐欺師にしか見えない。真波に興味を持って近寄ろうとする男達は何人もいたが、真波は迷わずに拒んだ。


 トランス男性やトランス女性のアカウントを覗いても、特に魅力を感じなかった。女性のアカウントも覗いたがつまらない。真波がサイトの利用を諦めかけた時、唯一気になるアカウントがあった。


 坂東実鶴ばんどうみつる、三十六歳。両性愛者。普段はホステスとして働いているが、海外旅行を趣味にしている。真剣な交際も遊び半分でもかまわないと宣言している。公開している画像の容姿は二十代後半と変わらないぐらいに若々しく、顔は美形で体型も理想的だ。加工していないようだ。


 真波は実鶴に慇懃な文章を送った。しばらくすると実鶴から返信があった。真波と実鶴は十二月の半ばに、とある喫茶店で会うことになった。


 当日。真波は予定通り実鶴と会った。実鶴は画像以上に華が有った。真波が丁寧に挨拶すると実鶴も上品に挨拶した。実鶴は時折、何故か腹を擦っている。腹は大きい。不審に思った真波は、

「まさか、妊娠しているのですか?」

 実鶴は笑みを浮かべたまま、

「ええ」

 真波は席を立つ。実鶴は平然とした様子で、

「この子は実父に完全に任せるつもり」

 真波は額に青筋を立てて、

「倫理観があまりにも異常ですね」

 実鶴はにこやかな顔で、

「貴方こそ、これから人を殺したがっているみたいだけど」

 真波は息を飲んで座った。実鶴は笑顔のまま、

「誰?協力してあげる」

 真波は目を泳がせながら、

「貴方と同じ苗字の男です。まさか……」

 実鶴は腹に両手を置いて、

「もっと詳しく聞かせて」

 真波は道久について語った。自分の経歴や和美との交際についても触れる。話を聴き終えた実鶴は穏やかな声で、

「それは私が最初に産んだ息子、道久ね」

 真波の背筋が冷たくなった。実鶴は楽しそうに、

「丁度、私もあの子にお仕置きをしてみたかったところなの」

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