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曲がり角  作者: 加藤無理
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初めての飲酒

 和男と真波は無事に免許を取得した。二回生になった和男は男子と一緒に柔道研究会に参加して熱心に鍛えた。男子は手加減しなかったが、和男は次々に勝っていった。


 講義も真面目に傾聴していた。真波とは相変わらず席が隣だったが、あまりイチャイチャしなかった。それでも二人の交際はすぐに大学に知られた。


 学生達は、

「あーあ。マジで羨ましい」

「早くどっちかが浮気して破局してくれねえかな」

「俺なんかシスジェンダーなのに彼女がいたためしなんて無いぞ」

 教授達は嫉妬する学生達を笑い飛ばしながら、

「二人が講義中に少しでもイチャついたら僕は追い出してるけどね」

「意外と真面目だよ、あの二人は」

 結局、学生も教授達も二人をそっとしておくことにした。


 和男は週に一度ほど真波の家に来た。一緒に勉強をするか食事するかのどちらかだった。バイトをしている真波が食材を買い、和男がそれで料理を作る。後片付けも和男が嫌がらずにやる。真波は毎回礼を言う。


 二人はたまに肩を組んだり手を繋いだり服を着たまま抱擁したりした。それ以上の接触はしなかったが、二人は満足していた。


 六月の中旬。和男の誕生日の近くに、真波がワインを買ってきた。和男が気まずそうに、

「酒は自活出来るようになってから飲もうと思っているんだ」

 真波は、

「相変わらず真面目ね。試しに一杯ぐらい飲んでみたら」

 和男はワインボトルを見つめながら悩んでいる。真波は、

「酔ったらトイレで吐いて良いし、ベッドで寝て良いよ」

 和男は微笑み、

「それじゃあ飲んでみようかな」

 真波は二つのグラスにワインを注いだ。和男と真波は軽くグラスを当てると飲み始めた。


 真波がバイトの話をしているうちに、和男の顔つきが変わった。表情に力が無く、頬が赤くなっている。真波は、

「酔ったんじゃない?」

 和男は、

「そうかも。でも吐き気は無い」

 真波はベッドを見やって、

「寝たら?」

 和男は言う通りにして寝転んだ。真波が自分のグラスにもう一杯注ぐ。また飲み始める。半分ほどになると和男が、

「真波。抱いて良いか」

 と、やけに甘い声であった。真波が驚いて吐くのをこらえると、ゆっくりグラスを置く。和男が上半身を起こす。真波に向けた和男の顔がスッカリ弛緩している。普段とは明らかに違う。和男が、

「嫌ならこのまま寝る」

 真波は目を泳がせて迷ったが、

「私はかまわないけれど」

 和男は服を脱ぎ始める。厚手の長袖のTシャツをめくって頭と腕を露わにすると、立ち上がってズボンを下ろす。靴下も脱ぐ。胸にしっかり巻き付けたサラシを外す。男物の下着も下ろす。和男はベッドに座り、手足を広げて、

「来て」

 と、誘った。真波は唾を飲み込んだ。顔つきも身体も声もスッカリいつもと変わっている。真波は立ち上がり、ゆっくり近付いた。脚と脚が当たる。和男は真波の顔を見つめながら真波の腰に手を置く。真波は小声で、

「いつもと全然違う」

「どう違う?」

 和男は甘ったるい声で尋ねた。真波は、

「女になっている」

 和男はハッと息を飲み、我に返った。真波の腰から手を離し、俯いた。真波は一歩下がって、

「ごめんなさい」

「謝るな」

 和男はそう言いながら立ち上がると急いで服を着る。顔つきも声も元に戻っている。真波は呆然と和男を眺めた。確かに腹筋が少し割れていてかなり鍛えられた身体だが、同時に女性らしい曲線を描いている。乳房も腰も丸みを帯びている。無論、男性器は無かった。明らかに女の身体をしている。むしろ綺麗だと真波は思った。


 和男は着終えると、俯きながら溜息を吐いた。じっとしている真波に和男は暗い声で、

「この身体、気持ち悪かったか?」

 真波は、

「全然そんな事はないよ」

 和男は頭を上げて、

「今日は帰るよ」

 と言うと玄関に向かう。真波は後ろから抱き締めて、

「ちょっと驚いただけだから。今度はしっかり抱いてね」

 和男は黙ったまま動かない。真波も抱いたままだ。外から車の音がする。和男は、

「ああ。次はやってみるよ」

 真波は腕を離す。和男は靴を履くと出て行った。

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