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曲がり角  作者: 加藤無理
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真波の過去

 教習所でバッタリと和男と坂東が再会した。最初に和男が声をかけて、坂東が振り返った。和男の隣には小柄な女がいる。坂東は不機嫌そうに、

「彼女?」

 和男は困った顔をして、

「そうだよ。お前、女嫌いだからってそんなに嫌がることはないだろ」

 真波は不安そうな顔をしている。坂東は眉を下げて、

「親父さんには説明しているのか?」

 和男は頭を振り、

「付き合ったばかりだからまだだ」

 坂東は頬杖をついて、

「また反対されるんじゃねえの?」

 和男は腕を組んで、

「あの時とは違う。真波とはよく話し合うつもりだ」

 坂東は、

「そうか」

 和男と真波は隣の席で講義を受けた。坂東は遠くから何度か盗み見る。二人は特にイチャイチャしているわけではなかった。


 教習所を出た後、真波は和男を自宅の中に入れた。真波はアパートで独り暮らしだった。両親は横浜に住居をかまえていたが、留守の時が多かった。父親は船乗りで、母親は環境保護団体で働いている。


 和男はこれまでの人生を振り返って説明した。坂東についても触れたが、好意を告げられた事は伝えなかった。真波は黙って和男を見つめながら傾聴していた。


 和男は今まで弱音を吐いた事はなかったのだろうか。話している和男の顔が時々辛そうだ。けれども全く涙を流さなかった。真波の目が泳ぐ。話し終えた和男はそれに気付いて苦笑いし、

「暗い話をしてしまったな」

 真波は悲しい顔をして、

「貴方、我慢してない?そこら辺の男なんか意外とすぐに泣きわめくもんだよ。もしくは暴力でごまかそうとする」

 和男は短く笑い、

「俺は俺の人生を歩んでいるだけだ」


 真波は俯き、自分の経歴を語り出した。生まれてから中学生の時までは母親と一緒に世界各地を転々としていた。高校の時にはほぼ独り暮らしだった。両親の家だが両親は仕事で留守がちだった。そんな中、ストーカーに狙われた。警察に被害届を出してもなかなか捕まらず、部屋に押し入れられて性暴力を振るわれ、怪我もした。やっと捕まったが、近いうちに出所する可能性が高い。


 和男は青ざめた顔でそれを聴いた。真波の表情は暗かったが、涙を流さなかった。真波は顔を上げて、

「話さなかった方が良かったかな?」

 和男はゆっくり頭を振り、

「辛かっただろう。話すのに勇気が有ったろう」

 和男は真波の手を握る。真波の目が泳ぐ。和男は手をゆっくり離すと立ち上がり、

「また来るよ」

 と、言い残して出て行った。

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