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曲がり角  作者: 加藤無理
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稲島の挑発

 和男が帰宅すると和夜が手を合わせて、

「兄貴。頼む。俺の高校の稲島と戦ってくれ」

 和男が荷物を下ろしながら、

「何故?」

 和夜が先程のやり取りを伝えた。手を洗っていた和男は長い溜息を吐くと、

「お前ら、強さをはき違えるなよ」

 和夜は困惑した顔で、

「もう、稲島はやる気なんだよ」

 和男は面倒臭そうに、

「今から稲島に電話しろ。俺が断ってやる」

 和夜は言われた通りにした。すぐに稲島が出た。和夜は事情を伝えるとスマホを和男に渡す。和男は冷静な声で、

「意味の無い喧嘩は止めろ」

 と、断ろうとした。しかし稲島は電話越しに嘲ったかん高い声で、

「お前、声も女みてえでキモいな」

 和男は呆れて溜息を吐いた。稲島は、

「お前が逃げると弟を半殺しにするぞ」

 と、更に挑発した。結局、来週の水曜日の夕方に公園で喧嘩することになった。


 当日は見事に晴れていた。和男はベンチで四季報を読んで待っていた。隣で和夜は俯きながら座っている。ベンチの脇には松山がスケッチブックでバトミントンをしている老夫婦を観察しながら描いている。その周りを塚原はウロウロしながら周りを警戒している。


 ブオン。音が響いた。塚原が振り向く。バイクが公園の中を走って来る。稲島が乗っている。塚原は大声で、

「稲島!何やってんだよ!」

 三人も振り向く。稲島は問答無用でこちらに向かってくる。和夜が大声で、

「皆、逃げろ!」

 和夜も松山も塚原も駆け出した。公園にいる他の者達も逃げ出す。和男は四季報をベンチに置くと、立ち上がる。稲島は躊躇わずに和男を轢き殺そうとする。


 和男は轢かれる前にバイクを避けながら稲島の胸倉を掴むと、勢い良く引き摺り出して地面に投げた。その衝撃でバイクが横転する。稲島は見事に倒れた。地面に叩きつけられた痛みでもがく。和男は鋭い声で、

「このバイクと一緒にとっとと失せろ」

 稲島はよろよろと立ち上がると、言われた通りにした。


 途中で立ち止まった公園の皆は稲島が惨めに去って行くのを見送った。和男は無表情で四季報を持ち上げる。和夜が駆け寄りながら、

「兄貴!大丈夫か?」

 塚原も松山も駆け寄る。和男は三人を睨み回すと冷たい声で、

「もう二度と、こんな事をさせるな」

 塚原と松山は深く頭を下げて、

「申し訳ありませんでした!」

 和男は大股で歩いて行った。


 翌日。和夜・塚原・松山・稲島は職員室に呼び出された。和夜から経緯を直接聴いた担任が、無言で稲島の頭を拳で強く殴った。稲島は涙目。他の三人は頭を深く下げて、

「申し訳ありませんでした!」

 担任は冷たい声で、

「俺にではなく御兄様に謝るんだな」


 後日、四人は和夜と和男の自宅近くの公園に集まって和男に詫びた。和男は腕を組んで、

「お前ら、勉強しろ」


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