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曲がり角  作者: 加藤無理
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藤崎真波

 和男は大学入学後も柔道研究会に入った。しかしここでも女子部員として活動することになった。便所はキャンパス奥にある建物の一階の女子便所を使うことになった。更衣室も女子用だ。


 中学も高校も後半では男子と一緒に活動していた事を和男は大学側に説明していた。しかし大学側は譲歩しなかった。和男は、

「女子が嫌がるかと思います」

 教授達は頭を振り、一人が、

「学生達には責任を持って伝えておく」

 和男は渋々承諾した。


 講義の時には和男は目立つ事も厭わずにいつも前の席に座って真面目に傾聴していた。議論する時も頑張った。時間が有る時は大学の図書室で調べ物をしたり、キャンパスの中に有る東屋でノートパソコンを使って勉強したり検索をかけたりした。


 講義が終わると研究会に励んだ。小学生の時からずっと柔道を続けている女子が沢山いて、彼女達は和男の想定よりも強かった。けれども和男は全くめげなかった。


 大学の講義では藤崎真波ふじさきまなみと知り合った。彼女とは同じ学部の同輩なのでいつも席が近かった。最初は挨拶する程度だったが、次第に勉強を教え合うようになった。真波は一浪して一歳歳上だが、小柄で可愛らしい容姿をしていた。


 和男は現在でも毎月一人以上は性犯罪者を捕まえていた。それを理由に遅刻しても教授達から叱られなかった。むしろ、

「無茶をしないように」

 と、心配された。真波も不安そうな顔をして、

「格闘経験有る男でも十分に危険だよ」

 和男は苦笑いする。


 和男は普段からなるべく女に親切にしようとしていた。女子大生や教授達からの評判は悪くなかった。一方、男子大生達からの評価は別れていた。男として頑張る和男を素直に評価する者もいれば、逆に胡散臭さを感じる者もいた。中には、

「アイツ、本当はヤリチンなんじゃねえの?」

 と、嫌悪する者もいた。それに対して、別の男子大生は、

「お前、バカじゃねえの?」

 と、呆れる。ある女性教授はにこにこと笑いながら、

「彼はブスにもババアにも優しい紳士だよ。彼を見習えば?」


 和男は柔道では全国大会で優勝した。柔道家達も大学の面々も多くは和男を評価した。次からは男子として大会に出たいと和男は柔道連盟や大学に訴えたが、連盟は反対した。一方、大学は男子と一緒に活動する事を許可した。


 柔道家達も学生達もこれには落胆した。大学は許可した後も男子便所や男子更衣室を使わせなかった。

「トランス女性は女子として出場しているのにな」

「彼には十分に実力が有るじゃないか」

「連盟も石頭だねえ」

 和男は渋々と連盟と大学の判断に従った。大会には出られなくとも他大学との交流試合では、ある程度配慮がなされて男子として勝負した。和男は時々勝っていた。


 華奢な男子学生達は遠目で和男を眺めながら、

「ありゃあ、完全に男だよな」

「しかも勉強も出来る優男だろ」

「線が細くて女顔してるけど、俺達が束になっても敵わねえよな」

「色んな意味で俺達はアイツに負ける」

 屈強な男達も頑張る和男には素直に評価した。時々、気さくに和男に挨拶する。和男も返事をする。


 一回生が終わる頃に真波は和男をキャンパスの隅に呼び出した。和男が不思議そうにすると、真波は、

「朝倉君。私で良ければ私の彼氏になってくれないかな」

 和男は困った顔をして、

「だから俺はまだ性別適合手術を受けていないし戸籍も女のままなんだ」

 真波は頭を振り、

「それを知った上で私は交際したいの」

 和男は腕を組み、

「性行為は出来ないけどな」

 真波は、

「私はそんな事が出来なくても良い。それにレズビアン同士も性行為をしているし」

 和男は宙を睨んで考える。真波は不安そうにそれを見守る。和男は、

「お前がそこまで言うなら交際しよう」

 真波の顔が明るくなった。和男は、

「そうだ。一緒に運転免許を取らないか?」

 真波が訝ると和男は、

「一緒に遠くまで色々行けるだろ」

 真波は笑顔で、

「それは良いね」

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