宣言
バイクの件以来、和夜は塚原と松山と稲島と何となく一緒になることが多くなった。稲島は更生していた。時々、放課後になると四人は教室で勉強するようになっていた。稲島はどの部活にも所属していなかったが、残りの三人はそれぞれ励むようになった。
和美が女として生きると宣言した翌日の朝、和夜は三人にそれを説明した。三人には既に和美の婚約破談を教えている。三人は驚いて口と目を大きく開けた。塚原は、
「親父さんに破談させられて、あの兄貴はおかしくなったのか?」
松山は気まずそうに、
「そりゃあ、あまりにも親父さんが理不尽過ぎたからな」
稲島は不憫そうに、
「俺だったら親に紹介しないで勝手に結婚するけどな」
和夜は俯く。稲島は頬杖をついて、
「あんな強くて真面目な男が勿体ねえな」
塚原は肩をすくめて、
「仕方ねえよ。生き方なんて人それぞれだし」
松山は自分の顎を掴んで、
「まあ、元々優男だから女装しても男だとバレねえから何とかなるんじゃねえの」
稲島と塚原は頷く。松山は、
「朝倉。良い兄貴だったんだから、お前が支えてやれよ」
和夜は頷く。
和美もまた大学に説明していた。職員も教授達も残念そうな顔をしたが、
「君自身の決断ならば仕方ない」
「無理に女を極めなくても良いんだよ」
和美は穏やかな顔で頭を下げた。
和美は学友達にも説明した。彼らも残念そうな顔をした、
「大丈夫?性自認なんてそんな簡単に変えられるもんじゃないでしょ」
「親父さんに強要されたんなら裁判で訴えても良いんじゃないのか」
和美は穏やかな笑みで、
「ありがとう。俺が……私が決めた事だから」
真波は遠目でそれを眺めていた。和美の格好は以前と変わっていないが、顔つきや声色が柔らかくなっている。仕草や動き方も以前とは微妙に違う。
昼休みに一人で食事している和美に真波は近付き、
「和男。話が有るの」
和美は苦笑いしながら、
「ごめん、真波。今、私は和美と名乗ることにしているんだ」
真波は正面の席に座り、
「坂東君と何か有ったでしょ」
和美は目を丸くした。真波は暗い声で、
「やっぱり」
和美の目が泳ぐ。真波は怒りを抑えた声で、
「私に坂東君と会わせてくれない?」
和美は顔をそむけて、
「アイツが大の女嫌いだと知っているだろう」
真波は冷たい声で、
「いくら彼でも無闇に女を殴るわけではないんでしょう」
和美は肩を落とし、正面を向く。真波の眼光は鋭く、
「彼と会って話をしたら私は未練を断ち切る」
和美はスマホを取り出して道久に連絡した。意外とすぐに返事が来た。




