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曲がり角  作者: 加藤無理
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ボクシング観戦

 和男と真波は教習所でまた坂東と会った。今度は坂東から話しかけてきた、

「お前ら、再来週の日曜日は暇か?」

 二人がキョトンとすると坂東は無表情で、

「ボクシングの試合が有るんだけど、興味無いか?」

 真波は困った顔で、

「私はその日はバイトがあるし、そういうのは苦手」

 和男は自分の顎を掴んで、

「俺はそんなに忙しくはないけれど」

 真波は、

「じゃあ、和男。遠慮しないで行ってみれば?」

 和男は頷き、

「そうしよう」

 坂東が微笑み、チラシを渡す。


 柔道ばかりやっていた和男にとってボクシングの観戦は全くの初めてだった。そもそも両親が多忙なので幼い時から旅行にもレストランにもほとんど連れ行ってもらったことがない。母方の伯父一家と父方の叔母一家が年に一度ほど家に連れて行って遊ばせる程度だった。他のスポーツといえばバスケの顧問をしていた母親の雪絵と休日に少し遊ぶぐらいだった。


 いざ会場に入って客席に着くと雰囲気がどことなく独特だった。試合が始まると空気が張り詰める。和男は柔道で慣れてはいたが、想像以上に迫力があった。鈍い音が客席にまで響く。選手達は時々流血するし負けた方は実際に気絶することもある。審判の大声や鐘の音がいやに響く。


 坂東の出番が来た。和男は固唾を飲んだ。相手は俊敏な上に打撃も強かった。坂東は顔も胸も腹も何度も打たれたが、なかなか倒れない。それどころか反撃を繰り返す。坂東も相手も身体がアザだらけになっていく。


 最後には坂東が勝った。和男は溜息をもらす。


 和男は次の試合も観戦した。今度の試合はアッサリ勝敗がついた。


 全部の試合を見終えると緊迫した雰囲気で疲れを感じた。和男は他の観客と共に客席から出て行った。


 会場を出ようとする時に、

「君、見かけない顔だけど、格闘技をやっているだろう」

 と、声をかけられた。振り向くと先程試合に勝った大柄な男が和男に手を振っている。和男が自分の顔を指差すと男は笑顔で頷いた。和男が男に近付いて、

「実は柔道をやってます」

 男は手を差し出し、

「俺は森田。よろしく」

 和男も手を差し出し、

「こちらこそ。俺は朝倉です」

 二人は握手した。森田は感心した様子で、

「へえ。体幹がしっかりしているね」

 和男は照れ笑いしながら、

「恐れ入ります」

 二人は手を離すと手を振って別れた。近くにいた別の選手が意外そうに和男を目で追いながら、

「彼、随分と痩せてるけどね」

 森田は微笑みながら、

「いや、けっこう強いと思うよ」

「アイツは俺と同じ高校に通ってました」

 二人が振り向くと坂東が立っていた。森田は面白そうに、

「へえ。そうなんだ」

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