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曲がり角  作者: 加藤無理
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密かな欲望

 事の顛末てんまつを聴いた生徒達は和男と吉田を哀れんだ。和男の同窓生達は、

「朝倉の親父さん、厳しすぎるだろ」

「朝倉君があまりにも不憫」

 休み時間の間、坂東は相変わらず勉強を続けている。一度、チラリと和男を盗み見る。和男は苦笑いしている。


 三学期が終わり、三年生になった和男は勉強に専念するようになった。


 今回も坂東と和男は同じクラスになった。和男が気さくに挨拶すると、坂東も短く返事をする。それ以外、二人は普段、会話らしい会話はしない。


 坂東は変わらずに同窓生の中で成績が一番良かった。ボクシングジムに通う頻度を減らして受験勉強を進めている。


 夏のある日。坂東と和男の席が隣になった。和男は休み時間に談笑するのを控えて勉強をするようになった。二人は近くにいても会話らしい会話をしない。


 昼休みに坂東が大きなトマトを三個かじっても、誰も気にしない。坂東は食べ終えた後、いつも通りに勉強を始めた。何となく妙な気配を感じる。坂東が振り向くと和男は顔をこちらに向けて寝ていた。


 ゾクリと坂東の身体中が痺れた。いつも快活な表情とはうって変わって和男の寝顔は安らかだ。日頃の男性的な逞しさは無く、女性的な顔をしている。坂東は急いでスマホに目を落とし、英単語の復習を再開した。しかし全く集中出来ない。


 午後の授業が始まった。教師がさっそく坂東に質問する。坂東は暗い声で、

「ごめんなさい。分かりません」

 と、降参した。教師は不思議そうに、

「珍しいな。では朝倉」

 と、名指しした。和男は一生懸命に答える。


 放課後、生徒達の半分は教室に留まって自習をした。残りの半分は自宅か予備校で勉強をする。坂東はゆっくりと帰り支度を始めた。


 帰る前に一度、便所に向かった。中には誰もいなかった。坂東は個室に入った。ズボンを下げる。


 用を足すのではなく、自慰を始めた。脳裏には先程の和男の寝顔が焼き付いている。普段の和男の言動はいかにも男らしいし表情も精悍だ。背丈もそれなりにある。しかし体型は痩身で顔の作りも中性的だ。やはり肉体は女だ。


 坂東は射精をした後、呆然とした。快楽と罪悪感が同時に全身を襲う。


 我に返ると坂東は手と股間を入念にトイレットペーパーで拭く。それを便器に流す。ズボンを上げて服を元通りにする。無表情で出る。手を洗う。その時に何人か入ってきたが、彼らが用を済んで手を洗い終えても坂東は続けていた。しばらくするとやっと便所を後にした。

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